質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一七○号

公用パソコン内の不適切な私用データの法的取扱いに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   公用パソコン内の不適切な私用データの法的取扱いに関する質問主意書

 地方自治体において、公務員が公用パソコンを使用して作成した私用データ(文章や不適切な内容を含むデータ)が発見され、問題となっている。兵庫県の情報漏洩問題においては、自殺した元県幹部が公用パソコン内に私用データを作成し、それが第三者委員会の調査で明らかになった事例が報告されている。このようなケースにおいて、データの所有権、処分権限、著作権及びプライバシー権に関する法的な取扱いが不明確であるため、以下質問する。

一 データの所有権について

 公用パソコン内に、公務とは無関係な私用データ(勤務時間中に作成されたもの)が存在する場合、当該データの所有権は地方自治体(使用者)に帰属するか示されたい。また、作成者である公務員が所有権を主張できるか示されたい。

 なお、「データは無体物であるため所有権の対象とならない」といった抽象的な回答ではなく、運用上どのように取り扱うべきかについて、具体的に政府の見解の見解を示されたい。

二 データの処分権限について

 公用パソコン内の私用データについて、作成者に無断で地方自治体が当該データを削除又は処分することは、法的に許容されるか示されたい。公用データと同様の取扱い(例えば、自治体の裁量で管理・削除)が可能か示されたい。また、処分する際に作成者の同意が必要か否か示されたい。

三 データの著作権の帰属と取扱いについて

 公用パソコン内で作成された私用データ(文章や不適切な内容を含むデータ)に著作権が発生する場合、当該データの著作権は、作成者である公務員に帰属するか若しくは地方自治体に帰属するか、政府の見解を示されたい。地方自治体が公務員の意に反して当該データを利用又は公開する場合、著作権法上の問題が生じると考えるが、公用パソコン内で作成された私用データについては、著作権が放棄されているとみなす運用が可能であるか、政府の見解を示されたい。

四 プライバシー権との関係について

 公用パソコン内の私用データについて、地方自治体がその内容を精査し、必要に応じて公開又は第三者に提供する場合、作成者のプライバシー権との関係で問題が生じると考えるが、公用パソコンに保存されたデータについては、プライバシー権が制限されると解釈してよいか、政府の見解を示されたい。プライバシー権が制限されるとの解釈である場合、違法行為の摘発が目的であるならば、プライバシー権の主張は認められないとする運用は適切か政府の見解を示されたい。

五 地方公務員法との関連について

 地方公務員法では、職務専念義務(第三十五条)や守秘義務(第三十四条)が定められているが、公用パソコンを使用して私用データを作成する行為は、これらの規定に違反する可能性がある。このような行為が確認された場合、地方自治体が当該データを証拠として収集し、懲戒処分の根拠とすることは法的に問題ないか示されたい。特別職(例えば、知事)が当該データの作成又は漏洩に関与した場合、地方公務員法や地方自治法に基づく責任はどのように解釈されるか示されたい。

六 情報公開との関係について

 公用パソコン内の私用データが情報公開請求の対象となった場合、地方自治体は当該データを公開する義務が発生するか示されたい。所有権が地方自治体に帰属する場合、「公開しても問題ない」とする解釈は適切か示されたい。また、個人情報保護の観点から公開を拒否する場合、判断基準について、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。