質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第六三号

令和六年財政検証の諸前提が実態と乖離している可能性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年三月十八日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   令和六年財政検証の諸前提が実態と乖離している可能性に関する質問主意書

 令和六年財政検証(将来の公的年金の財政見通し)においては、合計特殊出生率や実質賃金上昇率等の社会・経済状況に関する諸前提が設定されている。しかし、これらの諸前提は、以下に指摘するように過去の実績から乖離しており、実態に即していない可能性がある。これらを踏まえて、以下質問する。

一 合計特殊出生率について

1 直近十年間の推移を示されたい。

2 令和六年財政検証公表時の直近(令和四年)の合計特殊出生率は一・二六であるにもかかわらず、令和六年財政検証の諸前提においては、合計特殊出生率は高位が一・六四、中位が一・三六、低位が一・一三となっている。中位の場合でも直近の実績と比べて高く設定されているが、この根拠を示されたい。

二 実質賃金上昇率について

1 直近十年間の推移を示されたい。

2 令和六年財政検証公表時の直近(令和六年四月)の実質賃金上昇率はマイナスであるにもかかわらず、令和六年財政検証の諸前提において、実質賃金上昇率は高成長実現ケースで二・〇%、一人当たりゼロ成長ケースで〇・一%となっている。かなり高く設定されているが、この根拠を示されたい。

三 過去三十年投影ケースの適正性について

1 過去三十年における、労働力率、全要素生産性(TFP)上昇率、物価上昇率、(実質(対物価))賃金上昇率、実質(対物価)運用利回り、スプレッド(対賃金)運用利回りについて、令和六年財政検証の諸前提と同じ条件下の実績平均数値をそれぞれ示されたい。

2 令和六年財政検証の諸前提において設定された数値と、前記三の1の数値に乖離があれば、その差分を全て示されたい。また、数値の乖離に対する政府の見解を示されたい。

3 前記三の2について、数値が大きく乖離しているのであれば、「過去三十年投影ケース」という名称を見直すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 可処分所得割合の根拠について

1 令和六年財政検証の諸前提では、所得代替率の算定に可処分所得割合として〇・八一三という数値が定められているが、この数値の根拠を示されたい。

2 実態としては個々人の所得に応じて保険料率や税率が異なるが、前記四の1のように一定の可処分所得割合を適用することは適正なのか、政府の見解を示されたい。

3 前記四の1について、保険料率が上昇傾向にあることから、将来推計では可処分所得割合を下げるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 モデル世帯の適正性について

 令和六年財政検証の諸前提におけるモデル世帯は「男性平均給与と専業主婦」の二人以上世帯であるが、現代の労働環境に即していない可能性が極めて高い。

1 直近の政府の調査における単身世帯、片働き世帯及び共働き世帯の数をそれぞれ示されたい。

2 単身世帯及び共働き世帯について、令和六年財政検証の諸前提を踏まえた将来の所得代替率をそれぞれ示されたい。

3 前記五の2のそれぞれの将来の所得代替率について、五十%未満であっても問題ないと考えるのか、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。