質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第八四号

営利法人に病院等の開設が認められない法的根拠に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年四月三日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   営利法人に病院等の開設が認められない法的根拠に関する質問主意書

 第百九十三回国会衆議院本会議(平成二十九年三月二十八日)において、塩崎厚生労働大臣(当時)は日本維新の会所属議員からの質問に対し、「病院や特別養護老人ホーム等については、高い公益性を有する事業であり、利用者の保護を図るため、株式会社などの営利法人に対しては参入を認めて」いない旨答弁しており、営利を目的とした病院の開設は禁止されていると解されている。しかし、医療法第七条第七項には「営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、第四項の規定にかかわらず、第一項の許可を与えないことができる。」と定められており、条文上、営利を目的として病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対して許可を与えることができるようにも解釈できる。現に、平成十五年四月二十二日に行われた総合規制改革会議の第六回アクションプラン実行ワーキンググループにおいて、以下の質疑応答(抜粋)があった。

  ○鈴木副主査「医療法七条五項は、営利を目的として病院を開設する場合には許可を与えないことができると書いてある。それは反対解釈をすれば許可をすることができるということであり、現実にそれまで六十二以上の株式会社病院があったわけですから、この医療法人制度を作るときにその通達で禁止したにすぎないと理解しているが、その理解で正しいですか。」

  ○榮畑総務課長(厚生労働省)「私どもはむしろ現行の七条五項というのが、法律上は確かに文言上、言葉はできると書いておりますが、医療法全体の体系からすれば、できるじゃなくて許可を与えないものとすると解釈するのが正しい読み方だろうと思っておりまして今、鈴木さんがおっしゃられました通達というよりは、七条五項そのものが根拠じゃないかと思っております。」

  ○鈴木副主査「それは勝手解釈もいいところではありませんか。」

  (中略)

  ○鈴木副主査「それこそまさに恣意的な解釈であって、だったらそのように法律をなぜ改めないのだという問題であって、今のお話は理解できません。私は事務次官通達が創設的に株式会社を禁止したと考えるのが法律的には常識であって、それを後から付けた議論で、今、榮畑さんは無理な解釈をおっしゃっておるけれども、それは世の中で通用する議論ではないと言わざるを得ないと思います。」

 また、その後、平成十五年五月十六日に厚生労働省から総合規制改革会議に提出された回答(以下「平成十五年厚労省回答」という。)にも、当該指摘に対する明確な回答はなされていない。医療法第七条第七項の解釈及び営利法人に病院等の開設が認められない法的根拠を明らかにすべく、以下質問する。

一 厚生労働省の有権解釈権に基づく解釈として、医療法第七条第七項は、営利法人を禁止しているのか示されたい。禁止していないのであれば、解釈の詳細を示されたい。

二 前記一について、営利法人を禁止しているのであれば、禁止規定であるにもかかわらず、当該条文が「許可を与えないことができる。」という記載である理由を示されたい。

三 前記一及び二に関連して、医療法第七条第七項において、許可を与えることができる場合とはどのような場合を想定しているか示されたい。

四 前記厚生労働省総務課長は「医療法全体の体系からすれば、できるじゃなくて許可を与えないものとすると解釈するのが正しい読み方」と回答しているが、現在、医療法における「~(する)ことができる」との規定は全て「~(する)ものとする」と解釈しているのか、政府の見解を示されたい。

五 平成十五年厚労省回答では「医療法第七条第五項の規定振りについて、貴省から「医療法制定当時、既に株式会社立の病院があったため、このようなものとなった」旨のご説明があった。このような規定については、「一種の既存不適格が生じる場合には、新たに開設する○○には許可を与えないことができる」との解釈が法制執務上は通常と考えられるが、なぜ、「株式会社には許可を与えてはならない」との解釈が可能なのか、その根拠を具体的にかつ詳細にご教示頂きたい。」との問いに対し、「医療法第七条第五項については、①営利を目的とする者には許可を与えないという方針を前提として立法がなされていること」(以下「回答①」という。)、「②医療法は、医療法人の剰余金の配当を罰則をもって禁止するなど、医業の非営利性を前提として構築されており、営利目的の開設を認めた場合には、法的整合性を著しく欠く取扱いとなること」(以下「回答②」という。)「等に鑑み、営利を目的とする場合には、都道府県知事は開設許可を与えることはできないと考えている。」と回答している。これらについて、以下質問する。

 1 前記回答は現在の政府の見解と一致するか示されたい。異なる場合は詳細を示されたい。

 2 前記1について、一致する場合、回答①にある「営利を目的とする者には許可を与えないという方針を前提として立法がなされている」ことを立証できる根拠を示されたい。

 3 前記1について、一致する場合、回答②にある「営利目的の開設を認めた場合には、法的整合性を著しく欠く取扱いとなること」について、「法的整合性を著しく欠く取扱いとなる」法令をその理由と併せて全て示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。