第217回国会(常会)
質問第一七九号 医療費適正化計画における入院医療費の取扱い及び目標・実績の整合性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十一日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 医療費適正化計画における入院医療費の取扱い及び目標・実績の整合性に関する質問主意書 政府は、医療費の持続可能性を確保するため「医療費適正化計画」(以下「医療計画」という。)を策定し、現在は第四期医療計画(二〇二四年度~二〇二九年度)が実施中である。「経済財政運営と改革の基本方針(以下「骨太方針」という。)二〇二三」において一人当たり医療費の地域差半減に向けて地域の実情に応じて取り組むこととされたことを踏まえ、第四期医療計画は外来医療費に関する施策を中心に構成されている。 しかし、第四期医療計画は、①入院医療費に関する施策や目標が十分に盛り込まれていない上、②外来医療費についても目標に対する実績が定量的に示されていないため、政策の透明性及び整合性の観点から根本的な問題があると考える。特に、後発医薬品の使用促進、特定健診・特定保健指導の受診率向上、重複投薬や多剤併用の適正化等の施策について、厚生労働省は効果額試算のための具体的な式や係数を示しており、実績値を用いた定量的効果の検証は本来可能であるため、実績を踏まえた施策を盛り込むのは当然であると考える。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 入院医療費が政策対象から除外されている理由について 1 政府が把握する入院医療費及び外来医療費の直近の総額をそれぞれ示されたい。 2 第四期医療計画において、「一人当たり入院外医療費について、年齢調整を行い、なお残る一人当たり入院外医療費の地域差について全国平均との差を半減することをもって、地域差半減として取り扱う」(以下「地域差縮減政策」という。)とされているが、地域差縮減政策の目標及び効果額の試算対象が「入院外医療費」に限定され、入院医療費が含まれていない理由を明確に示されたい。 3 「令和四(二〇二二)年度 国民医療費の概況」のデータでは、入院医療費と入院外医療費は同程度の水準であるにもかかわらず、地域差縮減政策の目標の対象について、入院医療費を除外し入院外医療費のみとしている理由について、その整合性を示されたい。 4 社会保障審議会医療保険部会第百九十三回資料において、外来・入院の分類は、「医科診療(入院外)」、「薬局調剤」、「訪問看護」、「療養費」等が全て外来医療費に含まれているが、これらを外来医療費に含めた理由を示されたい。また、この分類が地域差縮減政策の趣旨目的を踏まえて妥当であると考えているのか、その根拠と併せて政府の見解を示されたい。 二 医療計画と骨太方針の目標との整合性について 1 二〇一五年以降、骨太方針において「一人当たり医療費の地域差半減」は繰り返し目標とされてきた。骨太方針では年齢調整後の医療費全体(入院と外来を合わせた費用)を対象としているにもかかわらず、医療計画では外来医療費のみが対象とされているが、対象が異なる理由を示されたい。また、それぞれの政策における対象の違いについて政府はどのように整理しているかを示されたい。 2 入院医療費には地域差の主要因(病床数・入院率・在院日数等)が密接に関連しているにもかかわらず、これらの主要因に関して明確な施策を設けていないため、地域差縮減政策は不完全であると思料するが、政府の見解を示されたい。施策として地域医療構想を回答する場合、二〇一五年以降の地域医療構想の医療費適正化効果について時系列に沿って明らかにされたい。 三 外来医療費に係る適正化効果額と実績の非開示について 1 第四期医療計画では、外来医療費に係る適正化効果額について、「地域差縮減を目指す取組による」推計方法等が示されている一方、その進捗状況や目標との乖離(達成状況)は数値で明示されていない。政府として、目標に対する実績評価は行っているのか示されたい。行っている場合、公開していない理由を示されたい。行っていない場合、行わない理由を明らかにされたい。 2 ジェネリック医薬品の数量シェア、特定健診・保健指導の実施率及び多剤併用・重複投薬の減少数などについては、厚生労働省が定式化した推計式や係数を用いれば、年度ごとに実績効果を算出することは可能と考えるが、政府の見解を示されたい。 3 前記三の2について、算出可能であれば、算出・公表していない理由及び今後の方針を示されたい。 4 医療計画や骨太方針において、「地域差半減」を目標とし、「医療費削減の規模」を明示する場合、年度ごとの到達度(目標に対して実績がどこまで進捗したかという達成状況)の公表や達成・未達成の要因分析を行わなければ、政策におけるPDCAが機能しないと考えるが、政府の見解を示されたい。また、今後どのように進捗管理体制の強化を図る予定か、政府の見解を示されたい。 四 入院医療費を含めた今後の再評価の必要性について 1 骨太方針や地域医療構想、医療計画において、病床再編や地域偏在対策の効果が入院医療費に与える影響を検証すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、これまでそのような定量評価や因果分析が行われた実績がある場合、その詳細を全て示されたい。 2 今後、入院医療費も含めた医療費全体を対象とした地域差縮減政策を再構築し、目標管理を再設計する予定はあるか、理由も併せて示されたい。予定がある場合、時期及びその体制について具体的に示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |