第217回国会(常会)
質問第九四号 固定価格買取制度における出力制御に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年四月九日 野田 国義
参議院議長 関口 昌一 殿 固定価格買取制度における出力制御に関する質問主意書 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下「再エネ特措法」という。)に基づき平成二十四年七月一日に開始した固定価格買取制度(FIT制度)は、一定価格で一定期間電力を買い取ることを保証することにより電気事業者の長期的な収益の安定を図り、再生可能エネルギーへの投資を促進することを目的としている。しかし、平成三十年以降、九州電力管内を皮切りに全国で出力制御が実施されるようになり、電気事業者は予定していた売電収入を得られず、事業計画の根幹が揺らぎかねない状況に直面している。 平成二十七年一月二十六日改正前の再エネ特措法施行規則(平成二十四年経済産業省令第四十六号。以下「施行規則」という。)第六条第一項第七号では、「年間三十日を超えて出力の抑制を行わなければ経済産業大臣が指定する種類の再生可能エネルギー発電設備により発電された電気を追加的に受け入れることができなくなることが見込まれる電気事業者として経済産業大臣が指定する電気事業者」を指定電気事業者としていた。前記出力制御は、国が電気事業者を指定電気事業者に指定したことで実施されていた。電気事業者は無制限・無補償の出力制御に同意した上で接続契約しているという前提があるが、当時の制度設計に問題があったという指摘もある。 平成三十年以降、出力制御が拡大した主な要因は、平成二十四年度から平成二十五年度にかけて設備認定を受けた大規模太陽光発電所(メガソーラー)が相次いで運転を開始したことにあるが、今後もメガソーラー等の運転開始が予定されており、出力制御の更なる拡大が懸念される。特に、事業規模が小さい電気事業者や融資を受けている電気事業者にとって、収益の悪化は事業の継続そのものを脅かす要因となる。電気事業者の資金繰りの悪化は、地域経済にも悪影響を与えかねない。 これらを踏まえ、以下質問する。 一 出力制御の頻発により電気事業者の収益が悪化し、事業の継続に深刻な影響が出ている現状について、政府の認識を示されたい。 二 平成二十八年経済産業省令第八十四号による改正前の施行規則第八条第一項第二号には、「当該認定の申請に係る再生可能エネルギー発電設備を設置する場所及び当該設備の仕様が決定していること。」と定められている。このうち、「場所(中略)が決定している」について、実務上の運用における具体的な基準を示されたい。また、場所が決定していない場合、認定を受けられないと解すべきか政府の見解を示されたい。 三 発電所建設予定の場所が農地法や森林法等の許認可を必要とする場合、これらの許認可申請を行っていない段階であっても「場所(中略)が決定している」と判断され得るのか、政府の見解を示されたい。 四 資源エネルギー庁は平成二十四年十二月十日付で、固定価格買取制度における設備認定に関し、五百キロワット以上の太陽光発電設備が申請時点で設置場所の所有権、賃貸借契約又は地上権の設定を受けていない場合、「権利者の証明書」を必須書類とする運用変更を行った。その運用変更に至った経緯及び目的並びにその目的の達成状況について明らかにされたい。 五 国が平成二十六年十二月二十二日付で九州電力を指定電気事業者に指定した際、同年十一月末時点の接続可能量が八百十七万キロワットであったのに対し、国の認定量が千八百八十八万キロワットに達していたことが資料から確認できる。国が接続可能量の二倍以上もの認定を与える運用を行ったのは制度設計に問題があったと考えるが、政府の見解を示されたい。 六 前記五の電気事業者の接続可能量を考慮しない過剰な認定が、電気事業者を指定電気事業者に指定する時期を極端に早め、無制限・無補償の出力制御の対象となる電気事業者を増加させたと考えられるが、政府の見解を示されたい。 七 経済産業省は、平成二十四年度及び二十五年度に認定された設備のうち、主に合計発電出力が四百キロワット以上の運転開始前の設備について報告徴収を実施した。その際、申請時に提出した「権利者の証明書」は認められないものとし、場所や設備を確保していることが確認できない場合、聴聞を経て認定を取り消す厳しい処分を行っている。報告徴収の目的は、着工が遅れている設備が改正前の再エネ特措法附則第七条で定める「利潤に特に配慮」された調達価格を維持するにふさわしいかどうかを検証するためと理解してよいか、政府の見解を示されたい。 八 前記七の報告徴収において、場所を確保していない設備であっても例外的に聴聞が猶予された事例はあるか示されたい。ある場合は、その件数及び合計発電出力を認定年度別に示されたい。また、その根拠となる運用変更の通知や猶予する際の基準は公開され、全ての電気事業者に公平に適用されたのか明らかにされたい。 九 平成二十四年度から二十五年度にかけて設備認定を受けたメガソーラーが今後の運転開始を予定しており、電気事業者は出力制御の更なる拡大を危惧している。これらの電気事業者に対する具体的な救済措置や今後の出力制御による損失に対する補償制度の導入について検討している場合は、その状況を明らかにされたい。 右質問する。 |