第217回国会(常会)
質問第二〇号 財政制度等審議会が毎年度作成する予算の編成等に関する建議に対し統計資料として致命的な問題が指摘されている可能性等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年二月六日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 財政制度等審議会が毎年度作成する予算の編成等に関する建議に対し統計資料として致命的な問題が指摘されている可能性等に関する質問主意書 令和六年十一月二十九日、加藤財務大臣は財政制度等審議会の十倉会長から「令和七年度予算の編成等に関する建議」(以下「当該建議」という。)を受け取った。財務省ホームページにてその子細が公表されている当該建議は、令和七年度の予算編成の指針となる等、国民や政府に大きな影響を及ぼす資料である。 他方、当該建議について、データサイエンティスト等の統計やデータ分析を行う複数の国民から「IMFの一次データを用いて相関関係を分析する際に、適切な統計処理を行わないまま結論を導いています」、「あのデータと結論をベースに国を動かしていると思うと冷汗が出ます」等の意見が見られた。当該建議十二頁の「政府支出の伸びと経済成長の関係について、因果関係は明らかではないが、先進国において、インフレ要因・人口要因を取り除いた実質ベースで見ると、政府支出の伸びと一人当たりGDP成長率やTFP(生産性)上昇率の間に相関関係は見られない。」との記述(以下「当該記述」という。)について、参照として示されている資料I―3―11を確認すると統計資料として致命的と言える問題がある旨、以下の指摘(以下「当該建議に対する指摘」という。)があったことが確認できた。 〇考察 単純な一変数の散布図や単回帰だけでは、相関関係が見えないのか、もともと関係がないのか、あるいは逆の因果で見かけ上相関が薄れているのか、判断が極めて難しいです。十分なデータを用いて厳密に検証する一般的なアプローチとは程遠く、仮設構成概念を検討する初期段階レベルの分析に思えます。 ○問題点 ・他の要因をまったくコントロールしていない(交絡要因・省略変数バイアス) 単回帰のみでは結論は導き出せません。 ・内生性(逆方向の因果など)の問題 政府支出の伸びが成長率を左右するだけでなく、経済成長が見込まれる(あるいは後退が見込まれる)からこそ政府が支出を拡大(あるいは縮小)する、という因果の逆転も考えられます。 原因と結果がハッキリしないまま単回帰で見ると、誤った結論になる可能性があります。 IV推定やGMMを用いて真の因果性に近づく推定を行うべきです。 ・時系列データかクロスセクションデータかの扱い・ラグの考慮不足 政府支出の効果が現れるまでのタイムラグ(遅れ)を全く考慮していないため、短期的には関係が見えなくても長期的に現れる効果を見落としている可能性があります。 ・サンプルサイズの問題・外れ値の影響 サンプル数が少ないため、外れ値の影響を排除する必要がありますが、それが示されていません。 サンプリング方法、その影響についても記載がありません。結果に対する変動要因を示す必要があります。 ・「政府支出の伸び」の中身が不明確 政府支出と一口にいっても「社会保障費」「公共投資」「研究開発」「教育」など性質が異なる支出が混ざっています。平均化する事で更に数値の信頼性・妥当性が下がります。 ・統計的有意性の検証が示されていない p値や信頼区間など優位性を示す値がありません。 標準化された統計解析手法を用いながら示されていない意図を勘ぐってしまいます。 グラフに描かれた単回帰式やR^2値だけでは、「回帰係数が統計的に有意か」「サンプルサイズに対して過大・過少なのか」などが不明です。単に回帰直線を引いただけでは、意味のある因果関係を論じる材料として不十分です。 特にR^2がきわめて低い(右図では〇・〇〇〇〇一と書かれている)場合、「ほぼすべてが誤差で説明される」レベルかもしれず、係数推定自体が不安定になっている可能性があります。 以上の「当該建議に対する指摘」において、統計分析の一般的なアプローチからは程遠い旨指摘されていることから、指摘された資料I―3―11以外の分析も疑義が生じ得る可能性は十分考えられる。 これらを踏まえ、当該建議について、以下質問する。 一 当該記述及び資料I―3―11の作成過程において、ピアソン相関係数は用いられているか。用いられた係数及び当該係数を採用した理由を示されたい。 二 前記一について、「政府支出の伸び」と「一人当たりGDP成長率やTFP(生産性)上昇率」に相関(関係)があるか、統計的な検定を行ったか示されたい。行っていない場合、当該記述において「相関関係は見られない」と判断した理由を示されたい。 三 「当該建議に対する指摘」に対する政府の見解を示されたい。 四 当該建議の一切の作成過程について、毎年度見直しは行われているか。行われている場合、いつどのように見直されているか、その過程を示されたい。 五 当該建議の作成後、政府においてはどこでどのように活用されるか、想定しているものを全て示されたい。 六 財政制度等審議会において毎年度作成される予算の編成等に関する建議を参考にして作成した政府資料はあるか示されたい。ある場合は、参考にした点及び当該資料名を全て示されたい。 七 財政制度等審議会の作成資料を含め、政府において作成又は活用する統計分析がなされた資料については、当該資料公表時に当該資料の統計分析の過程をすべからく公開すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 八 前記七のうち、当該建議十二頁の資料I―3―11と同様に、各国の「実質政府支出の伸び」と「一人当たりGDP成長率やTFP(生産性)上昇率」の間の相関関係に関する分析を参考にした資料はあるか。ある場合は、当該資料名を全て示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |