質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一二四号

自治労等の労働組合の会計監査が未実施の場合の影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年五月十九日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   自治労等の労働組合の会計監査が未実施の場合の影響に関する質問主意書

 読売新聞は令和七年五月二日、全日本自治団体労働組合(以下「自治労」という。)鳥取県本部において、会計帳簿に記載されていない金融機関の口座が四口座あり、合計口座残高が約二億円に上る旨報じた。これらの口座は少なくとも十年以上前から開設されており、実際には存在しない肩書の名義が使われているものもある。自治労鳥取県本部には鳥取県や県内市町村の公務員が加入する四十一の組合が加盟し、八千九十四人の組合員が在籍しており、組合員から徴収する組合費を活動費に充てている。

 労働組合法第五条第二項第七号は「すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によつて委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年一回組合員に公表されること。」と規定している。つまり、労働組合の会計報告については、公認会計士又は監査法人である会計監査人による監査を受けることが法律によって義務付けられていることになる。

 しかし、自治労鳥取県本部の簿外の口座に関しては、少なくとも十年以上前から存在していたにもかかわらずこれまで会計帳簿に記載されずにいたこと、数百万円単位の出金記録がある時期があったにもかかわらず会計帳簿に記載されずにいたことなどから、会計報告について会計監査人による監査を受けていない可能性がある。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 犯罪による収益の移転防止に関する法律には、金融機関との取引時確認が規定されている。同法第四条第一項第一号は、当該特定事業者との間で現に特定取引等の任に当たっている自然人の本人特定事項を確認することを規定している。人格のない社団又は財団が事実に基づいた名称を使用しつつ、実際には存在しない肩書を含む口座名で口座の開設を行うことは規定に反するか否か、政府の見解を示されたい。

二 労働組合法第五条第二項第七号の規定を遵守しないことによる罰則規定は設けられていないことから会計監査人による監査を受けていない組合が多いと考えられる。本法の実効性を高めるためにも罰則規定を設けるべきと考えるが政府の見解を示されたい。

三 労働組合法第五条第一項は、労働組合は同条第二項に適合することを立証しなければこの法律に規定する救済を与えられないと規定している。よって、会計報告について、会計監査人による監査を受けていない労働組合については、労働組合法の救済を受けることができない、例えば不当労働行為に対する救済は与えられないという理解に相違ないか政府の見解を示されたい。

四 会計報告について、会計監査人による監査を受けていない労働組合は、労働組合法第十八条に規定する労働協約の地域的拡張適用の申立てに参与する資格がないものと理解するが政府の見解を示されたい。

五 労働組合、消費生活協同組合その他労働者の団体を会員とする協同組織の金融機関として労働金庫及び労働金庫連合会などがあり、これらは厚生労働省が所管している。労働金庫の目的が、労働者団体の行う福利共済活動のために金融の円滑化を図り、それによって労働者の経済的地位の向上に資することにあるのならば、銀行法における金融事業にも合致することから財務省の所管に統一するべきと考えるが政府の見解を示されたい。

六 自治労を始めとする労働組合の会計監査に関する実態把握と法令遵守のための網羅的な検査と指導を実施するべきと思料するが政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延長した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。