第217回国会(常会)
質問第一九五号 地方自治体の外郭団体における職員の採用・登用・不祥事対応に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十七日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 地方自治体の外郭団体における職員の採用・登用・不祥事対応に関する質問主意書 地方自治体における常勤職員の採用については、地方公務員法の規定により能力主義及び公平性の原則に基づいた厳格な採用制度が構築されている。また、外国籍の者についても、自治省通知(昭和五十八年六月一日、自治振第一〇七号)等により、公権力の行使又は政策形成に関与しない一般職に限って任用されるべきことが明示されている。 一方、地方自治体が設立・出資・指定管理・委託等を行う外郭団体(以下「外郭団体」という。)は、法律上、一般の民間法人(公益財団法人、一般財団法人、株式会社等)として位置付けられ、地方公務員法の適用対象外となると思料する。実質的に公的事業の一部を担っているにもかかわらず、職員採用や管理職登用に関する法規が極めて限定的であるため、制度を見直す必要があると考える。 地方自治体の外郭団体における職員の採用・登用・不祥事対応について、令和二年八月六日の神戸市会「外郭団体に関する特別委員会」(以下「当該委員会」という。)における上畠寛弘議員の質疑により、以下の神戸市外郭団体において、中国籍の人物が職員又は役職者として登用されたことが確認されている(以下「神戸市の事例」という。)。 ○財団法人神戸港埠頭公社(現:阪神国際港湾株式会社)(外貿埠頭・フェリー埠頭の建設・賃貸・管理) ○株式会社OMこうべ(現:株式会社こうべ未来都市機構)(公共施設の運営) ○公益財団法人神戸市産業振興財団(現:公益財団法人こうべ産業・就労支援財団)(産業振興・経済活性化を目的に設立) ○公益財団法人神戸国際協力交流センター(現:公益財団法人神戸国際コミュニティセンター)(国際交流・多文化共生支援) また、平成二十五年には、神戸市上海事務所(神戸市の外郭団体が受託運営)の所長を務めていた中国籍の人物が、現地業者と結託して私的借金の肩代わりを部下に指示し、帳簿を改ざんさせるなどの不適切な経理支出を行い、懲戒処分(停職三か月)を受けた事案が発生している(以下「不適切経理事案」という。)。この件は朝日新聞等でも報道され、市政に対する信頼を著しく損なう結果となった。 当該人物は懲戒処分後も複数の外郭団体に在籍し、当該委員会時点において、神戸国際協力交流センターの担当部長として、菅原奨学金の奨学生を中心とした留学生のキャリアサポート事業に従事していた(山本公益財団法人神戸国際協力交流センター専務理事兼事務局長の答弁)。当該人物は中国政府関係者や上海市当局との人的関係があるとされるため、台湾人やウイグル人留学生等に対する心理的萎縮を招きかねないという懸念が指摘されている。また、当該人物は、平成二十年に神戸港埠頭公社に突然採用され、平成二十五年時点では神戸市上海事務所所長を務めるなど、採用・登用における手続的透明性の欠如が強く疑われるものである。 自由民主党神戸市会議員団は「令和六年度神戸市予算に対する要望書」において、「中国における人権状況や日本人駐在員拘束事件等を鑑みて、上海事務所を即時撤退すること」を要望し、議会において閉鎖を要求した結果、上海事務所は令和六年三月二十九日に閉鎖された。このような事例は、地方自治体の外郭団体における職員の採用・登用・不祥事対応について不信と疑念を生じさせるものであり、外郭団体に係る制度の在り方を根本から見直す必要があると考える。以上を踏まえて、以下質問する。 一 外郭団体において、公正な採用制度(公募制、第三者審査制度等)を導入する法的義務が存在しないことについて、政府の見解を示されたい。 二 外郭団体において縁故採用や政治的口利きによる採用・登用が行われている実態がある場合、それは地方公務員制度の趣旨を実質的に潜脱する行為と考えるが、政府の見解を示されたい。 三 現行の制度では、外郭団体において外国籍の者が制限なく管理職や役員に就任できる。神戸市の事例に鑑みると、制度を整備する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 四 神戸市の事例について、政府として把握しているか示されたい。また、同様の事例が他の自治体にも存在する場合、制度上の課題として調査及び是正措置を講ずるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 五 不適切経理事案において、当該人物は刑事告発されることなく、懲戒処分後も他の外郭団体に再登用され続けている。こうした事例が制度上、許容されている現状について、政府の認識及び対応方針を示されたい。 六 外郭団体における採用制度や登用制度の在り方について、全国的なガイドラインを設け、規制を整備する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 七 外郭団体における採用について、公募制及び第三者審査制度の導入を義務化する制度改革を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 八 外郭団体における管理職等への登用について、国籍要件や政治的中立性・人権配慮に関する指針を整備する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 九 懲戒処分歴のある人物を外郭団体間で再登用することを防止するため、処分歴の通報制度や団体間の情報共有制度を構築すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 十 外郭団体において役職者(特に管理職や役員)を採用・登用する際には、その経歴・登用理由・処分歴等を文書化し、必要に応じて議会への報告義務を課すなど透明性を確保するための制度を整備するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 十一 不適切経理事案について、警察庁、兵庫県警察本部、外務省、法務省、公安調査庁及び出入国在留管理庁はそれぞれ当該事案の詳細を把握しているか示されたい。また、現在、当該人物について在留許可が継続して与えられている理由を明らかにされたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |