第217回国会(常会)
質問第一九四号 石破茂内閣総理大臣の過去の北朝鮮訪問及び接待疑惑に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十七日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 石破茂内閣総理大臣の過去の北朝鮮訪問及び接待疑惑に関する質問主意書 北朝鮮による日本人拉致問題や政治家・政府関係者に対する影響工作は、二〇〇二年の日朝首脳会談以降、日本国内において国家レベルの深刻な懸念事項として認識されてきた。こうした中、二〇〇三年、石破茂氏(当時・防衛庁長官、現・内閣総理大臣)が一九九二年に北朝鮮を訪問した際、現地の高官に対して性的接待を要求し、実際に接待(いわゆるハニートラップ)を受けたとの疑惑(以下「当該疑惑」という。)が報じられた。 当該疑惑は、「週刊文春」(二〇〇三年五月一日・八日ゴールデン・ウィーク特大号、記者:上杉隆氏)において「北朝鮮で女をおねだりした「拉致議連」代議士」として最初に報じられ、続いて「噂の眞相」(二〇〇三年十二月号)において、「石破防衛庁長官の平壌訪問時の由々しき疑惑」と題した詳細な追跡報道がなされた。報道では、匿名の北朝鮮高官による「石破氏が「女、女」と要求し、接待を受けた」旨の証言や、当時の訪朝団メンバーの回想、接待の場となったとされるカラオケバーの具体的な描写が掲載された。訪朝や高麗ホテルへの宿泊、カラオケバーへの立ち寄りなどは石破氏も認めているが、接待の事実については「五百パーセント、千パーセントない」と強く否定している。 しかし、石破氏はこれらの報道を「虚偽」と主張しているにもかかわらず、報道機関や発言者に対して名誉毀損等の法的措置を講じた事実は確認されていない。また、報道当初は訪朝の事実すら否定しており、その後、資料を突きつけられて訪朝を渋々認めたとも報じられている。前記接待や北朝鮮側の情報工作が事実であれば、日本の首相が外国勢力に影響を受ける可能性が生じ、外交・安全保障・機密保持に重大な支障をもたらすおそれがある。また、当該疑惑が米国を始めとする同盟国の情報機関に共有されている可能性も否定できないことから、我が国の統治体制に対する信用にも関わる問題であると考える。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 石破氏の過去の訪朝について、政府の把握状況を示されたい。また、その際の宿泊先(高麗ホテルなど)、出席した行事、会食・接待の相手方などの行動概要について、政府が保有している情報を明らかにされたい。 二 当該疑惑について、政府として調査又は情報収集を行ったことがあるか示されたい。事実関係を把握している場合は、その概要を示されたい。 三 北朝鮮が日本の政治家・政府関係者に対して接待やハニートラップを行った場合、それが我が国の防衛、外交、安全保障に与える影響について、政府の見解を示されたい。また、その対象が現職の内閣総理大臣であった場合、どのような対応や危機管理が求められるか、政府の見解を示されたい。 四 政治家・政府関係者が女性による接待を受けた、あるいは、接待の様子等を録音・録画されるなどしてハニートラップに巻き込まれた事例は、以下のとおり諸外国において公式な記録として確認されている。 ○FBIは二〇二〇年、中国人スパイとされる「ファン・ファン」が下院議員に接近したことについて、警告を発した。 ○オーストラリア保安情報機構(ASIO)は二〇二一年以降、中国などによる性的関係を利用した政界工作に関する実例を確認し、公式に警告している。 こうした海外の公式事例も踏まえ、日本の政治家・政府関係者が訪朝中若しくは日本国内において、女性による接待を受けた、あるいは、接待の様子等を録音・録画されるなどしてハニートラップに巻き込まれた疑いについて、政府が把握している事例はあるか示されたい。ある場合、再発防止策を示されたい。 五 政治家・政府関係者がハニートラップなどの手段により外国勢力から影響を受けないようにするため、内閣情報調査室(CIRO)や公安調査庁などの日本の情報機関は、どのような情報収集・警戒・教育・監視活動を行っているか示されたい。また、リスクがあると判断した場合、どのように対応しているか具体的に説明されたい。 六 石破氏は当該疑惑について一貫して否定しているが、報道を行った週刊誌や証言者に対して名誉毀損などの法的措置を講じたという情報は確認されていない。石破氏が当該疑惑について訴訟などの行動を取った事実があるか否か、政府の把握状況を示されたい。訴訟などの行動を取った事実がない場合、総理大臣という立場にある人物の名誉回復がなされていない現状について、政府の見解を示されたい。 七 過去に現職の総理大臣や重要閣僚が名誉毀損等で訴訟を起こした事案について、政府の把握状況を示されたい。また、そうした疑惑が外国勢力の情報操作や脅迫と関係している可能性がある場合には、その経緯や対応を記録・分析・管理する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 八 自身に対する重大な疑惑が報道された際、政治家・政府関係者が訴訟や反論などの行動を取らない場合、それは単なる個人判断にとどまらず、外交上の配慮、国家機密への関与、あるいは、外国勢力からの脅迫などが関係している可能性もある。このような対応は外交・安全保障上のリスクとなり得ると考えるが、政府の見解を示されたい。また、疑惑報道に対して政治家・政府関係者が訴訟等の行動を取らないケースが生じた場合の対応について、政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |