第217回国会(常会)
質問第五一号 ねんきん定期便に記載されている老齢厚生年金額が実際の受給金額より少ない可能性等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年三月三日 柳ヶ瀬 裕文
参議院議長 関口 昌一 殿 ねんきん定期便に記載されている老齢厚生年金額が実際の受給金額より少ない可能性等に関する質問主意書 年に一度送付されるねんきん定期便に記載されている老齢厚生年金額について、当職で再現を試みたところ、その金額が実際より少ない可能性に至った。なお、以下の議論は、特に断らない限り、五十歳未満かつ総報酬制導入後の加入期間のみを有する人に送付されるねんきん定期便に関するものである。この点に関し、以下質問する。 一 ねんきん定期便に記載されている老齢厚生年金額は、厚生年金保険法第四十三条第一項に規定する年金額であり、具体的な計算式としては、((N年度の標準報酬月額及び標準賞与額)×(N年度の再評価率))×給付乗率〇・〇〇五四八一で求められる金額を、全ての加入期間について足し上げた金額(以下「本来水準年金額」という。)で相違ないか。 二 老齢厚生年金額については、平成十二年に、年金額算出に用いる係数を五%低下させることにより年金額を削減する法改正をした際、改正前の年金額を下回らないよう経過措置が講じられた。これにより、本来水準年金額と平成六年基準で計算した従前額(以下「従前額保障年金額」という。)のうち大きい方を老齢厚生年金額としているものと承知している。従前額保障年金額の方が大きい場合であっても、従前額保障年金額をねんきん定期便に記載しない理由を示されたい。 三 本来水準年金額の計算に用いる再評価率及び給付乗率〇・〇〇五四八一と、従前額保障年金額の計算に用いる再評価率、給付乗率〇・〇〇五七六九及び従前額改定率一・〇四一(令和六年度)を比較考量すると、二〇一七年度以降は全て、従前額保障年金額の方が大きい値になると承知している。換言すると、二〇一七年度以降初めて厚生年金に加入した二十代から三十代の現役世代に対しては、ねんきん定期便に本来水準年金額を記載していることで、老齢厚生年金額を実際よりも過少に示していると考えられる。従前額保障年金額が適用される人には、従前額保障年金額をねんきん定期便に記載すべきと考えるが政府の見解を示されたい。 四 ねんきん定期便に記載されている老齢厚生年金額には、経過的加算額は含まれていないということで相違ないか。また、ねんきん定期便に経過的加算額を記載していない理由を示されたい。 五 経過的加算額は、特に、二十歳未満又は六十歳以降に厚生年金に加入した場合に大きく増える(ただし、厚生年金加入期間が四百八十月を超えるときは、四百八十月を限度に計算する)。具体例を挙げれば、高校卒業後十八歳で就職して厚生年金に加入し、十代のうちに十八ヶ月厚生年金に加入した人は、令和六年度基準の定額部分単価千七百一円×十八、すなわち三万六百十八円の経過的加算額が生じると承知している。十代で厚生年金に加入した人の経過的加算額が比較的多いことを踏まえれば、五十歳以降に送付されるねんきん定期便と同様に、老齢厚生年金額に経過的加算額を記載すべきと考えるが政府の見解を示されたい。 六 二〇二三年度に適用された年金額改定では、実質賃金の上昇を受け、新規裁定者はプラス二・二%、既裁定者はプラス一・九%の改定となった。この場合、現役世代の年金額見込額の計算はプラス二・二%で改定されるのが原則であるところ、従前額保障年金額は物価上昇率で改定されるため、従前額保障年金額が適用されている現役世代の年金見込額はプラス一・九%の改定にとどまり、一部で混乱が生じた。国民、とりわけ現役世代における年金額改定への意識を高めるためにも、ねんきん定期便又はねんきんネット等に現在記載されている老齢厚生年金額が本来水準年金額と従前額保障年金額のいずれであるかを記載することを検討すべきと考えるが政府の見解を示されたい。 右質問する。 |