質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一九七号

外務省ウェブサイトの「南京事件」に係る記述に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十七日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   外務省ウェブサイトの「南京事件」に係る記述に関する再質問主意書

 私が提出した「外務省ウェブサイトの「南京事件」に係る記述に関する質問主意書」(第二百十七回国会質問第一一八号。以下「本件質問主意書」という。)に対して、答弁書(内閣参質二一七第一一八号。以下「本件答弁書」という。)の送付があった。本件答弁書では、「防衛庁防衛研修所戦史室(当時)が編さんした「戦史叢書 支那事変陸軍作戦〈一〉―昭和十三年一月まで―」において、「遺憾ながら同攻略戦において略奪、婦女暴行、放火等の事犯がひん発した。これに対し軍は法に照らし厳重な処分をした。」、「たとえ少数であったとしても無辜の住民が殺傷され、捕虜の処遇に適切を欠いたことは遺憾である。」等の記載があるものと承知している。」との答弁があった。いわゆる「南京事件」に対する政府の見解は承知した。

 しかし、本件質問主意書は、「日本軍が非戦闘員の殺害や略奪行為等を指示したことを示す公文書」の有無を質問しており、本件答弁書は全く答えていない。また、政府は、外務省ウェブサイトにおける「日本政府としては、日本軍の南京入城(一九三七年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」との考え(以下「問六「南京事件」の項目の記載」という。)に「変わりはない」と答弁している。「否定できない」という表現は、いかなる事案に対しても使用できる詭弁であると考える。このように、極めて不誠実な国語児戯がごとき文言によって先人及び我が国民の名誉と尊厳が不当に著しく傷付けられてしまっていると深く憂慮する。

 以上を踏まえ、以下再質問する。

一 「戦史叢書 支那事変陸軍作戦〈一〉―昭和十三年一月まで―」(以下「当該叢書」という。)が編さんされたのは一九七五年で間違いないか、政府の見解を示されたい。

二 日本軍の南京入場は一九三七年十二月で間違いないか、政府の見解を示されたい。

三 当該叢書は、一九三七年十二月の南京戦の際に、事前に日本軍が非戦闘員の殺害や略奪行為等を指示したこと(以下「事前の指示」という。)を肯定する根拠となる文書若しくは資料に当たるか、政府の見解を示されたい。事前の指示を肯定する根拠となる文書若しくは資料である場合、指示したことを肯定することが記述されている箇所を示されたい。

四 一九三七年における日本軍が、一九七五年に編さんされた当該叢書によって指示を受けることは可能か否か、政府の見解を示されたい。可能な場合、指示と言える具体的な記述箇所及び指示を受けた一九三七年時点の具体的な部隊名や個人名を示されたい。不可能な場合、当該叢書は、南京戦の際、事前の指示を肯定する根拠となる文書若しくは資料とはならないと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 日本軍が、事前の指示を肯定する根拠となる文書若しくは資料を職務上作成した事実は存在するか、政府の見解を示されたい。存在する場合、当該文書若しくは資料の名前、発出者及び発出先について、具体的に示されたい。

六 歴史問題に関して日本政府は、「日本軍による指示の有無」及び「その当時の日本政府や日本軍が作成した文書や資料の有無」を重視していると思料する。これは、高市早苗衆議院議員が提出した「「慰安婦」問題の教科書掲載に関する再質問主意書」(第百四十一回国会質問第一三号)に対する答弁書(内閣衆質一四一第一三号)において、「いわゆる従軍慰安婦問題に関する政府調査においては、発見された公文書等には、軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接的に示すような記述は見られなかった。」と答弁していることからも明らかである。事後に作成された当該叢書は事前の指示を肯定する根拠にならず、これを根拠だと強弁することは歴史議論の国際標準にも反すると考える。

 1 事前の指示の有無に係る論点の重要性について、政府の認識を示されたい。その上で、日本軍による事前の指示があったと考えているか否か、政府の見解を示されたい。また、事前の指示を肯定する根拠となる文書若しくは資料に関する調査が不十分だったという認識の場合、改めて調査すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 2 事前の指示を肯定する根拠となる文書若しくは資料の有無に係る論点の重要性について、政府の認識を示されたい。その上で、事前の指示を肯定する根拠となる文書若しくは資料があったと考えているか否か、政府の見解を示されたい。

七 事前の指示を肯定する根拠となる文書若しくは資料が存在しない場合、「問六「南京事件」項目の記載」においては、「肯定も否定もできない」ないし「肯定する根拠が存在しない」と明記すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。