質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第五九号

学校における動物の飼育に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年三月十八日

塩村 あやか


       参議院議長 関口 昌一 殿



   学校における動物の飼育に関する質問主意書

 学校においては、動物が不適切な方法で飼育されている場合があり、動物愛護や動物福祉の観点から多くの問題があると指摘されている。学校における動物の飼育について、その在り方を早急に見直すべきとの観点から、以下質問する。

一 「小学校学習指導要領(平成二十九年告示)解説 生活編」には、小学校第一学年及び第二学年において、「動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心をもって働きかけることができ、それらは生命をもっていることや成長していることに気付くとともに、生き物への親しみをもち、大切にしようとする。」ことを指導するとの記載がある。そのため、小学校における動物の飼育が強制されるような仕組みとなっている。

 一方、文部科学省の「小学校における動物の飼育状況について(調査結果)」によると、動物愛護管理法に基づく「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(以下「家庭動物飼養保管基準」という。)の対象となる動物を飼育する学校において、「学校として家庭動物飼養保管基準の対象となる動物を飼育する学校における教育委員会、地域のボランティア、保護者等と連携した休日等の管理体制」を「整えておらず、不適切な状態を招く可能性がある」学校が約一割に上っている。動物愛護団体やマスコミの調査によれば、その割合はより高くなってきており、そもそも、学校が責任を持って動物を飼育する環境にあるのか疑義がある。また、学校の長期休暇中に動物が急病になった際には対応困難な場合があるほか、屋外で飼育する場合においては、運動会・朝礼などで生じる大音量や悪天候など、動物に悪影響が及ぶおそれもある。こうした現状は動物愛護や動物福祉の点からも問題であると指摘されている。動物愛護や動物福祉にかなう環境が担保されなければ、学校において動物を飼育させるべきでないと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 学校における動物の飼育については、「命に責任を持つために動物を飼育しない」という選択肢も教えていく必要があると考える。必ずしも動物を飼育しなくとも、動物の譲渡会や預かりボランティア等への参加を通じて、学習指導要領において指導すべきとされている「生き物への親しみをもち、大切にしようとする」態度を育むことは十分に可能であると考える。前記一で指摘した問題点を克服した形で現行の学習指導要領の目的を達成できると考えるが、これらの考えに対する政府の見解を示されたい。

三 学校における動物の飼育については、長時間勤務が問題となっている教員の負担を軽減する観点からも、その必要性が疑問視されている。仮に、学校において動物を飼育するのであれば、最期まで責任を持って飼育することが求められる。しかし、例えば、動物が病気になった際に必要となる獣医師の診察代などについて、各学校の予算が十分確保されていない実態もあると承知している。そもそも、国が学習指導要領により動物の飼育を義務付けるのであれば、診察代を含む飼育に要する諸経費についても国において負担すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 家庭動物飼養保管基準には、「管理者は、地震、火災等の非常災害に際しても、動物の飼養及び保管が適切に行われるよう配慮すること。」との規定があるが、学校で飼育していた動物が災害時に全滅したとの報告が寄せられている。災害時にどのような事例があったか、文部科学省として調査しているか。調査している場合は、調査結果を具体的に示されたい。調査していない場合は、災害時において、学校における動物の飼育がどの程度適切に行われているか実態を把握する機会となることから、早急に調査を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 文部科学大臣は令和六年十二月二十五日、中央教育審議会に対し、「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」を諮問し、学習指導要領の改訂に向けた議論が開始された。学校における動物の飼育については、前記問題点等も踏まえ、今日の動物愛護や動物福祉の観点に沿ったものとし、飼育を強制しない記載とすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、学習指導要領に係る議論に当たっては、教育課程の専門家のみならず、動物愛護について十分理解のある者を委員に含めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。