質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第八〇号

診療所医師の引退年齢を八十歳と仮定して医師偏在対策を策定することの妥当性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年四月二日

石垣 のりこ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   診療所医師の引退年齢を八十歳と仮定して医師偏在対策を策定することの妥当性に関する質問主意書

 厚生労働省は令和六年十二月二十五日に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を策定し、将来にわたり地域で必要な医療提供体制を確保し、適切な医療サービスを提供するため、実効性のある総合的な医師偏在対策を推進することを表明した。医師の偏在については、地域で中心的に外来医療を担う無床診療所の開設が都市部に偏っているなど、かねてより課題となっており、このような対策を進めること自体は、遅きに失した感は否めないが、必要なことだと考える。

 対策の検討に当たり、令和六年十月十七日に開催された「新たな地域医療構想等に関する検討会」において「市区町村における診療所数と二〇四〇年の見込み」(以下「当該資料」という。)を示している。当該資料では、「診療所医師が八十歳で引退し、承継がなく、当該市区町村に新規開業がないと仮定した場合、令和二十二年においては、診療所がない市区町村数は百七十程度増加する見込み」、「七十五歳で引退すると仮定した場合は二百七十程度増加する見込み」と試算している。

 当該資料の試算は、現在の診療所医師が高齢になっても働き続けることを前提としたものであるため、現実的ではなく、非常に見通しが甘い予測値であると考える。よって、この見込み数を基に対策を進めたとしても、医師少数区域における医師不足は解消できないと考える。

 また、令和六年六月二十一日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」において、令和八年度の医学部定員の上限については令和六年度の医学部定員を超えない範囲で設定するとともに、今後の医師の需給状況を踏まえつつ、令和九年度以降の医学部定員の適正化の検討を速やかに行う旨記載されており、政府は医学部の定数を減らす方針で進めようとしている。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 国公立大学病院、公的病院及び国立病院で働く医師の定年は国家公務員に準じて六十五歳である。定年後五年間の継続雇用制度を設けている病院もあるが、最長でも七十歳にとどまっている。体力や思考力などにおいて個人差はあるが、医師の定年は何歳が適切であると考えているのか政府の見解を明らかにされたい。

二 当該資料では、診療所医師の引退を八十歳と仮定しているが、八十歳まで現役で医業を行っている医師の数及び全体に占める割合を明らかにされたい。

三 個人差はあるとしても、加齢により身体能力や判断力は衰えてくるものである。定年のない個人経営の診療所等で従事する医師について、年齢による制限は必要ないと考えているのか政府の見解を明らかにされたい。

四 実際には、八十歳まで働き続けることのできない医師が多くおり、当該資料の試算よりも診療所数は減少すると考える。つまり、この見込み数を基に医師の偏在対策を行ったとしても、医師少数区域の医師不足は解消しないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 診療所医師は八十歳まで引退しないとの仮定に基づき、医師は偏在しているが日本全体における医師数は充足しているとして、医学部の定数を削減するようなことがあってはならないと考える。医学部の定数を適正化の名の下に削減し始めるのは時期尚早と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。