第217回国会(常会)
質問第四八号 石綿健康被害救済法による特別遺族給付金の認定に係る旧国鉄元職員の遺族及びJR元職員の遺族間の権衡に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年二月二十八日 福島 みずほ
参議院議長 関口 昌一 殿 石綿健康被害救済法による特別遺族給付金の認定に係る旧国鉄元職員の遺族及びJR元職員の遺族間の権衡に関する質問主意書 毎日新聞は二〇二三年十二月五日、旧国鉄の検査・整備工場で約三十五年間石綿に接する作業に従事し石綿関連がんである中皮腫で亡くなった元職員に係る遺族補償が求められた事案について、旧国鉄の清算事業を引き継ぐ独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)が不認定と通知していたと報道した。不認定の通知書では、鉄道・運輸機構の認定基準は「厚生労働省の定める基準に準じる」とする一方、CT画像などから「中皮腫と診断できなかった」と不認定の理由を説明している。なお、厚生労働省の定める基準では、労働者が石綿に接した職歴があり、死因が中皮腫と記載された死亡診断書があれば救済認定されるため、民間企業であるJRの元職員の事案であれば救済されるケースに当たるとされている。旧国鉄の元職員かJRの元職員かの違いで遺族に対する補償制度間に権衡を失することは、石綿による健康被害の救済に関する法律(以下「石綿健康被害救済法」という。)における「すき間ない救済」の理念に反する。 石綿健康被害救済法のうち救済給付は、その「医学的判定の考え方」に沿い、法施行前死亡者については、中皮腫であったことが死亡診断書等で確認できるか、診療録の写しから死因が中皮腫と判断できれば認定される。これに対し、認定申請者や未申請死亡者については、臨床経過やエックス線検査・CT検査のほか、病理組織診断によって中皮腫の確定診断がされていることが重要である。他方、特別遺族給付金は、前記救済給付における法施行前死亡者と同様に、死亡診断書等での中皮腫であったことの確認に加えて、石綿ばく露作業に従事したことの確認が必要とされており、救済給付の認定とは異なる基準となっている。 鉄道・運輸機構の特例業務所管組織昭和六十二年三月三十一日以前に係る業務災害補償等取扱基準(以下「取扱基準」という。)第十条によれば、「石綿による疾病の認定基準について(平成二十四年三月二十九日基発〇三二九第二号)」(以下「認定基準」という。)に準じて認定することとされている。なお、認定基準の性格としては、「認定基準の要件を満たしている疾病については原則的に業務上疾病として取り扱われるが、形式的には認定基準の要件を満たしている疾病であつても、当該疾病について、医学的に明らかに他の疾病であると判断し得る場合、業務以外の原因が主たる原因であることが立証し得る場合等においては業務起因性が否定されることとなる」とされる(労働省労働基準局編著「労災保険・業務災害及び通勤災害認定の理論と実際」中巻十四~十六頁)。 以上のことから、認定基準を満たしていれば、医学的に明らかに他の疾病であるなどの反証がない限り、認定しなければならないと考える。すなわち、認定基準の第三の四「特別遺族給付金に係る対象疾病の認定について」に従い、死亡診断書に中皮腫とあり、石綿ばく露作業への従事が確認された場合、原則、特別遺族給付金を給付すべきである。 これらを踏まえ、以下質問する。 一 取扱基準第十三条には「(中略)認定基準により内容を審査し、災害であるか否かの認定を行うものとする。ただし、石綿被害による申請の場合、石綿との因果関係を立証できるかどうか医学的資料等に基づいた専門医による判断を受けて、当該認定を行うものとする」と規定されている。 特別遺族給付金に係る認定に当たり、専門医による判断は、認定基準の第三の四等に拘束されるか示されたい。また、死亡診断書に中皮腫とあり、石綿ばく露作業への従事が確認された場合、反証がない限り認定すべきと考えるが政府の見解を示されたい。 二 鉄道・運輸機構の「専門医による石綿に関する検討会」は、特別遺族給付金の事案について、石綿健康被害救済法のうち救済給付の基準である「医学的判定の考え方」における認定申請者や未申請死亡者の認定要件を用いており、基準を誤用していると思料されるが政府の見解を示されたい。 三 私の事務所からの問合せに対する鉄道・運輸機構の回答(二〇二三年十一月十三日)では、特別遺族給付金の事案において、石綿ばく露があり、死亡診断書に石綿肺、中皮腫、肺がん及びびまん性胸膜肥厚と記載されている者のうち、不認定者は三十八名とのことである。死亡診断書に中皮腫と記載され、石綿ばく露作業への従事が認められる場合は、前記「労災保険業務災害及び通勤災害認定の理論と実際」中巻十四~十六頁に沿って、反証がない限り認定しなければならないと考える。なお、反証とは、病理組織検査結果に基づいて「中皮腫以外の疾病である」と確定診断されるような場合であって、画像所見により「中皮腫ではない」と診断されるような場合ではない。 前記二の「専門医による石綿に関する検討会」が認定要件を誤用していると思料されることから、前記不認定事案を精査し、認定基準の第三の四等に沿って認定し直すべきと考えるが政府の見解を示されたい。 右質問する。 |