第217回国会(常会)
質問第一八九号 「日本版チャイナ・ハウス」設立の必要性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十三日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 「日本版チャイナ・ハウス」設立の必要性に関する質問主意書 中国共産党が統一戦線工作部などを通じ、海外の政治家・学者・メディア・華僑団体に対する影響力工作を国家戦略として展開していることは国際的に指摘されている。こうした活動は、相手国の世論形成や政策決定過程に干渉し、結果として中国共産党に有利な政治・経済・文化環境を形成することを目的とした、いわば「非軍事的影響力工作」の一環であると考える。 日本においては、戦後初期の在日華僑工作、一九七二年の日中国交正常化前後の政財界・言論界への浸透、天安門事件後の「対中融和」世論の操作、孔子学院や学術支援を通じた教育界への介入など、数十年にわたり様々な影響力工作が繰り返されてきたと思料する。近年では、サイレント・インフィル(静かな浸透)と称される形で、明確な工作であることを悟られないまま、自己検閲や親中的言論の拡大といった形で浸透が進んでいるとの指摘もある。 欧米諸国では、情報共有や立法措置、専門組織の設置を通じて国家戦略としての対処を進めている。特に、米国では二〇二二年、国務省内に「チャイナ・ハウス(中国調整室)」を設置し、省庁横断的に中国の影響力工作への対応に当たっている。 これに対し、日本では、中国の国家戦略や思想・歴史観・世論操作戦術を体系的・実証的に研究し、国家政策に反映させるための独立した戦略研究機関が存在しないと認識している。中国研究の蓄積はあるものの、政策実務との連携や情報戦への即応性は著しく不足していると考える。 したがって、影響力工作の実態把握及び対処の両立を図るためには、関係府省・大学・民間研究者等の知見を集約し、政府の対中戦略を中長期的に支える「日本版チャイナ・ハウス(仮称)」の設立が不可欠であると考える。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 中国共産党が海外に対して展開する影響力工作、いわゆる統一戦線工作について、政府はどのような認識を有しているか示されたい。特に、日本国内における過去の影響力工作(在日華僑組織への関与、孔子学院の設置及び政治家・学者・報道関係者への働きかけ等)について、政府の把握状況を示されたい。 二 前記の中国による影響力工作が、日本の政治的独立性、学術的中立性及び言論の自由に与える影響について、政府の評価を示されたい。これまでに何らかの調査・研究・対策を実施した事例がある場合、当該内容を示されたい。 三 中国に関する国家戦略・影響力・情報戦を総合的に把握し分析する米国国務省の「チャイナ・ハウス」のような専門機関の必要性について、政府の認識を示されたい。また、「チャイナ・ハウス」に類似する機関の設置について検討したことがあるか示されたい。 四 日本における中国研究は主に大学・民間において蓄積されているが、これらの研究を国家戦略にいかすための制度的枠組み(例:政策提言、委託研究、政府との連携機構)は十分に整備されているか、政府の見解を示されたい。十分に整備されていないと認識している場合、その改善に向けた方針を示されたい。 五 前記を踏まえ政府直轄又は独立行政法人等の形態により、各府省や大学・民間研究機関と連携して戦略的な中国研究・対中政策提言を行う機関として、「日本版チャイナ・ハウス(仮称)」を設立することについて、政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |