質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第二〇三号

若年被害女性等支援事業等に係る誹謗中傷等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十九日

福島 みずほ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   若年被害女性等支援事業等に係る誹謗中傷等に関する質問主意書

 東京都若年被害女性等支援事業に係る公文書開示請求、住民監査請求から始まった女性支援団体への攻撃は、三年近く経過してもなお収束していない。大量のデマ、誹謗中傷により女性支援団体の名誉、信用は傷付けられ、スタッフは大変なストレスを抱え、住民訴訟への対応を含め追加的な業務負担は重いままであり、寄附、協賛などに悪影響が及び財政面も苦しいという。SNS、インターネット上では一時のような騒がれ方はしておらず、街頭等での妨害行動も目立たなくなったが、正常化も被害回復も緒に就いてすらいないのが実情である。

 この事態は各女性支援団体につながっている若年女性にも大きな不安、恐怖を与えてきた。SNSで飛び交うデマなどを見てつながりが切れてしまった人、相談することなどを躊躇してしまった人も少なくないようである。その中には、支援を得られず生命、健康が損なわれた人もいるが、当然ながらその全てを知ることは不可能である。

 二〇二五年六月十日に男女共同参画推進本部等が決定した「女性活躍・男女共同参画の重点方針二〇二五」では、「性犯罪・性暴力の被害者や支援者等に対して、インターネット上等での誹謗中傷が行われることにより、その尊厳が損なわれたり、活動への支障等により性犯罪・性暴力の根絶に向けた歩みが妨げられたりするようなことはあってはならない。国際社会とも歩調を合わせつつ、あらゆる機会を通じて、こうした姿勢を発信すること等により、性犯罪・性暴力被害者や支援者等への誹謗中傷行為を許さない社会規範の形成に努め、その防止を図る。また、刑罰法令に触れる行為が認められる場合には、個々の事案の具体的な事実関係に即して、法と証拠に基づき厳正に対処する。」としており、女性支援団体叩きの激化を受けた二〇二三年以来ほぼ同一の文言を記載し続けている。しかし、政府も東京都も若年被害女性等支援事業に係るデマ、誹謗中傷について毅然とした姿勢を示して積極的に措置を講じているとは言えない。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 若年被害女性等支援事業を始め、女性支援新法(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律)、その他社会的弱者、困窮者への支援制度・施策・活動に係るデマ、誹謗中傷が続いており、民間支援団体や当事者に広範かつ深刻な被害、影響が生じていること、政府及び地方公共団体がこのような事態を収束させるための効果的な対処をできていないことについて、政府はどのように認識しているか明らかにされたい。

二 東京都若年被害女性等支援事業に係る公文書開示請求、住民監査請求及び住民訴訟の主導者及び関与者らに対して、東京都や厚生労働省などが、それも「言論」、「意見」である、「住民の権利」であるなどとして受動的に対応してきたことが、これらの被害の継続及び拡大を許した一因であると考えられる。二〇二四年四月に施行された女性支援新法の基本理念には民間団体との協働が掲げられ、政府の「基本的な方針」においても、東京都などの「基本計画」においてもこれを踏まえた記述がされている。それにもかかわらず、協働のパートナーである民間団体を守れない、困難を抱えた若年女性を守れないということは法の基本理念に反するものと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 デマ、誹謗中傷対策について

 1 政府は、二〇二五年度予算において女性支援新法に係る施策の拡充、強化を図っており、「女性活躍・男女共同参画の重点方針二〇二五」でもこれを更に進める姿勢を示している。特に、地方では事業の担い手となる民間団体が存在しない又は行政の側が把握できていないという状況があり、民間団体や人材の掘り起こし及び育成を図りながらではあるが、好事例の横展開を進めていく重要な時期にある。東京都などの先行地域では、これまでの実績を踏まえた更なる改善、拡充が期待されている。こうした取組を通じて、困難を抱える女性のためのセーフティネットの隙間が塞がれていき、その厚みが増していくことが展望されるところであるが、若年被害女性等支援事業などに係るデマ、誹謗中傷等の攻撃を収束させなければ、セーフティネットに穴が開けられてしまうこととなり、担い手の確保すらできないことが強く懸念される。事業の拡充、強化の前提条件となるデマ、誹謗中傷等の攻撃の収束に向けて、政府としてどのように取り組むのか明らかにされたい。

 2 デマ、誹謗中傷等の対象は、民間団体だけでなく、東京都、厚生労働省、こども家庭庁、内閣府男女共同参画局などに及んでいる。また、各担当部局の職員の業務負担、精神的負荷も深刻な状況が続いていると思われる。他方で、人員や資金に制約のある民間団体は活動の継続、維持が最優先である中で、刑事的及び民事的措置を講ずる余力がない場合がほとんどである。さらに、X、YouTube、noteなどのプラットフォーマーは、判決など一定の法的な判断が得られない限り投稿の削除等には応じておらず、事実上放置しているのが現状である。自らの被害や職員の負担・負荷への対応としても、民間団体や若年女性等当事者の被害を止め正常化につなげるためにも、厚生労働省、東京都など行政機関がデマ、誹謗中傷等の加害者を積極的に刑事告訴するなど、然るべき措置を講じていくことが必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 先日、東京都若年被害女性等支援事業の補助金を受ける団体の元事務局長が薬物事犯で逮捕され、若年被害女性等支援事業への攻撃を改めて勢いづかせている。同事業への攻撃の重要な背景を成すミソジニー、女性差別に加えて、薬物使用者・依存症者に対する差別・偏見も強く現れている。当該事件は支援対象者を巻き込んだものであり、その意味で同団体の運営が適切であったのか等について調査、検証されるべきものである。しかし、事件に乗じてデマ、誹謗中傷を交えた形で若年被害女性等支援事業や女性支援新法が不当に攻撃されていること、薬物に関わる差別・偏見が動員されていることは許されることではない。政府や東京都が事業運営の適正性の確保といった一般論での応答に終始することでは、デマ、誹謗中傷等の攻撃は収まらず、逆にその一般論の言葉が攻撃に利用されてしまうことは、この三年近くの経緯で明白である。「デマ・誹謗中傷等を発信する攻撃者を刺激しない」という従来の対応姿勢を改めるべき時機であると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。