質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一九一号

我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十三日

石橋 通宏


       参議院議長 関口 昌一 殿



   我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

一 難民認定の実態について

 1 難民認定申請者について

 (1) 二〇二三年末及び二〇二四年末時点で、難民認定申請中の者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

 (2) 二〇二三年末及び二〇二四年末時点で、審査請求(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の九第一項の規定による異議申立てを含む。以下同じ。)中の者の数及び難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

 (3) 二〇二四年の難民認定制度の「濫用」の件数を示されたい。

 (4) 二〇二五年三月に公表された「令和六年における難民認定者数等について」によれば、二〇二四年の難民認定申請者のうち、千二百人が二十歳未満であった。そのうち、難民認定申請時に在留資格を有していなかった者の数を示されたい。また、難民認定申請回数別の内訳を示されたい。

 (5) 「令和六年における難民認定者数等について」によれば、二〇二四年に仮滞在を許可した者は九十六人であった。このうち、二十歳未満の者の数及びその年齢の内訳を示されたい。

 2 案件振分けについて

 「難民認定等事務取扱要領」(二〇二四年六月十日一部改正)は、難民認定申請案件を「難民条約上の難民若しくは法第二条第三号の二に規定する補完的保護対象者である可能性が高いと思われる案件又は本国における個別事情により人道上の配慮を要する可能性が高いと思われる案件」(A案件)、「難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件」(B案件)、「再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件」(C案件)及び「上記以外の案件」(D案件)の四類型(以下「四類型」という。)に振り分けている。

 (1) 現時点において、四類型の定義に変更はあるか示されたい。変更がある場合は、その内容を示されたい。

 (2) 二〇二二年、二〇二三年及び二〇二四年に難民認定申請の結果が出た者について、案件振分け別の人数及び平均処理期間をそれぞれ示されたい。

 (3) A案件について、政府は「難民認定等事務要領」において「可能な限り早期処理に努める」との方針を示している。A案件に振り分けられた者の「早期処理」は、どのような取組によって達成可能であると考えるか、政府の見解を示されたい。

 3 難民審査体制について

 (1) 二〇二五年五月に公表された「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下「ゼロプラン」という。)において、政府は「二〇二六年中に新規受理した申請の六か月以内(平均)の処理を目指す」としている。二〇二二年、二〇二三年及び二〇二四年中に新規受理した申請について、平均の処理期間をそれぞれ示されたい。

 (2) 「ゼロプラン」において、政府は「※ただし、今後の難民等認定申請者数や長期未処理案件の処理状況等によって変動があり得る」としており、長期未処理案件の処理状況は政府にとって重要な課題であると考える。以上を踏まえて、以下の統計を明らかにされたい(速報値でも差し支えない)。

 ① 二〇一四年以前の難民認定申請受理案件のうち、直近時点での難民認定申請係属件数。

 ② 二〇一四年以前の難民認定申請受理案件のうち、直近時点での難民不認定処分に対する審査請求係属件数。

 ③ 二〇一五年から二〇二四年までの各年における難民認定申請受理案件のうち、直近時点での難民認定申請係属件数。

 ④ 二〇一五年から二〇二四年までの各年における難民認定申請受理案件のうち、直近時点での難民不認定処分に対する審査請求係属件数。

 ⑤ 二〇一四年以前の難民不認定処分に対する審査請求受理案件のうち、直近時点での未処理の案件数。

 ⑥ 前記⑤のうち、審理終結件数。

 ⑦ 二〇一五年から二〇二四年までの各年における難民不認定処分に対する審査請求受理案件のうち、直近時点での未処理の各案件数。

 ⑧ 前記⑦のうち、各年の審理終結件数。

 (3) 二〇二五年四月一日現在の難民調査官に指定されている者の数を地方局別に示されたい。

 (4) 二〇二五年四月一日現在の出身国情報の収集等に専従する職員の数を示されたい。

 4 難民認定者等について

 (1) 二〇二四年に難民として認定された者(審査請求手続における認定者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者数を難民認定申請回数別に示されたい。また、退去強制令書発付後に難民として認定された者の数を示されたい。

 (2) 二〇二四年に難民としては認定されなかったものの、補完的保護対象者と認定された者のうち、複数回申請者数を難民認定申請回数別に示されたい。また、退去強制令書発付後に補完的保護対象者として認定された者の数を示されたい。

 (3) 二〇二四年に難民及び補完的保護対象者のいずれにも認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者(審査請求手続の結果、在留を認められた者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者数を難民認定申請回数別に示されたい。また、退去強制令書発付後に在留特別許可された者の数を示されたい。

 (4) 二〇二四年に難民として認定された者について、難民認定申請から難民の認定を受けるまでに要した期間別の内訳を示されたい。また、難民認定申請から難民の認定を受けるまでの平均日数、最短日数及び最長日数をそれぞれ示されたい。

 (5) 二〇二四年に難民として認定された者について、四類型別の内訳を明らかにされたい。

 (6) 二〇二四年に難民として認定された者のうち、審査請求により「理由あり」とされた者(難民認定者)十四人の国籍の内訳を示されたい。

 (7) 二〇二四年に難民及び補完的保護対象者のいずれにも認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者のうち、審査請求により当該在留が認められた十五人の国籍の内訳を示されたい。

 5 審査請求について

 (1) 「令和六年における難民認定者数等について」によれば、二〇二四年に審査請求により「理由あり」とされた者及び「理由なし」とされた者のうち、四百五十七人に口頭意見陳述等期日が実施され、二千七百九人には口頭意見陳述等期日が実施されていない。口頭意見陳述等期日が実施されていない二千七百九人のうち、「口頭意見陳述申立書」を提出していた者の数を示されたい。

 (2) 二〇二四年における口頭意見陳述等期日の数を示されたい。また、そのうち代理人の同席があった期日の数を示されたい。

 (3) 「法務省所管令和七年度歳出概算要求書」によると、政府は難民審査参与員に対する委員手当として、八百九十一日分の審尋・事案検討に係る予算を計上している。前年度の千七百九十三日分から半減しているが、当該理由について、政府の見解を示されたい。

 (4) 私が提出した「我が国における難民認定の状況に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問第一八四号)に対する答弁書(内閣参質二一三第一八四号。以下「前回答弁書」という。)の「一の5の(6)」によると、令和六年六月時点における「常設班」の数は「東京出入国在留管理局に二十三班、名古屋出入国在留管理局に五班、大阪出入国在留管理局に三班」であった。現時点において、これらの数に変更はあるか示されたい。変更がある場合、当該数を示されたい。

 (5) 難民審査参与員のうち、二〇二四年において、常設班を構成しなかった者はいるか示されたい。いる場合、当該人数及び理由について、政府の見解を示されたい。

 6 訴訟について

 難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、二〇二四年に提起された件数及び終局裁判がなされた件数をそれぞれ明らかにされたい。加えて、難民不認定処分の取消し若しくは無効が確定した後又は難民認定処分の義務付け訴訟で国側が敗訴した後、難民認定がなされず、在留資格が付与されなかったケースはあるか示されたい。ある場合、当該理由について、政府の見解を示されたい。

二 空港等での庇護申請関係の統計について

 政府は二〇一五年九月から「難民の迅速かつ確実な庇護」を推進するための難民認定制度の運用の見直しを行っている。空港は難民保護の正に最前線であり、上陸審査時に難民認定申請を希望した者に適切に対処できているかどうかは、「難民を迅速に庇護」できているか否かを示す、重要な指標である。

 1 二〇二三年及び二〇二四年に一時庇護上陸許可を申請した者の数及び許可状況を国籍別に示されたい。

 2 政府は、アフガニスタン、スーダン、ミャンマー及びシリアの出身者について、本国の情勢不安を理由に、在留や就労を認める措置をとっている。当該国の出身者が上陸審査時に庇護を求めた場合は、当然、上陸を拒否することなく、一時庇護上陸許可の対象とするべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 3 二〇二四年の我が国の空港支局等における難民認定申請件数を、申請が行われた空港支局別(成田・羽田・中部・関西)及び福岡空港出張所についてそれぞれ示されたい。

 4 「令和六年における難民認定者数等について」によれば、二〇二四年に仮滞在を許可した者は九十六人、仮滞在の許否を判断した人数は七百三人である。そのうち、空港支局等(成田・羽田・中部・関西空港支局及び福岡空港出張所)において仮滞在が許可された人数及び許可されなかった人数をそれぞれ明らかにされたい。

 5 二〇二三年及び二〇二四年に避難を目的とする短期滞在の在留資格による上陸を許可した者はいるか示されたい。いる場合、当該人数を国籍別にそれぞれ示されたい。

 6 二〇二二年、二〇二三年及び二〇二四年の出国待機施設の利用状況について、①定員、②年間の使用者数、③平均及び最長滞在日数、④施設内での傷病発生件数を空港支局別にそれぞれ示されたい。

三 難民認定申請者の収容について

 1 二〇二四年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数と、そのうち、難民認定申請中、審査請求中及び難民不認定処分の取消しを求める訴訟係属中の者の数をそれぞれ明らかにされたい。

 2 二〇二四年の被収容者の自殺件数、自傷行為(自殺未遂含む)の件数、精神科医の利用実績、庁外診療数及び救急搬送件数を収容施設別に示されたい。統計がない場合、収容施設における医療体制の充実を図ることが困難であると考えるが、集計が困難な理由について、政府の見解を示されたい。

 3 二〇二四年における仮放免の申請、許可及び不許可件数について、収容施設別に示されたい。

 4 二〇二四年における被送還者、自費出国による送還及び国費送還の数を示されたい。また、国費送還のうち、集団送還及び送還を忌避する者の数について、国籍別に示されたい。

四 保護費の支給状況について

 1 二〇二四年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間。以下四の7まで同じ。)について、保護費を申請した者の数及び保護費を受給していた者の数をそれぞれ明らかにされたい。

 2 二〇二四年度に保護費を受給していた者について、家族構成、性別、在留資格及び難民申請回数別の内訳を示されたい。

 3 二〇二四年度に保護費を受給していた者の申請から受給決定までの平均待機期間及び平均受給期間をそれぞれ示されたい。

 4 二〇二四年度に保護費を申請したが受給できなかった者の数、国籍の内訳及び申請から結果が出るまでの平均待機期間を明示されたい。

 5 二〇二四年度の難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「ESFRA」という。)の利用者数を性別及び国籍別に示されたい。また、保護費の申請からESFRAの利用開始までの平均日数、最短日数及び最長日数をそれぞれ示されたい。

 6 二〇二四年度末及び現時点における、ESFRAの利用者数を示されたい。

 7 二〇二四年度について、①保護費、②生活費、③住居費、④医療費のそれぞれの支給額を示されたい。また、二〇二四年度のESFRAの予算額及び執行額をそれぞれ示されたい。

 8 政府は、保護措置対象者のうち、直ちに住居を確保する必要がある者に対して、ESFRAへの入居を認めている。直ちに住居を確保する必要があるにもかかわらず、ESFRAに入居していない難民認定申請者の存在について、政府の把握方法を示されたい。

 9 保護措置の開始を不適当とする場合、政府は当該理由を難民認定申請者保護事業等の実施委託先に通知しているか示されたい。

 10 保護費の申請から受給決定までの待機期間の短縮を図ることを目的として二〇二四年度中に外務省及び委託先において行われた取組があるか示されたい。ある場合、当該取組の詳細を示されたい。

五 難民認定制度の在り方について

 1 法務省は、二〇一五年九月に公表した「難民認定制度の運用の見直しの概要」の5の(1)において、いわゆる「新しい形態の迫害」を申し立てる者が難民条約の適用を受ける難民の要件を満たすか否かの判断に関して「難民審査参与員が法務大臣に提言をし、法務大臣がその後の難民審査の判断に用いるようにするための仕組み」を構築するとしている。

 この「仕組み」に関して、政府は前回答弁書の「五の1」において「手引の内容に関する提言を行う取組を開始し、御指摘の「仕組み」を構築した」と答弁している。当該「仕組み」について、現時点までの運用状況を示されたい。

 2 二〇二〇年十二月に公表された第七次出入国管理政策懇談会による報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」において、「行政の公正性や適正性を維持する観点から、難民認定業務の専門性・独立性をより高めるために、その組織の在り方について検討することを求めたい」としている。同報告書を踏まえ、「難民認定業務の専門性・独立性をより高めるため」に政府が行った取組を示されたい。

 3 二〇二一年七月に行われた出入国在留管理庁とUNHCRとの協力覚書の交換において、「難民調査官の調査の在り方について、UNHCRとケース・スタディを実施」するとされている。前回答弁書の時点から現時点までのケース・スタディの実施件数及び今後の予定を示されたい。また、同ケース・スタディの結果、地方官署に対して発出した文書を示されたい。

 4 政府は二〇二〇年度から二〇二四年度にかけて、「出身国情報等調査研究委託」として二か国分の予算を要求している。これらの予算の執行状況及び調査研究の対象国を示されたい。また、当該調査研究の結果、地方官署に対して発出した文書がある場合、当該文書を示されたい。

六 二〇二三年改正入管法の運用状況について

 1 二〇二五年三月に公表された「令和五年改正入管法の運用状況について」によれば、二〇二四年六月十日から十二月末までに十九人が送還停止効の例外となり、送還されている。この十九人について、国籍及び年齢の内訳を示されたい。

 2 二〇二四年の三回目以降の難民認定申請者二百九十八人のうち、申請日時点で十八歳未満の者の数を示されたい。また、十八歳未満の者に対して、送還停止効の例外を適用し、送還することはあるか。政府の見解を示されたい。

 3 二〇二四年に出入国管理及び難民認定法第五十二条第十二項の規定により旅券の発給の申請その他送還するために必要な行為として法務省令で定める行為をすべきことを命じられた者の数を示されたい。

 4 二〇二四年に出入国管理及び難民認定法第五十五条の二第一項の規定により退去を命じられた者の数を示されたい。

 5 「令和五年改正入管法の運用状況について」によれば、退去強制令書発付前の者について、二〇二四年六月十日から十二月末までに六百四十七件の監理措置が決定されている。二〇二四年六月十日から十二月末までに収容令書により収容された者の数を示されたい。

 6 「令和五年改正入管法の運用状況について」によれば、退去強制令書発付後の者について、二〇二四年六月十日から十二月末までに四百七十六件の監理措置が決定されている。二〇二四年六月十日から十二月末までに退去強制令書により収容された者の数を示されたい。

七 条約難民に対する定住支援プログラムについて

 二〇二四年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)における、条約難民に対する定住支援プログラムの実施状況について、以下明らかにされたい。

 1 定住支援プログラムの受講者数。

 2 ①生活援助費、②医療費、③定住手当のそれぞれの予算額及び執行額。

 3 条約難民宿泊施設の予算額及び執行額。

八 条約難民の帰化について

 二〇二五年三月に公表された「我が国における難民保護の状況等」によれば、一九八二年に初めて難民認定がなされてから二〇二四年に至るまで、千六百十人が条約難民として認定されている。これらの条約難民の帰化状況について、以下明らかにされたい。

 1 条約難民のうち、これまでに日本に帰化申請を行った者の数。そのうち、帰化が許可された者の数及び不許可とされた者の数。

 2 条約難民のうち、過去五年間に帰化申請を行った者の数。そのうち、帰化が許可された者の数及び不許可とされた者の数。

 3 条約難民のうち、これまでに日本への帰化が認められた者の人数及び国籍の内訳。

 4 「締約国は、難民の当該締約国の社会への適応及び帰化をできる限り容易なものとする。締約国は、特に、帰化の手続が迅速に行われるようにするため並びにこの手続に係る手数料及び費用をできる限り軽減するため、あらゆる努力を払う」と定める難民条約第三十四条の規定を踏まえ、政府が条約難民の帰化申請手続において行っている「あらゆる努力」の内容。

 5 条約難民の帰化を不許可とする場合、その理由。

  右質問する。