第217回国会(常会)
質問第八一号 日本政府が中国政府と合意した修学旅行の相互受入れの促進に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年四月三日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 日本政府が中国政府と合意した修学旅行の相互受入れの促進に関する質問主意書 外務省は令和六年十月九日、文部科学省に対して「中国への海外修学旅行等における安全対策(旅行届の提出周知のお願い)(令和六年十月九日領サ第一〇二四六号)」を通知した。通知文は中国蘇州の日本人学校関係者の刺傷被害事案及び中国深センの日本人学校児童死亡事案に触れた上で、旅行届の提出周知を依頼している。 岩屋毅外務大臣及びあべ俊子文部科学大臣は令和六年十二月二十五日、訪問先の中国において、王毅外交部長、孫業礼文化旅遊部長等と第二回日中ハイレベル人的・文化交流対話を実施した。外務省は、同対話において、「双方は、「日中教育交流五か年計画」を着実に実施するとともに、修学旅行の相互受入れを促進し、自治体や高校・大学等におけるスポーツ・文化活動を含めた交流を推進すべく、両国での環境醸成、モデル事例の創出に取り組むことで一致し」、「日中の高校生、大学生を対象とする交流事業等の継続・推進を確認し」た旨発表している。 しかしながら、前記中国蘇州や深センにおける日本人を狙った事件に加え、中国当局による日本人駐在員の拘束も相次いでいる。この状況を踏まえれば、日本人にとって中国への渡航・滞在時の安全が保障されているとは言い難い。 これを受けて、令和七年三月五日の神戸市会予算特別委員会(第三分科会)において、以下の旨質疑応答があった。 ○上畠寛弘議員「市立高校の修学旅行について、市内では現在一校が海外に行っている。安全な地域であれば問題はないが、国が中国との修学旅行の相互受入れを促進している点に懸念がある。過去には日本人児童が殺傷された事件や、日本人駐在員が拘束された事例もあり、安全面でのリスクが指摘される。修学旅行は生徒の自由意思によるものではなく、行き先を選べない状況もあるため、中国への修学旅行は問題がある。」 ○神戸市教育委員会「現在、市立高校で海外修学旅行を実施しているのは台湾への一校のみであり、現時点で中国を行き先とする予定はない。修学旅行は教育目標や特色に基づき、生徒の安全確保を前提に計画されており、実施には九割の保護者の同意を得ることが条件となっている。今後もこの方針を徹底していく。」 前記答弁を受け、上畠議員は、「補助金が出るから、あるいは国費が投入されるからといって、中国への修学旅行が実施されることが決してないように」と改めて念を押している。このように、既に地方自治体においても日中の修学旅行の相互受入れの促進について懸念の声が上がっている。 これらを踏まえて、以下質問する。 一 前記第二回日中ハイレベル人的・文化交流対話における「修学旅行の相互受入れを促進」について、この合意を受けた具体的な事業計画、予算措置の有無及び今後の予定について明らかにされたい。 二 中国当局による日本人駐在員の拘束について、以下質問する。 1 現在、日本政府が把握している中国当局により拘束されている日本人の数を示されたい。 2 現在、日本政府が把握している中国国内法に基づき刑事被告人となっている日本人の数を示されたい。 3 現在、日本政府が把握している中国国内の刑務所で服役している日本人の数を示されたい。 4 前記1~3について、当該日本人が違反したとされる具体的な法令及びその内容について明示されたい。 三 中国では日本人駐在員の拘束事案が相次ぎ、日本人の安全が十分に確保されているとは言い難い状況にある。このような状況下で、政府が修学旅行を含む青少年の中国渡航を奨励することは、安全保障上の重大な懸念を生じさせるものであり、極めて矛盾していると言わざるを得ない。日本政府として、現下の情勢を踏まえた上で、我が国の青少年の中国への修学旅行を促進する政策を見直すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |