第217回国会(常会)
質問第一一六号 延命治療の実態の把握状況等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年五月七日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 延命治療の実態の把握状況等に関する質問主意書 私が提出した「終末期医療に関するガイドライン及び事前指示書の法的拘束力に関する質問主意書」(第二百十七回国会質問第三○号)に対する答弁(内閣参質二一七第三〇号)は、国民の意思と医療現場の実態との乖離及び医療の質と保険制度の持続可能性に関する問題提起に対して、なお不十分なものであると考える。とりわけ、終末期医療における抗生剤投与や点滴、中心静脈栄養、経鼻栄養、胃ろうの導入に関しては、以下のような問題が存在する。 ○厚生労働省による「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書」(令和五年十二月)において、抗生剤投与や点滴については希望者が比較的多い一方で、中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうの導入を望まないとの回答が多数であったことが示されている。 ○しかし、実際の医療現場では、本人が望んでいないはずの中心静脈栄養、経鼻栄養、胃ろうの導入が相当数行われているとの報告がある。さらに、抗生剤や点滴等の延命措置は、医学的にみてQOL(生活の質)を改善せず、かえって苦痛を長引かせる「低価値医療」に該当する可能性があるとの指摘もある。 ○諸外国では、医学的回復の見込みがない患者に対するこうした延命措置を「不適切な医療」あるいは「虐待」とみなし、保険の適用外とするケースもあり、尊厳ある人生の最期を保障する観点から日本の制度も再考を迫られている。 日本国憲法第十三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」としており、医療の決定においても、医療を受ける患者本人の意思が最も尊重されるべきである。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 欧州や米国では、高齢で食べられなくなった人に人工栄養を行うことが医学的に勧められていないと言われている。政府はこの事実及び理由について把握しているか示されたい。把握している場合、その詳細を示されたい。 二 医療を受ける患者本人が適正に望む医療行為を選択できるよう、抗生剤や点滴等の延命措置とされる医療行為に関して、QOLの改善が見込めない場合には「低価値医療」として、国民にその限界や不利益について周知又は啓発すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 三 中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうについて、直近十年間における年ごとの導入数及び実施数を示されたい。また、そのうち患者本人の意思が確認されなかった数及び割合は把握しているか示されたい。いずれも把握していない場合、これらを推計又はサンプル調査した統計資料があれば、その名称と概要を全て示されたい。 四 前記三について、中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうの導入を望まない国民が多いにもかかわらず、実際には当該医療行為が相当数行われていることは、本人の意思と異なる医療行為が行われている可能性を示唆するものと考えるが、政府におけるこれらの実態の把握状況及び見解を示されたい。また、実態を把握していない場合、把握すべきと考えるが政府の見解を示されたい。 五 本人の意思に反する医療行為の防止を目的とした制度がある場合、詳細を示されたい。制度がない場合、制度化する必要があると考えるが政府の見解を示されたい。また、本人の意思に反する医療行為の防止について、今後の政府の対応方針を示されたい。 六 尊厳ある最期を保障する観点から、中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうといった医療行為に対して、公的保険の適用範囲外とする等、見直しを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 七 回復の見込みがない患者に対して中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうの導入等の医療行為を行う場合、諸外国ではどのような医療ガイドラインが存在するか、政府が把握しているものを全て示されたい。また、それらの医療行為に対する保険適用の可否や基準について、政府として把握している国際的な事例があれば示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |