質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第八三号

医療DXと保険者機能強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年四月三日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   医療DXと保険者機能強化に関する質問主意書

 近年、デジタル技術を活用した医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が進められており、政府もその実現に向けた取組を加速させている。しかし、現状では情報共有の課題や保険者機能の制約など、解決すべき問題が多く残されている。他方、一般論として各種保険制度における保険者の役割については、主に「リスクの管理と保障の提供」、「保険料の徴収と適切な運用」、「公平性と効率性の確保」、「情報提供と啓発」、「社会的なセーフティネットとしての機能」等が挙げられる。これは医療保険制度においても同様であり、保険者に当然に期待される役割(以下「医療保険の保険者に期待される役割」という。)である。よって、医療保険制度の安定的な持続のためには保険者の機能強化は不可欠である。我が国の医療DXが単なるデジタル化にとどまらず、持続可能な医療制度の構築に資するものとなるためには、医療DXが保険者機能の強化に寄与することも必要不可欠である。これらに係る政府の方針及び課題について明確にすべきと考え、以下質問する。

一 医療保険の保険者に期待される役割について、政府の見解を示されたい。

二 医療DXにおける情報共有の課題について

 医療DXの推進により、患者の診療情報が電子化され、医療機関間の情報共有が進むことが期待されている。しかし、現状、保険者に共有される情報は、特定健康診査(特定健診)や労働安全衛生法に基づく事業者健診等の結果のデータであり、より広範な健康情報の共有は制限されている。このことは、保険者が本来果たすべき機能を十分に発揮できない要因となっていると考えられる。

 さらに、情報共有を目的として地域医療情報連携ネットワークの構築に多額の補助金が投入されたにもかかわらず、ほとんど機能していない現状がある。このような状況は、税金の無駄遣いであると考える。

 1 医療DXにおける情報共有の促進に関する政府の方針及び今後、実施を検討している施策を全て示されたい。

 2 医療DXにおける保険者へ提供される情報について、健診情報に限定せず、より包括的な医療情報を活用できるようにするための制度改革を行う方針はあるか。理由と併せて示されたい。

 3 個人情報保護の観点を踏まえつつ、患者本人の同意の下で保険者が診療情報を適切に活用できる仕組みを構築する考えはあるか。理由と併せて示されたい。

 4 地域医療情報連携ネットワークの構築に投入された補助金の総額を示されたい。また、その費用対効果を政府はどのように評価しているのか示されたい。さらに、今後、地域医療情報連携ネットワークを有効活用するための方策を講ずる予定はあるか。理由と併せて示されたい。

三 我が国の保険者機能の弱さ、問題点及び課題について

 日本の医療保険制度において、保険者は制度を運営し、被保険者の健康管理を支援する役割を担っている。しかし、米国と比較すると、日本の医療保険における保険者は疾病予防や健康増進のための積極的な介入が十分に行えておらず、その機能は限定的であるという指摘がある。さらに、個別の診療内容の分析を通じたいわゆる低価値(価格に見合うだけの健康増進効果がない)・無価値(患者の健康増進に寄与しないというエビデンスがある)な医療の特定や保険給付について、保険者が十分な役割を果たせていないため、抑制効果が低い点が問題視されている。

 1 日本の医療保険の保険者機能が米国と比較して弱いことについて、政府は認識しているか示されたい。そのほか、政府が把握する日本の医療保険の保険者の問題点及び課題点を理由と併せて全て示されたい。

 2 前記三の1について、日本の医療保険の保険者機能が米国と比較して弱い理由について、政府の見解を示されたい。

 3 前記三の1及び2を踏まえて、日本における保険者の役割を強化するため、医療DXの活用による健康管理支援の充実を進めていく考えはあるか示されたい。また、進めていく考えがある場合、どのように進めていくのか示されたい。

 4 医療保険の保険者が診療内容を分析し、低価値・無価値な医療の特定や保険給付の適正化を進めるための施策について具体的に検討しているか。検討している場合はその内容及び状況を全て示されたい。

 5 健康増進・疾病予防・医療費適正化における保険者の役割を明確化し、より積極的に医療データを活用できるような法整備や制度設計の見直しを行う考えはあるか示されたい。

四 保険者機能の強化と医療DXの関係について

 医療保険における保険者は、健康管理や疾病予防の観点から、被保険者に対する適切な指導や介入を行う役割を担っている。しかし、現状では十分な医療情報が得られないため、保険者の健康管理支援機能が十分に発揮されていない。

 1 保険者が医療DXを活用し、被保険者の健康管理支援機能を強化するための具体的な施策はあるか示されたい。ある場合は、全て示されたい。

 2 データの利活用を進めるため、保険者と医療機関・自治体との連携を強化する方策は検討しているか。検討している場合は、全て示されたい。

 3 保険者の機能強化が進まない場合、健康管理支援が不十分であることから、将来的な医療費の増大を招くおそれがあるが、政府はこの点について、どのように問題を認識し、対処を講ずるつもりか示されたい。

 4 保険者が診療情報を活用し、低価値・無価値な医療を抑制するためのガイドラインやデータ分析の仕組みを構築する考えはあるか示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。