質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一六○号

アンケート調査に係る信頼性確保及び報道の在り方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月九日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   アンケート調査に係る信頼性確保及び報道の在り方に関する質問主意書

 令和六年、兵庫県議会(以下「県議会」という。)に設置された百条委員会において、齋藤元彦兵庫県知事によるパワーハラスメントの有無を検証するための職員アンケートが実施され、その結果について「職員の約四割がパワハラを見聞きした」と広く報道された。NHKが同年八月二十日に配信した「兵庫斎藤知事「業務上の指導」職員の約四割パワハラ見聞きに」と題した報道(以下「NHKの報道」という。)を始め、FNN(フジニュースネットワーク)系列のテレビ報道、毎日新聞、朝日新聞等においても、同アンケート結果が大きく取り上げられた。

 しかし、県議会議員・増山誠氏が県議会事務局に確認したところ、当該アンケートは「URLを知っていれば誰でも何度でも回答できる仕様」であり、以下のような重大な技術的瑕疵があったことが判明している。

 ○回答者の本人確認が行われていなかった

 ○職員ID等の識別情報の入力が求められていなかった

 ○回答の重複や外部からの操作の排除措置がなかった

 増山氏は令和六年十二月四日、自身のSNSにおいて、「兵庫県議会事務局に改めて質問したところ「職員アンケートはURLを知っていれば、誰でも何度でも回答可能な仕様」であるということが確認できました」と述べている。

 県議会では、同年九月十九日、全会派で共同提出した齋藤知事に対する不信任決議案が全会一致で可決された。技術的信頼性を著しく欠いたアンケート結果を事実として一方的に大手報道機関が報じたことにより、齋藤知事に対する不信任の世論を喚起し、県議会での不信任決議の可決にまでつながった可能性は否定できない。

 こうした事態は、地方自治の安定性や報道の公共性に係る重大な問題であり、政府として調査・対応に乗り出す必要があると考える。以上を踏まえて、以下質問する。

一 NHKの報道を含む一連のテレビ・新聞報道において、技術的信頼性を欠いたアンケート結果を断定的に扱ったことについて、政府の評価及び見解を示されたい。

二 当該アンケート結果について、FNN系列のテレビ報道や毎日新聞を始めとする多くの報道機関が断定的に報じた経緯について、総務省として放送法や報道倫理の観点から実態調査を行う考えがあるか示されたい。

三 前記の報道が、県議会における知事不信任決議案可決の流れに影響を与えた可能性があると考えるが、政府の見解を示されたい。公的根拠に乏しい情報が政治的判断に結び付くことへの懸念について、政府の見解を示されたい。

四 放送事業者(特に、公共放送を担うNHK)に対して、技術的に検証不十分な情報を根拠とする報道の再発防止策として、注意喚起やガイドライン整備を行う必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 地方自治体や議会が実施するアンケート調査において、本人確認・重複排除・外部アクセス制限等の技術的信頼性の確保の義務化及びアンケート調査の手法や手順等を標準化するための制度整備・技術指針の策定をすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。