質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一四一号

世界平和統一家庭連合に対する解散命令請求の解釈変更プロセス及び議事録公開に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月三日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   世界平和統一家庭連合に対する解散命令請求の解釈変更プロセス及び議事録公開に関する質問主意書

 世界平和統一家庭連合(以下「家庭連合」という。)に対する解散命令請求(令和五年十月十三日、文部科学省提出)について政府は、宗教法人法第八十一条の解散要件に関する解釈を令和四年十月十八日までは「刑事事件のみ」としていたが、同月十九日には「民法上の不法行為も含む」へと変更した。私が提出した「令和四年十月十八日から十九日にかけて宗教法人法の解釈を変更した閣議決定の有無とその内容に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問第九号。以下「質問主意書」という。)に対する答弁書(内閣参質二一三第九号。以下「答弁書」という。)において、政府は「「閣議を開」いて決定した事実はない」、「検討過程における詳細についてお答えすることは差し控えたい」と答弁している。この曖昧さは、解釈変更の不透明性を解消せず、行政手続法第五条、日本国憲法第二十一条(知る権利)、第三十二条(裁判を受ける権利)、第八十二条(公開裁判)、市民的、政治的権利に関する国際規約(ICCPR)第十八条第三項違反の疑いを深める。

 小西洋之参議院議員は令和五年八月二十二日のトークイベントで、「前日(十八日)から首相官邸に当たって、解釈を撤回するように、撤回するときの理由まで授けた」、「改めて岸田政府全体で議論したって言ったらいい。そこの部分は追及しないからって言ったら、岸田総理はそのとおり言った。ただ、これ嘘なんですよ」との旨発言した(以下「小西議員発言」という)。小西議員発言は、解釈の変更が非公式な指示と虚偽説明に基づくことを示唆している。

 国際弁護士であるパトリシア・デュバル氏は、変更の恣意性と国際法違反を指摘している。解散命令請求の非訟手続は日本国憲法及び国際法に違反し、非訟事件手続法第二十一条第二項(非訟参加)による無効主張が可能であると思料する。

 政府は、会議詳細、小西議員発言の真偽、憲法・国際法違反、議事録公開について明確に回答するべきと考え、国民の知る権利と信教の自由の保護のため、誠実な対応を求めるべく、以下質問する。

一 解釈変更の会議詳細について、政府は答弁書において「「閣議を開」いて決定した事実はない」と答弁している。閣議を経なかった場合、解釈変更を決定した会議の参加者(氏名、役職、所属省庁)、開催日時、場所を全て示されたい。また、会議が存在しない場合、誰が当該解釈変更を決定したのか(例:岸田元首相と磯﨑仁彦元内閣官房副長官との打合せ、令和四年十月十九日早朝)、具体的に示されたい。

二 解釈変更を決定した会議の議事録、関連する公文書(メモ、メール、内部報告書等)の存在の有無を示されたい。存在する場合、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第五条に基づく開示の可否と理由を説明されたい。存在しない場合、議事録を作成しなかった理由及び行政手続法第五条、内閣府情報公開ガイドラインとの整合性について、政府の見解を示されたい。

三 小西議員が提出した「文化庁が宗教法人法第八十一条の解散命令の請求を裁判所に行わないことが違法であることに関する質問主意書」(第二百十回国会質問第一一号)に対し、政府は令和四年十月十四日、東京高裁決定(平成七年二月十九日)の解釈を踏まえ、旧統一教会に対する解散命令の請求を行ってこなかった旨の答弁書(内閣参質二一〇第一一号)を閣議決定した。当該閣議決定の解釈変更が閣議決定を経なかった理由を説明されたい。非公式な会議で決定された場合、内閣法第四条、行政手続法第五条との整合性をどのように担保したか示されたい。

四 政府は令和四年十月十九日の参議院予算委員会で、解釈変更は、関係省庁が集まり議論した結果と説明したが、答弁書では「検討過程における詳細についてお答えすることは差し控えたい」として、議論の存在を裏付けなかった。この矛盾をどのように説明するか。議論の詳細(議題、発言者、結論)、文書記録と併せて、示されたい。

五 質問主意書で小西議員発言の真偽を尋ねたが、答弁書では「政府として承知していない」、「内容が明らかではない」と答弁している。発言は一般公開されている動画(YouTube)で確認可能であるが、政府として真偽を検証したか示されたい。検証した場合、検証結果、プロセス、関連文書を示されたい。検証していない場合、検証しない理由及び日本国憲法第二十一条との整合性を説明されたい。

六 「首相動静」(朝日新聞)及び「首相官邸」(日本経済新聞)には、令和四年十月十九日に岸田元首相と小西議員が参議院予算委員会直前に会談したことが示されている。この会談の目的、議題、発言内容、参加者(氏名、役職)、議事録を示されたい。記録が存在しない場合、作成を怠った理由及び公文書等の管理に関する法律第四条との整合性を説明されたい。

七 小西議員発言が示唆する「非公式な指示」と「虚偽説明」が事実である場合、解釈変更が行政手続法第五条違反、日本国憲法第十四条(法の下の平等)に違反する可能性についてどのように評価するか、政府の見解を示されたい。

八 小西議員発言に基づき、政治的な動機(令和四年安倍晋三元首相暗殺事件後の世論圧力、全国霊感商法対策弁護士連絡会の影響)により解釈変更が行われた可能性について、政府は調査する予定はあるか。調査予定の有無、計画、関連文書を示されたい。

九 解散命令請求の非訟手続(宗教法人法第八十一条)は、非公開審理(非訟事件手続法第二十一条)と審尋の限定により、日本国憲法第三十二条、第八十二条に違反する疑いがある。この違憲性をどのように評価するか、政府の見解を示されたい。

十 非訟手続の憲法違反を理由に、家庭連合が非訟事件手続法第二十一条第二項を通じて手続無効を主張する権利を政府は認めるか示されたい。認めない場合、その理由及び日本国憲法第三十二条との整合性を説明されたい。

十一 デュバル氏は、解釈変更について以下の旨指摘している。

 ○解釈変更の曖昧な根拠と恣意性がICCPR第十八条第三項に違反。信教の自由の制限は明確で必要最小限でなければならない。

 ○百九十四カ国で活動する家庭連合を日本のみ解散対象とする異質性は国際的信頼を損なう。

 1 政府はこれらの指摘に対し、調査及び是正措置を講じるか、調査計画、関連文書を示されたい。

 2 解釈変更及び非訟手続が日本国憲法第三十二条、第八十二条、ICCPR第十八条第三項、第十四条に違反する場合、解散命令請求の正当性をいかに担保するか。政府の見解及び検証プロセスを説明されたい。

十二 行政の透明性と議事録公開について

 1 令和四年十月十四日の閣議決定(内閣参質二一〇第一一号)の議事録及び関連文書の有無を示されたい。存在する場合、情報公開法第五条に基づく開示の可否と理由を説明されたい。

 2 前記十二の1について、存在しない場合、議事録を作成しなかった理由及び公文書管理法第四条との整合性を説明されたい。

 3 令和四年十月十九日の解釈変更が閣議決定を経なかった理由及び閣議決定を覆した法的根拠を説明されたい。

 4 政府は解釈変更の不透明性を解消するため、令和四年十月十四日の閣議決定及び同年十月十九日の解釈変更の会議の議事録を公開する予定はあるか示されたい。公開しない場合、日本国憲法第二十一条に抵触すると考えるが、政府の見解を示されたい。

十三 米国国務省報告書(平成十一年~令和四年)は、家庭連合信者の拉致監禁事案に対する日本政府の不作為を批判している。米国国務省報告書における解釈変更の不透明性が宗教的差別を助長するとの指摘を受け、調査及び是正措置等、何らかの対応を講ずる考えはあるか示されたい。考えがある場合、その詳細を示されたい。考えがない場合はその理由を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。