第217回国会(常会)
質問第一○五号 雇用保険に未取得状態の労働者における「一週間の所定労働時間」の算定に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年四月二十四日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 雇用保険に未取得状態の労働者における「一週間の所定労働時間」の算定に関する質問主意書 雇用保険制度においては、①一週間の所定労働時間が二十時間以上であり、②三十一日以上の雇用見込みがある場合、雇用される労働者は原則として被保険者となる。しかし、現在、働き方改革により多様な働き方が存在しており、月あるいは年の変形時間労働制の労働者数も増加傾向にある。 雇用保険法第十四条第三項は令和二年八月一日付で改正施行されており、同日以降の離職者について、雇用保険の被保険者期間の算定方法が変更された。改正前は「賃金支払の基礎となる日数が十一日以上ある月を一か月として計算」していたが、改正後は「賃金支払の基礎となる日数が十一日以上ある月、または、賃金の支払の基礎となった労働時間数が八十時間以上ある月を一か月として計算」する扱いとなった。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 「雇用保険に未取得状態の労働者における「一週間の所定労働時間」の算定に当たっての留意事項について」(平成二十八年十二月十九日付け事務連絡、厚生労働省職業安定局雇用保険課長補佐発)(以下「事務連絡」という。)は、現在でも雇用保険の被保険者資格の判断基準として有効であるか示されたい。既に無効となっている場合、いつまで有効であったか示すとともに、現在の判断基準を示されたい。 二 実際の勤務時間の算定に際し、タイムカード、出勤簿及び賃金台帳の帳簿書類に差異が生じている場合、被保険者期間はどのように判断するか示されたい。例えば、労働日ごとに十五分未満の労働時間を切り捨てて賃金台帳に記載している場合、どのように判断するか示されたい。 また、労働基準法第二十四条第一項で定められている賃金支払に関する全額払いの原則及び事務通達「労働基準法関係解釈例規について」(昭和六十三年三月十四日付け通達基発第一五〇号・婦発第四七号)との整合性について、政府の見解を示されたい。 三 事務連絡では、「雇用契約書等に一週間の所定労働時間が明確に定められていない場合」の「平均の所定労働時間の算定」に当たり、「雇入れ日から一年以上経過している場合」は、「確認を行う日から遡って一年までの期間」及び「一年前までの期間から二年前までの期間」について、平均の週の所定労働時間を算定する旨記されている。しかし、雇用保険制度上、特定受給資格者及び特定理由離職者については、被保険者期間が通算して半年間以上の場合や複数社の離職票を合算した場合でも受給資格が得られる制度である。「雇用契約書等に一週間の所定労働時間が明確に定められていない場合」において、特定受給資格者及び特定理由離職者、あるいは複数社の離職票を合算した場合の所定労働時間の算定方法を示されたい。 四 前記三における具体的な計算方法として、確認を行う日から遡った一定期間の日数を七(一週間)で除した数(中略)で当該期間の総労働時間を除した時間を平均の週の所定労働時間とする旨記載されているが、当該計算方法は有効なのか示されたい。既に無効である場合、いつまで有効であったか示すとともに、現在の計算方法を示されたい。 五 事務連絡では、「雇用契約書等に一週間の所定労働時間が明確に定められている場合」について、「年末年始等により特定の週の実際の勤務時間が例外的に短くなるなどの事情がある場合には、当該期間を除外して算定する」(以下「除外規定」という。)とあり、年末年始や夏季休暇、祝祭日を除外して算定するものと解せる。一方、「雇用契約書等に一週間の所定労働時間が明確に定められていない場合」については除外規定がないため、年末年始や夏季休暇、祝祭日を除外せず算定するのか示されたい。特に、実態として祝祭日に出勤しない労働者に係る算定方法と国民の祝日に関する法律第三条第一項との整合性について、政府の見解を示されたい。 また、雇用保険法改正により、「賃金支払の労働時間数が八十時間以上ある月」との要件が加えられたとしても、賃金の締め日が末日の労働者の場合は、うるう年でない二月を除き、雇用保険の適用外となると思料するが、政府の見解を示されたい。 六 雇用保険の被保険者資格の判断においては、雇用契約書等における一週間の所定労働時間の明記の有無を重視しているように思料する。しかし、雇用主が労働基準法第十五条に規定される労働条件明示義務を順守しておらず、労使間に疑義のある場合については、勤務実態及び職業安定法第五条の三第三項に基づき労働条件の変更部分を明示しているか否かを重視して判断すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |