第217回国会(常会)
質問第一五○号 ねんきん定期便への事業主負担額記載の方針及び意思決定プロセスに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月五日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 ねんきん定期便への事業主負担額記載の方針及び意思決定プロセスに関する質問主意書 厚生年金保険料は被保険者と事業主が折半で負担しており、その負担構造は制度の根幹をなしている。しかし、これまで被保険者に送付されてきた「ねんきん定期便」には、被保険者本人の負担額しか明記されておらず、事業主が拠出する被保険者本人と同額の負担額については一切記載されてこなかった。 日本経済新聞は令和七年三月十六日、厚生労働省が令和七年度から「ねんきん定期便」に事業主負担額を明記する方針を固めたと報道した。これは制度の透明性を高め、被保険者が厚生年金保険の実態を正しく理解する上で評価されるべきである。 厚生年金保険料など事業主負担である法定福利費は、事業者にとって「見えにくい人件費」であり、間接的には労働者が得られたはずの所得(賃金原資)であるとも言える。その負担構造を労働者へ「見せない」設計は、制度の持続可能性に対する世代間・階層間の公平な議論を阻害するものであり、仮に「見せない」制度設計が意図的であったとすれば極めて不適切である。また、記載内容の意思決定プロセスがブラックボックス化している点も、政策に対する説明責任の観点から問題である。 このような問題意識を踏まえ、私が参議院総務委員会(令和七年三月二十五日)において、ねんきん定期便について質疑したところ、政府は「来月四月から発送するねんきん定期便におきましては、厚生年金保険料は被保険者と事業主が折半して負担することとされており、事業主も同額を負担する、している旨の説明を追記することとしております。」と答弁した(以下「政府答弁」という。)。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 ねんきん定期便への事業主負担額の記載について 1 政府答弁について、事業主が保険料を負担していることを明記することが制度の理解・信頼向上に資すると政府は判断したのか。その意図と狙いを明確に示されたい。 2 ねんきん定期便への追記事項について、事業主負担分の具体的な金額を明記しているか示されたい。明記していない場合、その理由を示されたい。 3 令和七年三月までの「ねんきん定期便」において、事業主が保険料を負担していることを明記していなかった理由について、費用、システム対応及び国民への影響の観点からどのような判断が下されていたか示されたい。 4 ねんきん定期便には被保険者負担額・事業主負担額を併記した上で、合計負担額を記載すべきと政府は考えるか示されたい。また、これを所得換算して視覚的に示すなどの工夫について検討しているか示されたい。 5 年金制度の財源構造が国民にとって分かりにくいことにより、国民の年金不信を生んでいるとの指摘について、政府の認識を示されたい。また、改善の必要性について政府の見解を示されたい。 二 ねんきん定期便の記載項目に係る意思決定プロセスについて 1 ねんきん定期便の記載項目はどのような手続を経て決定されているか。厚生労働省内の意思決定プロセス、日本年金機構の関与の有無及び関与がある場合の内容を示されたい。また、有識者の意見聴取の有無及び意見聴取がある場合の内容を示されたい。 2 今般の「事業主負担分記載」の方針について、正式な決定主体と、それに至る検討経緯(会議体、議事録、説明資料等)を示されたい。 3 ねんきん定期便の記載項目に関して、SNS上の指摘も含め外部からの要望や批判を受けたことはあるか示されたい。要望等があった場合、当該要望への対応について、具体例を挙げて全て示されたい。 4 今後の制度設計において、ねんきん定期便やマイナポータルを通じて、国民が負担と給付の構造を時系列で分かりやすく把握できるようなインターフェースの整備を行う考えがあるか示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |