質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一九八号

固定価格買取制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十七日

野田 国義


       参議院議長 関口 昌一 殿



   固定価格買取制度に関する質問主意書

 我が国における再生可能エネルギー導入の推進は、地球温暖化対策の喫緊の課題として重要であると認識しているが、固定価格買取制度(FIT)による再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下「再エネ賦課金」という。)は国民の電気料金に上乗せされ、家計や企業の大きな負担となっている。

 資源エネルギー庁が公表している事業計画認定情報及び開示された行政文書によると、九州七県における平成二十四年度及び二十五年度に認定を受けた一万キロワット以上の太陽光発電設備について、その半数以上が発電設備の場所の決定に時間を要し、認定から五年以上たって運転を開始していることが判明している。認定基準である「場所が決定していること」に適合しない設備が、報告徴収後も高い調達価格のまま認定を維持してきたことが、再エネ賦課金の増大に直結しているとの指摘も踏まえ、以下質問する。

一 公共調達の透明性・公平性を確保し、不正を防止するとともに、国民の「知る権利」に応えるため、行政が発注する工事費や物品購入費は、情報公開制度に基づき、原則として公開されている。他方、私が提出した「再エネ賦課金に関する質問主意書」(第二百十七回国会質問第一二一号)に対する答弁書(内閣参質二一七第一二一号)において、政府は、再エネ賦課金について、「個別の認定事業者が受け取る具体的な金額については、公にすることにより、当該認定事業者の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあることから公表していない」と答弁している。

 しかし、当該認定事業者は、固定価格買取制度の下で適正な売電収入を得ており、通常の行政発注の工事費や物品購入費と同様に、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあるとは考えにくい。行政が発注する工事や物品購入における契約内容を公表することと、再エネ賦課金における個別の認定事業者が受け取る具体的な金額を非公表とすることとの整合性について、政府の見解を示されたい。

二 総務省が公表した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度の運営に関する実態調査結果報告書」(平成二十七年九月)によると、平成二十四年度に認定を受けた太陽光発電設備に係る案件に対する報告徴収において、「場所又は設備のいずれかのみが決定」及び「場所及び設備のいずれも未決定」の六十六の設備について「電力会社と接続協議中であることが確認されたため」という理由(以下「電力事由」という。)で聴聞が猶予されている。

 私が提出した「固定価格買取制度における出力制御に関する質問主意書」(第二百十七回国会質問第九四号)に対する答弁書(内閣参質二一七第九四号。以下「答弁九四号」という。)において、政府は、報告徴収の目的について、「着工の遅延によって認定から運転の開始までに一定の期間が経過している認定を受けた再生可能エネルギー発電設備が存在していた状況において、「報告徴収」を実施した時点における当該再生可能エネルギー発電設備の基準への適合性をより一層厳格に確認することにあった」と答弁している。「場所又は設備のいずれかのみが決定」並びに「場所及び設備のいずれも未決定」の設備を、「電力事由」で聴聞猶予とした根拠を示されたい。また、当該設備に期限などの条件を付して聴聞猶予とした場合、その内容を示されたい。

三 答弁九四号において、政府は、平成二十四年度及び二十五年度の設備認定において、発電所建設予定の場所が農地法や森林法等の許認可を必要とする場合であっても、「申請の基準への適合性を判断するに際し、(中略)「許認可申請」の有無は、当該判断の要素としていなかった」と答弁している。しかし、報告徴収においては、農地転用許可手続が未了の場合は「当該農地転用許可申請書の写し」、林地開発許可手続が未了の場合は「当該林地開発許可申請書の写し」を必要書類として提出を求めている。

 平成二十八年経済産業省令第八十四号による改正前の電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則第八条第一項第二号には「当該認定の申請に係る再生可能エネルギー発電設備を設置する場所及び当該設備の仕様が決定していること。」と規定されている。

 発電所建設予定の場所が農地法や森林法の許可を必要とする場合、「場所(中略)が決定している」と判断するのは、発電する場所を使用する権原が確定した日、又は、農地転用・林地開発の許可日(又は申請日)のいずれであるか、政府の見解を示されたい。

四 九州電力が第四回総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会に提出した「再生可能エネルギー導入への取組み及び課題と当面の対応について」(平成二十六年九月三十日付、以下「九州電力の提出資料」という。)によると、固定価格買取制度開始以降、経済産業省が九州電力に千七百八十二万キロワットの太陽光設備の認定を与えたことが確認できる。これは、九州電力の「接続可能量」の二倍を超える量であったが、答弁九四号において、政府は、「再生可能エネルギーの導入拡大を促進する観点から、(中略)「接続可能量」を超過することを理由として認定を行わない判断をすることとはしていなかった」と答弁している。

 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法第三条第七項には、「賦課金の負担が電気の使用者に対して過重なものとならないよう配慮しなければならない」とあるが、賦課金の高騰はもはや電気の使用者の限度を超えている状況と言わざるを得ない。

 当時の政府の判断が電気の使用者の負担を過重にしている要因の一つであり、法の趣旨に反していると考えるが、政府の判断と再エネ賦課金高騰との関連について、政府の見解を示されたい。

五 九州電力の提出資料には、「太陽光発電の申込みの急増に伴い、各地域(特に九州中・南部)において、既設送変電設備の容量が不足し、送電線や変電所の増強が必要な地域(系統制約のある地域)が広範囲にわたり発生」していることが記載されている。

 このような事態が発生しているのも、政府が「接続可能量」を超過することを理由として認定を行わない判断をすることとはしていなかったことが原因と考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。