質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一五六号

血漿分画製剤の安定確保及び売血制度の再検討に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月九日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   血漿分画製剤の安定確保及び売血制度の再検討に関する質問主意書

 我が国における血漿分画製剤(アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤等)は、一部を輸入に依存している。厚生労働省の「令和六年度血液事業報告」等によれば、現在でも「国内で確保が困難な血漿や一部の製剤を海外からの輸入に頼らざるを得ない状況にあり」、輸入された血漿が、製剤の原料として広く使用されている。我が国の血漿の主な輸入相手国である米国では有償採血を認めていることから、我が国における血漿分画製剤にはいわゆる売血により得られた血液が含まれていることになる。

 我が国では昭和三十九年に「献血の推進について」が閣議決定されて以降、「献血主義」を基本理念とし、現在「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(昭和三十一年法律第百六十号。以下「血液法」という。)第十六条により、有償による採血及びあっせんが禁止されている。かつての売血制度には、健康被害・輸血後肝炎・黄色い血など多くの問題があったが、現在では感染症のスクリーニング技術(NAT検査等)、個人識別(指紋等)、頻回制限など、科学的・技術的な安全対策を講じることにより、前記の問題は解決され得る状況にある。

 一方、自由主義の立場からは、自らの身体の一部を自己判断に基づいて提供し、報酬を得ることを禁ずる現行制度が、個人の身体的自由・経済的自由を不当に制限しているとの指摘もある。

 このような状況を踏まえ、以下質問する。

一 血漿分画製剤の輸入の現状とリスク認識について

 1 現在、我が国で流通している血漿分画製剤のうち、原料血漿が外国に由来する割合及び国別(特に、有償採血を採用している国(米国)等)の内訳を明示されたい。

 2 厚生労働省は、有償採血によって採取された血液を原料とする製剤が我が国に輸入されていることを認識しているか示されたい。認識している場合、輸入時の製品に「有償採血由来」である旨の表示義務は課されているか示されたい。

 3 輸入血漿由来製剤の安全性について、NAT検査などの措置を講じているとするが、未知の感染症リスクに対する政府の認識及びその対策方針を示されたい。

二 売血制度に対する自由主義的再評価と制度設計の可能性について

 1 血液法第十六条は、有償採血を全面的に禁止している。これは個人の身体に関する自己決定権を不当に制限するものと考えるが、政府の見解を明示されたい。

 2 米国、ドイツ等のように、有償採血を公的に認めた上で、健康管理・頻回制限・登録制度等で安全性を確保している仕組みについて、政府の把握状況を示されたい。把握している場合、当該制度に対する認識を示されたい。

 3 現在、我が国では有償採血が禁止されているため、国内の献血で血漿分画製剤を賄うことができず、輸入に頼っていると思料する。例えば、日本の製薬会社は米国に有償採血のための施設を作り、当該施設から日本へ輸出している状況である。これらの実態について政府の把握状況を示されたい。

 4 献血制度の原則を尊重しつつも、災害時や慢性的な血漿供給不足に備え、一定条件下での有償採血の制度設計を再検討する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 国内自給体制の限界と将来ビジョンについて

 1 血漿分画製剤の国内自給率向上について、政府が掲げる数値目標及び達成年次を明示されたい。

 2 日本赤十字社を中心とした献血体制において、今後、希少製剤・血漿分画製剤の供給を拡充していくことは現実的に達成可能か、政府の見解を示されたい。可能との見解である場合、その根拠を示されたい。

 3 前記三の2について、供給可能量の上限に関して政府の見解を示されたい。

 4 血液法第三条第三項において「血液製剤は、献血により得られる血液を原料とする貴重なものであること、及びその原料である血液の特性にかんがみ、適正に使用されなければならない」との理念を掲げつつも、実際には輸入製剤に依存している現状について、政府の評価を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。