質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第五五号

日本におけるエチオピア人難民の保護の現状に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年三月十二日

福島 みずほ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   日本におけるエチオピア人難民の保護の現状に関する質問主意書

 エチオピアは、ノーベル平和賞を受賞したアビィ・アハメド・アリ首相の下で、この三年の間に内戦状態に陥り、民族浄化とも評される深刻な民族対立が生じている。日本におけるエチオピア人難民の保護の現状について以下質問する。

一 エチオピアの現状について

1 政府は二〇二一年に「エチオピア北部における国内避難民等に対する緊急無償資金協力」を実施する等、同国の人権状況の改善に積極的に取り組んでいると承知している。二〇二一年以降、国連人権理事会は「International Commission of Human Rights Experts on Ethiopia」(以下「国際委員会」という。)を設置し、国連の様々な機関がエチオピアの紛争と残虐行為に関する決議やプレスリリースを発表している。

 国際委員会の活動内容について政府の把握状況を示されたい。また、国連の機関によるエチオピアの紛争と残虐行為に関する決議やプレスリリースについて表題の訳文とともに政府の把握状況を示されたい。

2 政府は国連の場において、エチオピアについてどのような見解を表明しているか示されたい。

二 出入国在留管理におけるエチオピア人難民認定申請者について

 現在、法務省が公表している毎年のエチオピア人の①難民認定申請者数、②難民認定者数は次のとおりである。

平成二十六年 ①二十三人 ②不明

平成二十七年 ①十七人  ②不明

平成二十八年 ①十三人  ②四人

平成二十九年 ①二十二人 ②不明

平成三十年  ①十三人  ②五人

令和元年   ①三十五人 ②二人

令和二年   ①不明   ②〇人

令和三年   ①十人   ②〇人

令和四年   ①十七人  ②二人

令和五年   ①不明   ②六人

 提出された難民認定申請が同一年内に処理されていると仮定すれば、十年を通じたエチオピア人難民認定申請者の認定率は高くても約十三%(十九人/百五十人)である。これは、エチオピアの人権状況の劣悪さから考えて余りにも低いと言わざるを得ない。国際基準に合致する難民認定が実施されているのか検証する必要がある。実際、関係資料によれば、米国の認定率は六十六%である。

1 過去十五年における難民認定申請者数に占める難民認定者数の割合(以下「難民認定率」という。)及び難民認定申請者数及び補完的保護対象者認定申請者数の合計に占める難民認定者数及び補完的保護対象者認定者の合計の割合(以下「庇護率」という。)をそれぞれ明らかにされたい。

2 二〇二四年十一月末現在における、難民認定申請中のエチオピア人の数を示されたい。

3 二〇二四年十一月末現在における、難民不認定処分に係る審査請求を行っているエチオピア人の数を示されたい。

4 二〇二四年十一月末現在における、仮放免されており就労資格や国民健康保険加入資格のないエチオピア人の数を示されたい。また、出入国在留管理庁の収容場に収容されている難民認定申請中又は審査請求中のエチオピア人の数を示されたい。

5 難民等に関する出身国情報について、法務省のウェブサイトに公表されている英国内務省、米国国務省等の出身国情報以外に、本省の難民認定室が保有し、地方出入国在留管理官署(以下「地方入管」という。)の難民調査官が閲覧可能なエチオピアに関する出身国情報はあるか示されたい。

6 過去三年間、エチオピア人難民認定申請者の保護についてUNHCRと協議したり、UNHCRから何らかの文書を得たりしたことはあるか示されたい。ある場合は、難民調査官や難民審査参与員に協議の結果や文書の内容を情報提供し、難民認定の審査に反映させるため、どのような措置を講じているか示されたい。

7 米国、カナダ、英国、ニュージーランド、オートラリア、欧州連合など、他国におけるエチオピア人難民認定申請者の難民認定率ないし庇護率を把握しているか。把握している場合は、把握している国の難民認定率ないし庇護率を示されたい。

8 エチオピアにおける人権状況の急激な悪化に鑑み、ノン・ルフールマン原則に違反する強制送還を予防する防護措置として、北米、欧州諸国でどのような措置が講じられているか政府の把握状況を示されたい。

三 難民認定手続全体について

1 難民認定手続では、処分庁である地方入管が審査庁となる本省難民認定室に事案を進達し判断を仰ぐこととされており、これは処分庁と審査庁の独立を損なうものであると考えるが政府の見解を示されたい。

2 個々の難民不認定処分に係る審査請求において、難民認定室の職員が処分庁である地方入管の代表者として審尋に臨み、審査請求人や難民審査参与員からの質問に処分庁として回答する実務が行われている。これは、難民認定室が処分庁たる地方入管に出身国情報を提供するという補助的、限定的な役割にとどまらず、意思決定権者であることを公的に示す行為であると考える。審尋の場において当該難民認定室職員は、所属も氏名も明らかにしない。処分庁に所属しない難民認定室職員が地方入管職員の代わりに発言するのは違法と考えるが政府の見解を示されたい。

3 難民認定室は審理員である難民審査参与員に出身国情報を提供しているか示されたい。

4 審査庁は独自に出身国情報を収集する体制を有しているか。あるいは、審査庁は、難民認定室に出身国情報の提供を依存しているのか示されたい。

5 出入国在留管理庁は、難民該当性の評価に先立って難民認定申請者の主張の信ぴょう性を評価するための具体的な手順や注意事項を定めた文書を有しているか示されたい。有している場合は、その文書名を明らかにされたい。

  右質問する。