第217回国会(常会)
質問第一六四号 公益通報の対象範囲に係る政府見解の変更経緯等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月九日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 公益通報の対象範囲に係る政府見解の変更経緯等に関する質問主意書 消費者庁は令和二年十月、公益通報者保護法(以下「本法」又は「法」という。)第十一条第四項の規定に基づく指針(以下「法定指針」という。)の内容等を検討するため、「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会」(以下「検討会」という。)を設置した。 第一回検討会(同年十月十九日)の資料三「御議論いただきたい事項等」には、本法第十一条第四項に関し、「※指針の対象となる通報は「事業者内部」への「公益通報」に限られており、その他の通報は本指針の対象とはならない(事業者がその他の通報を含めた制度設計をすることは妨げられるものではない)。」と記載されていた。また、同資料の注釈一には、「以下、本資料では、単に「公益通報」と記載した場合、事業者内部に対する公益通報(法第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報)を意味する。」と記載されていた。同資料中には、事業者内部に対する公益通報(法第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報)以外の公益通報(法第三条第二号及び第三号並びに第六条第二号及び第三号に定める公益通報)に関する「適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置」(法第十一条第二項)に関する記述は見当たらなかった。 第二回検討会(同年十一月十三日)の資料二「御議論いただきたい事項等」は、前記第一回検討会の資料三と同内容であった。 第三回検討会(同年十二月二十三日)の資料二「これまでの検討を踏まえて現時点において考えられる方向性」の注釈二には、「一 公益通報への対応体制について」という項目について「以下、本資料では、単に「公益通報」と記載した場合、事業者内部に対する公益通報(法第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報)を意味する。」と記載されていた。同資料には、「二 その他公益通報対応を機能させる体制について」という項目において、「(一)不利益な取扱いを防止する体制」として「事業者の役職員が、一号通報をした者に対して、一号通報をしたことを理由として不利益な取扱いを行うことを防ぐための措置をとる。」と記載されていた。 しかし、第四回検討会(令和三年二月九日)の資料二「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書(案)」には、「二 公益通報をする者を保護する体制の整備」という項目の注釈二において、「内部公益通報に限定されるものではない。」と記載されていた。 最終回の第五回検討会(同年三月二十二日)の資料「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書(案)」には、「二 公益通報者を保護する体制の整備」という項目の注釈十六において、「内部公益通報をする者に限定されるものではない。処分等の権限を有する行政機関やその者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対して公益通報をする者についても、同様に不利益な取扱いが防止される必要があるほか、範囲外共有や通報者の探索も防止される必要がある」と記載されていた。 以上のとおり、消費者庁は、本法の法定指針を定めるに当たって設置した検討会の第三回までは、法定指針の対象となる通報について、事業者内部に対する公益通報(法第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報。以下「内部通報」という。)に限られるとし、内部通報以外の公益通報(法第三条第二号及び第三号並びに第六条第二号及び第三号に定める公益通報。以下「外部通報」という。)に関する事項が法定指針の対象になるとの見解は示していなかった。しかし、検討会の第四回以降は一転して、法定指針の対象となる通報について、内部通報に限らず、外部通報にも及ぶとの見解を示すようになったと考えられる。 以上の経緯を踏まえ、以下質問する。 一 第三回検討会までは、法第十一条第四項の規定に基づく指針(法定指針)の対象について、消費者庁は事業者内部に対する内部通報に限られるとの見解であったという認識でよいか、見解を示されたい。異なる見解(いわゆる外部通報も含まれるとの見解)であったという場合、第三回検討会まで法定指針の対象となる通報は内部通報に限られるとの見解を示していた具体的な理由を明らかにされたい。 二 消費者庁は、遅くとも第四回検討会までに、法定指針の対象に関する見解を変更したと見受けられるが、見解を変更した時期、決裁権者及び変更した理由を具体的に明らかにされたい。 三 法定指針の対象に関する見解の変更について、消費者庁は所管の国務大臣及び検討会の委員に説明したことがあるか示されたい。また、閣議その他国務大臣が出席する会議体若しくは検討会において、法定指針の対象について、説明又は議論されたことはあるか示されたい。ある場合は、議論等の内容を具体的に明らかにされたい。 四 政府は、本法改正案を第二百一回国会に提出し、可決成立するまでの間、法定指針の対象について内部通報に限られるとの見解であったという認識でよいか、見解を示されたい。異なる見解(外部通報も含まれるとの見解)であったという場合、本法改正案が成立するまでに一度でも国会の審議その他公表された発言や資料等において、外部通報も含まれるとの見解を示したことはあるか。示したことがある場合、具体的に明らかにされたい。 五 一般に、国会で可決成立した法律に関し、政府又は当該法律を所管する行政庁が当該法律の規定に関する適用範囲等の解釈・見解を変更することは、立法者の意思に反することになるため、国会が「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」との日本国憲法第四十一条に照らして、原則として認められるべきでないと考える。仮に認められるとしても、無条件に認められるということがあってはならず、厳格な条件・手続の下で例外的に認められるにとどめるべきものである。 1 前記の点について、政府も同じ見解か示されたい。 2 法律の成立後、当該法律の規定に関する解釈・見解を変更する場合の条件・手続についてのルールや規範等はあるか示されたい。ある場合、その仔細を根拠と併せて具体的に全て明らかにされたい。 六 政府は本法改正案が成立した後、消費者庁が第三回検討会開催後から第四回検討会までの間に、法定指針の対象に関する見解を変更したこと及びその手続について、従来の規範との抵触若しくはその他改善を要する問題点があったと考えるか示されたい。問題点等があったと考える場合、当該問題に関する対応策を具体的に明らかにされたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |