第217回国会(常会)
質問第二九号 社会保険料の事業主負担に関する政府見解の整合性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年二月十三日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 社会保険料の事業主負担に関する政府見解の整合性に関する質問主意書 厚生労働省は、社会保険料の労使折半における事業主負担分について、「働く人が安心して就労できる基盤を整備することが、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ、事業主の利益にも資するという観点から、事業主に求められているものであり、従業員に転嫁される性質のものとは言えない」と説明している。 しかし、経済学的観点からは、社会保険料の事業主負担が労働者の賃金水準や雇用環境に影響を及ぼす可能性が指摘されており、企業が負担増を理由に賃金を抑制したり、雇用形態を変更したりすることで、社会保険料の事業主負担分が間接的に労働者へ転嫁される可能性があると考えられる。 また、財務省が公表している「国民負担率」には事業主負担分の社会保険料も含まれているが、社会保険料の事業主負担分は「従業員に転嫁される性質のものとは言えない」とする厚生労働省の説明との間に論理的な整合性があるのか疑問が生じる。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 社会保険料の事業主負担の経済的影響について 1 厚生労働省は、社会保険料の事業主負担分は「従業員に転嫁される性質のものとは言えない」としている。しかし、企業が社会保険料の負担を理由に賃金を抑制したり、非正規雇用労働者を多く雇用したりすることで社会保険料の事業主負担分を抑制するなど、間接的に労働者に影響を与えている可能性があることについて、政府はどのように認識しているか示されたい。 2 社会保険料の事業主負担分が賃金・雇用環境に与える影響について、過去に政府として調査や分析を行ったことがあるか示されたい。調査や分析を行ったことがある場合は、その結果を示されたい。 3 社会保険料の事業主負担が、労働者の雇用形態(正規・非正規雇用)に与える影響について政府の見解を示されたい。 二 国民負担率との整合性について 1 財務省が公表する「国民負担率」に事業主負担分の社会保険料が含まれていることは、社会保険料の事業主負担分は「従業員に転嫁される性質のものとは言えない」とする厚生労働省の説明と矛盾していると考えるが政府の見解を示されたい。 2 財務省が「国民負担率」を算出する際の「社会保険料」には事業主負担分も含まれる。一方、厚生労働省は社会保険料の事業主負担分について、「従業員に転嫁される性質のものとは言えない」と説明している。社会保険料の事業主負担について、政府内で統一した説明方針があるのか示されたい。統一した説明方針がある場合は、その方針を策定するに当たり参考にした資料及び根拠を示されたい。 三 社会保険料の事業主負担の位置付けについて 1 厚生労働省は、社会保険料の事業主負担分は「事業主の利益にも資する」と説明しているが、その具体的なエビデンス(調査・研究結果)はあるか示されたい。ある場合は、その内容を明示されたい。 2 社会保険料の事業主負担分が「従業員に転嫁される性質のものとは言えない」とする政府の見解が前提となる場合、社会保険料率の引上げが企業経営や雇用に与える影響について、政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |