第217回国会(常会)
質問第三三号 一円硬貨の維持に関する社会的コストと今後の対応に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年二月十七日 齊藤 健一郎
参議院議長 関口 昌一 殿 一円硬貨の維持に関する社会的コストと今後の対応に関する質問主意書 政府は、日本国内における貨幣流通及び決済手段の効率化を図るため、キャッシュレス化の推進や貨幣の製造・管理コストの見直しを進めていると認識している。近年、一円硬貨の流通量は減少傾向にあるものの、依然として全国の金融機関、商業施設及び自動販売機等において日常的に取り扱われているため、その維持には多大な社会的コストが掛かっており、具体的には、以下のようなコストが考えられる。 1 製造コスト 造幣局は貨幣の製造原価を公表していないものの、一円硬貨一枚当たりの製造コストは約三円と言われている。二〇二二年の一円硬貨の製造枚数は五十七万四千枚であることから、年間約百七十二万二千円のコストが発生すると推定される。 2 金融機関・商業施設の現金管理コスト 一円硬貨の輸送・集計・保管には、金融機関や商業施設でのコスト(人件費、設備費)が発生している。例えば、三菱UFJ銀行では硬貨百一枚以上五百枚までの入金につき五百五十円の大量硬貨取扱手数料が掛かるなど、貨幣の取扱いにより金融機関の負担が増大していると考えられる。また、全国のコンビニ・スーパー・金融機関・商業施設など五十万拠点が一日当たり平均百円分(百枚)の一円硬貨を取り扱うと仮定すると、一日の総取扱量は五千万枚、一年間(三百六十五日)の総取扱量は約百八十二・五億枚となる。この場合、一円硬貨一枚の管理に掛かる人件費を一円と仮定すると、年間約百八十二・五億円の管理コストが発生している。 3 自動販売機等の対応コスト 二〇二三年度の自動販売機及び自動サービス機の普及台数は約四百万台である。自動販売機等が一円硬貨への対応を維持していくためには、各機について設計・メンテナンスが必要である。一台当たりの追加コストが年間千円と仮定すると、年間四十億円のコストが発生する。 4 環境負荷・資源コスト 一円硬貨の製造にはアルミニウムが使用され、資源の消費やCO2排出などの環境負荷、一円硬貨運搬時の燃料消費や物流コストも無視できない。 このように、一円硬貨の維持には多大なコストが掛かっていると推定される。特に、現金管理コストが圧倒的に高く、金融機関や商業施設の負担となっていると考えられる。 諸外国では、既に小額硬貨の廃止が進んでいる。例えば、カナダでは二〇一三年に一セント硬貨が廃止され、現金での売買取引においては、一セント硬貨を利用する必要がないよう金額を切上げ・切捨てすることにより対応している。日本においてもキャッシュレス決済の普及が進んでいることから、一円硬貨を廃止することにより決済の利便性向上及び社会的コストの削減が期待される。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 一円硬貨の維持に掛かる社会的コストについて、政府はどのように認識しているか示されたい。また、現金管理に関する金融機関・商業施設の負担軽減について、どのような施策を講じているか示されたい。 二 一円硬貨の廃止に関する具体的な検討を行っているか示されたい。行っている場合は、検討内容について具体的に示されたい。 三 仮に一円硬貨を廃止する場合、端数処理のための切上げ・切捨てなどの施策について、政府の見解を示されたい。 四 一円硬貨の廃止が消費者や小売業者に及ぼす影響について、政府はどのような調査や試算を行っているか示されたい。 五 小額硬貨の製造を廃止している諸外国の事例(カナダ、オーストラリア等)を参考に、日本においても小額硬貨の廃止が可能か検討しているか示されたい。 右質問する。 |