第217回国会(常会)
質問第一八○号 医療費適正化計画に係る政策評価に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十二日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 医療費適正化計画に係る政策評価に関する質問主意書 政府は第四期医療費適正化計画(以下「第四期医療計画」という。)において、薬剤の適正使用を通じた医療費の効率化を重要施策の一つとして位置付け、リフィル処方箋制度の活用、抗菌薬の適正使用、重複投薬・多剤投与の適正化等を推進している。 しかし、これらの施策については、(1)導入後の運用目標や効果の可視化が不十分であること、(2)根拠となる基準や数値設定が現場と乖離しているとの指摘があること、(3)医療現場での制度的障壁が解消されていないこと等の課題が残されている。 以上を踏まえて、制度の実効性、現場との整合性及びエビデンスに基づく見直しの観点から、以下質問する。 一 リフィル処方箋制度の活用 1 第四期医療計画において、リフィル処方箋制度の普及に関し、政府は具体的な数値目標(使用件数、対象患者割合、普及率等)を設定しているか示されたい。設定している場合、当該内容を示されたい。未設定である場合、当該理由を明示されたい。 2 リフィル処方箋に対しては、現場から「患者への説明責任の負担増」、「薬局での疑義照会の増加」、「トラブル時の責任所在が不明確」等の声が上がっているが、こうした実務的障壁に関する政府の把握状況を示されたい。また、解消に向けた改善策を講じているか示されたい。 3 リフィル処方箋制度導入以降のリフィル処方箋の年間発行件数・対象患者数・薬剤種別・医療費削減額について、現時点における政府の把握状況を示されたい。 二 抗菌薬の適正使用 1 抗菌薬の不適切な処方(風邪・ウイルス感染症に対する安易な処方など)について、日本国内での発生頻度、医療費への影響及び耐性菌リスクに関する政府の評価を示されたい。 2 前記二の1について、前記の不適切な処方に対して、政府が今後講ずる予定の対策はあるか示されたい。第四期医療計画ないし第四期医療計画以外において、前記の不適切な処方に対する具体的な施策(報酬制度・ガイドライン・監査・ICT活用等)を示されたい。 三 重複投与・多剤併用の適正化 1 第四期医療計画では「九剤以上処方されている場合に必ずしも必要のない医薬品が処方されている可能性が高くなる」とされているが、基準を「九剤以上」とした根拠は平成十七年の米国論文(Hajjar et al.)か示されたい。他に根拠とした論文等があれば全て示されたい。 2 前記三の1について、基準を「九剤以上」とした根拠が前記平成十七年の米国論文のみである場合、現在の我が国における外来高齢者医療とは実態が異なると思料するが、第四期医療計画において、「九剤以上」という基準を採用している根拠を示されたい。また、当該基準を採用する上で妥当性評価を行ったか、理由と併せて示されたい。 3 前記三の2について、基準を「九剤以上」とした根拠が平成十七年の米国論文以外に存在する場合、当該根拠は現在の我が国における外来高齢者医療の実態と乖離が生じていると思料するが、政府の見解を示されたい。また、当該論文を根拠として採用する上で妥当性評価をしたか、理由と併せて示されたい。 4 国内外の様々な研究では、重複投与・多剤併用について、五剤以上から有害事象リスクが有意に上昇することが報告されており、基準を「五剤以上」とすることへの見直しが必要であると考えるが、国際基準(Beers Criteria等)との整合性も含め、政府の見解を示されたい。また、現在の加算制度(ポリファーマシー加算・服薬調整支援料等)では「六剤以上」の内服薬を処方された患者を対象としているが、現在の加算制度の基準が国内外の研究と異なる理由及び基準を「六剤以上」とした根拠について示されたい。 5 現在の「多剤投与」の定義は、慢性疾患の併存や医師の裁量をどの程度考慮し定義されているか示されたい。また、「多剤投与の削減」がアウトカム(QOL、再入院率、医療費削減等)に与えた影響について、政府が把握している評価結果を全て示されたい。 6 政府は本施策により年間約二千億円の医療費削減が可能と推計している。当該推計額は過少であると思料するが、当該推計額の算出根拠を示されたい。 7 前記三の6について、民間調査等では、不要薬剤による医療費の総額は最大五千億円規模との指摘もあるが、現行推計が過少である可能性及び民間調査との乖離が生じている要因について、政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |