質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第五八号

指定宗教法人並びにその信者の信教の自由、法の下の平等、適正手続保障及び財産権の侵害に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年三月十三日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   指定宗教法人並びにその信者の信教の自由、法の下の平等、適正手続保障及び財産権の侵害に関する質問主意書

 「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律」(令和五年法律第八十九号。令和五年十二月三十日施行。以下「特例法」という。)は三年間の時限立法であり、第一条において、日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)の業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例について定めている。特例法第七条に基づき、文部科学省は令和六年三月七日、宗教法人世界平和統一家庭連合(旧統一教会)(以下「家庭連合」という。)を「指定宗教法人」に指定した。

 法テラスは、特定不法行為等(「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」を理由とする所轄庁等による解散命令請求等の原因となった不法行為等及びこれらと同種の行為であって、解散命令請求等の対象宗教法人又はその関係者によるもの)に係る被害者(以下「特定被害者」という。)に対して通常よりもはるかに優遇された手厚い司法援助を与えている。

 しかし、「それらを国民の税金により特別に優遇して保護する合理的な理由はなく、法の下の平等に反する」と指摘するとともに、特例法が定める財産開示制度は、「現行の財産開示制度から見て、著しく乖離した財産開示を認めるものであり、財産権及びプライバシーを侵害するばかりか、その手続の公正性を欠いており、適正手続保障にも反していて、違憲であると言わざるを得ない」と、家庭連合の代理人は同法案の審議中に、衆参両院の法務委員会宛ての意見書において、強く問題点を指摘し、警告している。

 債権者が債務者の財産情報を入手できる法律上の制度は、本来、民事執行法第四章「債務者の財産状況の調査」しかないはずであるが、この特例法では、単に「自分は被害者だ」と虚偽の主張をするだけで、誰でも家庭連合の財産情報を入手できるようになっており、同法は、宗教法人のプライバシー、財産権を侵害するとともに適正手続保障にも反しており、違憲と言わざるを得ない。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 特例法に関して、家庭連合の代理人は令和五年十一月及び十二月に衆参両院の法務委員会宛ての意見書を提出するとともに、令和六年一月に文化庁に対してパブリック・コメントを提出し、特例法における被害者の定義が曖昧である旨表明したと承知している。同意見書では、特例法が定める特定被害者には虚偽架空の被害を訴える者まで含まれる可能性があり、事実上誰でも被害者となれるとして、法の曖昧さを指摘している。また、一般社会では多数の紛争が発生し、訴訟の原告は自ら裁判費用を負担して自己の権利の実現を図っているところ、明らかに立法事実を欠いているにもかかわらず、特例法により特定被害者とされる者だけが特別な取扱いを受け、公的に訴訟支援を受けることができ、同支援に国民の税金が投入されることは、憲法第十四条の法の下の平等に反することは明らかであり、適正手続違反及び信教の自由を侵害する違憲立法である旨指摘している。

 そのような指摘を受けてきたにもかかわらず、特例法は今日まで運用され、特定被害者に対する法テラスの援助が行われてきた。これらに関し、以下質問する。

1 特例法の施行以降、法テラスが援助した特定被害者の数、援助に係る立替費用の額及びそのうち償還等を免除した額を明らかにされたい。

2 前記1に関し、特定被害者に係る認定の手続は、いかなる判断基準に基づきなされたのか。「特例法に基づく指定宗教法人及び特別指定宗教法人の指定に関する運用の基準」(令和六年二月十五日文部科学大臣決定)では、特定被害者は、特定不法行為等に関し、法律上の権利を有する者だけでなく「有し得る者」も含むとされているが、家庭連合によると、家庭連合に対する損害賠償請求(以下「集団交渉」という。)の申立人の中には、家庭連合と全く無関係だった者や特定不法行為等(献金等)から二十年以上経過し、現行法上、請求権を有しない者等が含まれている。特定被害者には、現行法上、請求権が確定していない者まで含むか政府の見解を示されたい。

3 家庭連合によると、全国統一教会被害対策弁護団(以下「集団交渉弁護団」という。)との間でなされている集団交渉の案件百八十件中、①除斥期間・時効に掛かっている案件が四十四件、②信者である親や配偶者が行った献金を信者でない家族が返金請求している案件が二十件、③非信者が二十年以上前の物品購入代金を返金請求している案件が八件、④元二世信者が慰謝料を請求している案件が七件であり、集団交渉の案件全体のうち約四十四%を占めている。①~④に該当する通知人が特定被害者として何名含まれているか、政府は把握しているか。把握している場合は、それぞれの人数を明らかにされたい。

4 集団交渉では、前記3の①~④の案件を始めとした全ての集団交渉案件について、家庭連合との間で法律上の請求権がいまだ争われている。裁判上もその請求が認められていない案件について、法テラスによる司法援助のために政府が国費を支出していることは違憲・違法と考えるが、政府の見解を示されたい。

二 法テラスが援助している弁護士費用に係る立替金の総額を示されたい。また、特定被害者の代理人となっている弁護士のうち、集団交渉を申し入れている集団交渉弁護団所属の弁護士に支払われた金額について、弁護士費用の立替金全体に占める割合を明らかにされたい。

三 集団交渉弁護団の中核を構成する全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下「全国弁連」という。)の弁護士らの多くは、旧社会党系、共産党系の弁護士団体に当初所属していた弁護士であり、一九八七年の全国弁連結成の際、いわゆる「スパイ防止法」の制定阻止など政治的な目的のためにいわゆる「霊感商法」反対キャンペーンを行うと宣言していたとされている。現在、全国弁連の弁護士が、ニュート・ギングリッチ元米下院議長が強く危惧しているように、政治的な目的を背景に活動していない保証はない。

 このような背景から、特例法は、広く一般国民にとって平等なものというよりは、集団交渉弁護団所属の弁護士だけに特別な恩恵と支援を与えるものであり、不平等と考えるが政府の見解を示されたい。また、法の下の平等を定めた憲法に違反するものと考えるが政府の見解を示されたい。

四 全国弁連は、違法な拉致監禁により過去に四千三百名に及ぶ家庭連合信者らを脱会強要してきた脱会専門業者やいわゆる反対牧師らと協力して、深刻な人権侵害に加担してきた弁護士らを中核とする団体と言われている。その所属弁護士の中には、拉致された信者らの監禁場所に姿を現して違法行為をたしなめず、逆に幇助したり、脱会専門業者・反対牧師らと会合を開いて定期的に情報交換をしたりしてきた。さらに、監禁下で脱会を表明した元信者らの脱会の「踏み絵」とされたのが集団交渉訴訟であり、そうした裁判の原告代理人として、多額の報酬を受け取ってきたのが全国弁連の弁護士である。それらの全国弁連の弁護士が代理人となった十五年以上前の民事裁判の敗訴判決を理由として、今回の家庭連合に対する解散命令請求がなされたと承知している。この解散命令請求の理由として文部科学省が挙げる、元信者らが起こした民事裁判のうち、家庭連合の責任を認めた判決三十二件の事案は、平均すると三十二年前であると分析されている。これは到底解散命令請求の理由には当たらないと思料する。

 岸田首相(当時)は令和四年十月十九日の参議院予算委員会において、「行為の組織性や悪質性、継続性などが明らかとなり、宗教法人法の要件に該当すると認める、認められる場合には、民法の不法行為」も宗教法人に対する解散命令請求の理由になり得ると答弁した。ところが、平均して三十二年前の事案に関する民事裁判の敗訴判決を理由として家庭連合の解散命令を請求することは、「継続性」はなく、不当であると家庭連合側は主張していると承知している。

 つまり、民事紛争の一方の当事者の代理人であると同時に、違法な拉致監禁による強制的な脱会活動に関与していた弁護士らを中核とする全国弁連に対して、政府機関から法的・財政的な援助をすることは問題であると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 政府関係機関に求められる中立性に対する疑義について

1 法テラスは、政府全額出資により設立された法務省の所管法人であり、公正中立な運営が求められているところ、令和五年一月に集団交渉弁護団と連携協定を結び、電話相談の大多数は集団交渉弁護団に紹介されることになった。法テラスが集団交渉弁護団と共闘していることは、法テラスの機関誌で明らかにしている。政府の監督下にある機関である法テラスが集団交渉弁護団と連携協定を締結していることは、公平・中立性に反するものと考えるが、政府の見解を示されたい。

2 政府は、前記連携協定の内容を把握しているか。把握している場合は、その内容を明らかにされたい。

3 盛山正仁文部科学大臣(当時)は令和五年十月十二日の記者会見において、全国弁連等からの資料・情報を収集・分析した旨発言している。また、文化庁が、解散命令請求申立事件において元信者らの陳述書の作成のための面談等においては、全国弁連の弁護士らの協力を得て家庭連合の解散のために狂奔していたと思料される。

 令和四年十二月七日の衆議院消費者問題に関する特別委員会には、全国弁連弁護士及び全国弁連と連携していると見られる教授が参考人として出席し、同教授は、家庭連合に対する解散命令請求を視野に入れ、質問権を行使する必要がある旨の提言を政府へ提出したと発言している。

 このように、全国弁連という民事紛争の一方の当事者の代理人らが組織する弁護士団体が、特定宗教団体を解散させるために政府に影響力を行使し、それに即して行政機関が動かされてきたことは、行政に求められる公平・公正の原則に反していると考えるが、政府の見解を示されたい。

六 家庭連合の解散命令請求に対して、トランプ大統領の宗教顧問であるポーラ・ホワイト牧師は令和六年十二月、国際宗教自由連合(ICRF)日本委員会の講演会に提供したビデオメッセージにおいて、米国国務省が発表した信教の自由に関する令和四年及び五年の報告書を基に、安倍晋三元首相銃撃事件以降、家庭連合が差別キャンペーンの犠牲者になっており、刑法に違反していない家庭連合への解散命令請求は、これまでの規範から逸脱している旨述べている。また、同氏は、令和六年四月三十日の国連の勧告によれば、日本政府のガイドライン(「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」について)の内容がエホバの証人の信者に対する暴力や身体的攻撃等の直接的な原因となっている旨述べている。

 さらに、ワシントン・タイムズ・ジャパンは令和七年二月六日、トランプ米大統領に近しいとされるギングリッチ元米下院議長ら著名な政治家・宗教人等が同月四日にワシントンで開催されたIRFサミット(国際宗教自由サミット)二〇二五において、日本政府が統一教会から宗教法人格を剥奪しようと激しく攻撃しているが、これは、一九五〇年代後半から国内で活動している統一教会に対する共産主義者の支援を受けたものだと語った旨報じた。同報道では、ギングリッチ元米下院議長が「率直に言って、共産主義者は、中国との関係をより緊密にし、米国との関係をより遠ざけるような環境を作り出そうとしてきた。政府は統一教会を破壊しようとしている。日本国憲法にのっとれば、できるはずのないことだ。何の罪も見つかっていない。政府には何の根拠もない」とも語ったとされ、日本政府の信仰の自由に係る憲法違反に対する憂慮を表明している。

 また、世界日報DIGITALは令和六年十二月十三日、イタリアの宗教社会学者のマッシモ・イントロヴィニエ氏が論文の中で、「国連がエホバの証人や他の宗教的マイノリテイーに対する日本の姿勢を批判した後、日本政府は宗教または信条の自由に関する国連特別報告者であるナジラ・ガネア氏の日本への公式訪問を阻止しようとしているようだ」と日本政府の対応を問題視している旨報じた。

 これらの国際社会からの声に対して、政府としてどのように考え、対応するのか、見解を示されたい。

七 日本弁護士連合会(日弁連)及び日本弁護士政治連盟(弁政連)は令和七年二月二十五日、「旧統一教会問題等に関する実効的な被害の救済と予防のための勉強会(院内集会)」を共催した。院内集会では、被害実態を踏まえた立法や「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」(令和四年法律第百五号。以下「不当寄附勧誘防止法」という。)及び特例法の改正の必要性について解説されたという。なお、既に述べたように、特例法自体が特定宗教である家庭連合を狙い撃ちした法律であることから、同法は、法の下の平等、適正手続保障及び信教の自由に反する憲法違反の法律である。

 令和四年十一月六日号の「サンデー毎日」の対談において、日本共産党の志位和夫委員長(当時)は、ジャーナリストの田原総一朗氏が「共産党からすれば統一教会との最終戦争だ」と述べると、「長い闘いだった。(中略)今度は決着をつけるまでとことんやりますよ」と宣言している。前記の院内集会に参加した議員や弁護士は、そのような特定政党の影響を受けて、家庭連合の信者に対する信教の自由、人権、法の下の平等、適正手続保障に反するような違憲・違法な法整備をすることが危惧される。

 法テラスは、令和四年十一月十四日から令和七年一月三十一日までの約二年間における「霊感商法等対応ダイヤル」への相談状況の分析結果をHPに掲載している。分析結果によれば、受付相談件数(事実か否かは判断できない)は累計で一万三百三十八件であり、家庭連合を相手方とする事案は約二十%の二千四十四件であった。家庭連合を相手方とする金銭的トラブルは千百件であり、その内訳は、直近の金銭支出時期が相談時から五年以内が百十四件(約十%)、五年超二十年以内が二百五十六件(約二十三%)、二十年超前が四百五十四件(約四十一%)、時期不明が二百七十六件(約二十五%)である。二十年超前及び時期不明の事案が全体の約六十六%を占めていることが分かる。

 さらに、消費者庁は、令和四年九月三十日に家庭連合に関する報告(「旧統一教会に関する消費生活相談の状況について」)を公表するまで、個別団体ごとの被害報告をまとめていなかった。同報告によると、令和二年度は相談件数約九十四万件中、家庭連合に関する相談は三十三件であり、令和三年度は約八十四万件中、二十七件であり、いずれもわずか〇・〇〇三%にすぎない。家庭連合は、平成二十一年のコンプライアンス宣言以降、教会改革を徹底し、「特別不法行為」とされるような信者らの活動並びに活動に対するクレーム及び訴訟等はほとんどなくなっているとして、そもそも立法事実がなかったとしている。

 以上を踏まえて、特例法及び不当寄附勧誘防止法を改正する必要はなく、むしろ廃止とすべきと思料する。それにもかかわらず、全国弁連、日弁連、弁政連の提案に沿って、法整備を進めることは、政教分離原則に反し、違憲・違法な国政運営を更に進めることと考えるが、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から十四日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。