質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第六八号

フジ・メディア・ホールディングスの外資比率と総務省の対応の適切性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年三月二十四日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   フジ・メディア・ホールディングスの外資比率と総務省の対応の適切性に関する質問主意書

 電波法第五条第四項第三号では、認定放送持株会社の議決権ベースの外資比率(以下「外資比率」という。)が五分の一以上となる場合を放送免許の欠格事由と定めている。外資比率が五分の一以上の場合は、放送法第九十三条による基幹放送事業者の認定を受けることができない。認定放送持株会社フジ・メディア・ホールディングス(以下「フジHD」という。)は二〇二一年四月、二〇一二年九月末から二〇一四年三月末までの約一年半の間、外資比率が五分の一を超え、欠格事由に該当する状態であったことを公表している。

 しかし、この重大な問題は二〇二一年四月まで一切公表されておらず、秘密裏に解消されていた。これに対し、放送業界を所管する武田良太総務大臣(当時)は、二〇二一年四月九日の記者会見において、「認定放送持株会社としての認定について、外資規制違反の状態がその時点で存在しないのであれば、放送法上、認定の取消しを行うことができない」(以下「外資規制違反事案に対する総務大臣の見解」という。)などとして、フジHDの事業認定を取り消さなかった。

 この事案により、総務省が外資規制違反に係る報告を受けた時点で取消事由が解消されていれば、欠格事由という重大な違反があったとしても、取消処分を回避できるという制度の不備が明らかとなった。なお、武田総務大臣(当時)は、東北新社が二〇一七年一月にBSチャンネルの事業認定を受けた際、同社の外資比率は五分の一を超えており、認定に重大な瑕疵があることを理由として同社の認定を取り消した。二〇一七年九月二十五日付の総務省の通知文書(総情放第六七号)(以下「当該通知文書」という。)には「外国人等の議決権の計算方法は、基幹放送事業者等において、放送法一一六条第二項の規定により、外国人等からの株主名簿への記載又は記録(以下「名義書換」という。)の請求を拒むこととした場合、当該名義書換を拒否した株式の数に係る議決権については、分母となる「計算の基礎となる総議決権数」に含めない取扱いとする。」と記載されている。また、「「名義書換拒否した株式の数に係る議決権」について、分母となる「計算の基礎となる総議決権個数」に含める旨の通知(平成一四年八月三〇日総情上第九一号。以下「平成一四年通知」という。)を発出した。」との記載もある。

 そこで、当事務所は、フジHDの有価証券報告書に基づき、当該通知文書別紙に記載された「基幹放送事業者等における放送法第九三条第一項第六号ニ等に規定する議決権の計算に当たっての外国人等の取得した株式の取り扱いについて」に記されている計算方法により、各決算期の外資比率を再計算した。以下は、フジHDの有価証券報告書に記載された議決権個数に関する情報及び当事務所で計算した外資比率の結果である。

  二〇〇九年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百九十八

   自己株式に係る議決権個数:六万千二百二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:十五万千五百九十七

   外国人等の所有議決権数:四十六万六百十九

   外資比率:二十一・四一%

  二〇一〇年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百九十八

   自己株式に係る議決権個数:六万千二百二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:十一万九千二百七十一

   外国人等の所有議決権数:四十六万六百十九

   外資比率:二十一・〇九%

  二〇一一年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百九十八

   自己株式に係る議決権個数:六万千二百二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:二十三万三百四

   外国人等の所有議決権数:四十六万六百十九

   外資比率:二十二・二二%

  二〇一二年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百九十八

   自己株式に係る議決権個数:二万二千三百五十二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:十三万百

   外国人等の所有議決権数:四十六万八千三百八十九

   外資比率:二十一・一八%

  二〇一三年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百九十八

   自己株式に係る議決権個数:二万二千三百五十二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:十六万三千八百九十七

   外国人等の所有議決権数:四十六万八千三百八十九

   外資比率:二十一・五〇%

  二〇一四年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百六十

   自己株式に係る議決権個数:二万二千三百五十二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:二十七万七千八百九十

   外国人等の所有議決権数:四十六万八千三百八十一

   外資比率:二十二・六九%

  二〇一五年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百三十一

   自己株式に係る議決権個数:二万二千三百五十二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:二十四万四千百四十八

   外国人等の所有議決権数:四十六万八千三百七十五

   外資比率:二十二・三三%

  二〇一六年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百二十一

   自己株式に係る議決権個数:二万二千三百五十二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:十七万六千

   外国人等の所有議決権数:四十六万八千三百七十三

   外資比率:二十一・六三%

  二〇一七年三月期

   総議決権個数:二百三十六万四千二百二十八

   自己株式に係る議決権個数:二万二千三百五十二

   株主名簿への名義書換を拒否した株式に係る議決権個数:二十四万三千四百三十二

   外国人等の所有議決権数:四十六万八千三百七十五

   外資比率:二十二・三二%

 以上のとおり、二〇〇九年三月期から二〇一七年三月期までの九決算期において、フジHDの外資比率が、五分の一を上回ることが明らかになった。

 これらを踏まえ、以下質問する。

一 総務省は、当該通知文書をウェブサイト等で公開しているか示されたい。公開していない場合、その理由を示されたい。

二 総務省は、当該通知文書を発出した時点で、二〇〇九年三月期から二〇一七年三月期までの九決算期において、フジHDの外資比率が五分の一を上回っていたことを認識していたか示されたい。認識していた場合、五分の一を超えていたことを公開しなかった理由を示されたい。認識していなかった場合、放送業界を所管する官庁として確認作業を怠った理由を示されたい。

三 フジHDは、二〇〇九年三月期から二〇一七年三月期までの九決算期において、外資比率が五分の一を上回っていたことを本質問主意書提出時点で、投資家に適時開示していない。フジHDの当該対応について、監督官庁としての総務省の見解を示すとともに、投資家保護と情報開示姿勢の観点から財務省あるいは金融庁の見解を示されたい。

四 フジHDが、二〇〇九年三月期から二〇一七年三月期の九回にわたる定時株主総会において、外資比率が五分の一を超えていたことを考慮すると、外資規制違反事案に対する総務大臣の見解が一般的に通用するとは考えられない。議決権の計算方法について過誤があったとしても、フジHDは、二〇〇九年三月期から二〇一七年三月期までの九決算期の間、欠格事由に該当する状態であったことを本質問主意書提出時点で、投資家に全く開示していない。フジHDが投資家に対する説明責任も果たさずに、平然と公共の電波を使用することについて、投資家や国民の理解は得られないと思料する。フジHDが二〇〇九年三月期から二〇一七年三月期までの九決算期の間、欠格事由に該当する状態であったことを投資家に全く開示しないことについて、総務省が問題視していないことに対する政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。