質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一二八号

「同和関係者」及び「アイヌ」を適用対象とする雇用保険法の特例延長措置の憲法適合性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年五月二十三日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   「同和関係者」及び「アイヌ」を適用対象とする雇用保険法の特例延長措置の憲法適合性に関する質問主意書

 雇用保険法第二十二条第一項及び第二項並びに雇用保険法施行規則第三十二条は、「社会的事情により就職が著しく阻害されている者」について、所定給付日数を最大三百六十日まで延長する大幅な上乗せ等の特例(以下「特例延長措置」という。)を設けている。過去の厚生労働省通達等により、いわゆる「同和関係者」及び「アイヌ」を適用対象とする運用が行われてきた。しかし、同和関係者に対する特例延長措置については、厚生労働省職業安定局長通達「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の失効後における対応等について」(職発第〇四〇一〇〇三号、平成十四年四月一日)において、一般対策によって対応することとされたにもかかわらず、「アイヌ」向けの特例延長措置と併せて事実上継続している。

 これらを踏まえ、質問する。

一 特例延長措置の運用に当たり、各労働局が隣保館やアイヌ関係機関を通じて、求職者の「出自」、「居住地域」及び「民族」等の属性情報を取得し利用している事実がある。特例延長措置における「同和関係者」及び「アイヌ」の特定は、日本国憲法第十四条で禁止される「人種」、「社会的身分」及び「門地」による差別的取扱いに該当しないのか、政府の見解を示されたい。

二 特例延長措置は、「同和関係者」及び「アイヌ」に対する就職差別が存在することを前提としている。政府は、社会的事情により就職が著しく阻害されている実態について、意識調査やアンケート等の主観的な調査のほかに、直近ではどのような調査を行ったか示されたい。調査を行った場合、調査結果から判明した、就職差別の実態を示されたい。調査を行っていない場合、就職差別の実態を把握していないにもかかわらず、特例延長措置を維持している理由を説明されたい。

三 特例延長措置の直近五会計年度における実績について、「同和関係者」及び「アイヌ」のそれぞれに係る年度別の適用人数及び上乗せ給付の総額をそれぞれ示されたい。これらのデータを把握していない場合、その理由とともに、特例延長措置の必要性や政策効果の検証方法を具体的に説明されたい。

四 隣保館設置運営要綱に記載される「地域住民」及び「周辺地域住民」等の「地域」について、厚生労働省は大阪府からの情報開示請求に基づく回答文書(平成二十二年十二月十三日付け)において、事実上「同和地区」である旨を明示している。このような特定の地域に限定した施設運用が、憲法第十四条で禁止される「人種」、「社会的身分」及び「門地」による差別的取扱いに該当しないと考える理由を、明確かつ具体的な法的根拠を挙げて示されたい。

五 北海道の生活館は、法律上、隣保館と同一の施設として位置付けられていると思料する。政府は、北海道の生活館がどのような地域や住民を対象として運営されていると認識しているか、具体的に示されたい。また、同施設が事実上、特定の民族や地域住民を対象としている場合、日本国憲法第十四条の「人種」、「社会的身分」及び「門地」による差別的取扱いに該当しないとする法的根拠を明確に示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。