第217回国会(常会)
質問第二〇四号 自然的親子関係に基づく自由な養育監護及び憲法上の人格権に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十九日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 自然的親子関係に基づく自由な養育監護及び憲法上の人格権に関する質問主意書 我が国の民法は、離婚に際し父母の一方を親権者と定める単独親権制度を採用している。その結果として、親権を有しない親(いわゆる「別居親」)が子どもとの接触・交流を著しく制限される事例が多く発生している。また、家庭裁判所が定める離婚後の親子交流における面会頻度についても、「月一回・二時間」など定型的かつ限定的なものが少なくない。こうした状況の下、東京地方裁判所(令和五年四月二十一日判決)、東京高等裁判所(令和六年二月二十二日判決)などでは、「自然的親子関係に基づく自由な養育監護」は憲法第十三条により保障される人格的自由であり、国家による不当な制限は許されないとする判断が示された。 また、学校現場では親権を有しない親が学校行事に参加することを拒否される事例が全国的に報告されているが、当該事例は憲法上の人格権や教育の機会均等などの理念と矛盾する可能性がある。さらに、令和六年に成立した改正民法では、父母が「その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力」する義務(第八百十七条の十二)が新設された。これは、父母双方が実の子と人格的関係を保ちながら養育に関与することを前提としたものであり、前記の地裁・高裁判断に即した規定であると考えられる。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 「自然的親子関係に基づく自由な養育監護は憲法第十三条により人格的自由として保障される」旨の前記の地裁・高裁判断について、政府の認識を示されたい。 二 親権の有無にかかわらず、親子双方の人格的自由として保障されると解すべきとの前記見解に対し、政府の憲法解釈上の立場を明らかにされたい。 三 改正民法第八百十七条の十二に定められた「父母の人格尊重・協力義務」は、親権の有無を問わず、父母が共に子の養育に関与し続けることを制度的に支持する趣旨と理解してよいか、政府の見解を示されたい。 四 家裁が定める離婚後の親子交流における面会頻度について、定型的かつ限定的になる傾向があると指摘されているが、法務省として実態調査や是正措置を講ずる方針があるか示されたい。特に、面会制限が憲法上の人格的自由の制限に当たる場合、法的対処が可能か示されたい。 五 家裁が定める離婚後の親子交流における面会頻度が「月一回・二時間」といった定型的かつ限定的なものである実態について、子の利益や親の人格的発展との観点から見直しの必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 六 学校現場において、別居親が学校行事(授業参観、運動会など)に参加するには同居親の承諾が必要とされる事例が多く存在する。このような事例は、別居親及び子どもの人格的自由(憲法十三条)を不当に制限するおそれがあると考えるが、政府の認識を示されたい。 七 前記六に関し、文部科学省として、共同親権制度の施行を見据えた学校現場へのガイドラインやQ&A等を策定する予定はあるか示されたい。策定する予定がある場合、ガイドラインやQ&A等において、親権の有無にかかわらず子の両親が学校行事に参加することのできる制度を整備する予定はあるか、政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |