質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第一五号

フジ・メディア・ホールディングス等の認定放送持株会社への外資規制の実効性等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年一月三十一日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   フジ・メディア・ホールディングス等の認定放送持株会社への外資規制の実効性等に関する質問主意書

 放送分野においては、放送が用いる電波は有限希少なものであり、その利用に当たっては原則として自国民を優先させるべきであること、放送は言論報道機関としての社会的影響力を有することを理由として、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)及び放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)の規定により、基幹放送局等に対し、基幹放送局の免許、基幹放送の業務の認定、特定基地局の開設計画の認定及び認定放送持株会社の認定に関する申請がなされた際の拒否事由として、また、免許・認定の取消事由として、外資規制に係る欠格事由が設けられている。

 我が国には認定放送持株会社が十二社(株式会社フジ・メディア・ホールディングス、株式会社TBSホールディングス、株式会社テレビ東京ホールディングス、日本テレビホールディングス株式会社、株式会社テレビ朝日ホールディングス、中部日本放送株式会社、株式会社RKB毎日ホールディングス、株式会社MBSメディアホールディングス、朝日放送グループホールディングス株式会社、RSKホールディングス株式会社、KBCグループホールディングス株式会社、株式会社BSNメディアホールディングス)あり、二〇二五年四月一日には、読売中京FSホールディングス株式会社が、新たな認定放送持株会社として、事業を開始する予定である。

 電波法第五条第四項第三号では、認定放送持株会社の議決権ベースの外資比率が五分の一以上となる場合を放送免許の欠格事由と定めている。認定放送持株会社の議決権ベースの外資比率が五分の一以上となる場合、放送法第百十六条第一項から第四項、第百二十五条及び第百六十一条に基づき、株主名簿書換えを拒否し議決権を付与しないことができるとしている。また、名簿書換えを伴わない間接出資による上限超過時には、超過分の議決権を株主は有しないこととしている。

 認定放送持株会社であるフジ・メディア・ホールディングスは、二〇一二年九月末から二〇一四年三月末まで議決権ベースの外資比率が「五分の一」を超え、違反状態となっていたが、当該事実は公表されないまま解消された。その後、二〇二一年四月に当該事実を公表したが、総務省が認定取消を行うにはその時点で取消事由が必要であるとの理由により、フジ・メディア・ホールディングスの認定は取り消されていない。この事例により、総務省が外資規制違反に係る報告を受けた時点で取消事由が解消されていれば、過去に違反状態であったとしても、取消処分を回避できるという制度の不備が明らかとなった。

 総務省は、二〇二一年四月六日付けで、全ての認定放送持株会社及び基幹放送事業者に対して、外資規制の遵守状況について確認するよう要請を行い、同年十月一日までに調査を完了した(以下「総務省調査」という)。総務省調査の結果、過去に、電波法及び放送法に定める外資規制に抵触していた事案が、以下のとおり新たに三件認められた。

・石巻コミュニティ放送株式会社(コミュニティ放送事業者)

電波法第五条第四項第二号に規定する外資規制(外国人が特定役員となることの制限)に抵触。

・株式会社アニマックスブロードキャスト・ジャパン、BS松竹東急株式会社(衛星基幹放送事業者)

放送法第九十三条第一項第七号(令和元年の改正前は同項第六号)に規定する外資規制(外国人が特定役員となることの制限)に抵触。

 情報通信分野における外資規制の在り方に関する検討会事務局の「放送に係る外資規制の実効性確保に向けた当面の対応(案)について」(二〇二一年七月)によれば、「基幹放送事業者・認定放送持株会社の認定・免許の申請に当たって提出する申請書・添付書類について、外資比率が規制の範囲内であることを把握・検証可能な様式となっていない」ことが明らかとなったため、総務省は「放送法施行規則及び無線局免許手続規則の一部を改正する省令」(令和三年総務省令第百七号)により対応した。なお、検討会では、放送法施行令(昭和二十五年政令第百六十三号)において、「認定基幹放送事業者・認定放送持株会社の外資比率・役員の国籍を定期的に把握・検証するための総務大臣の権限が定められていない」ことも問題点として整理され、「放送法施行令の一部を改正する政令」(令和三年政令第三百二十七号)により対応された。

 二〇二二年一月十四日、金子恭之総務大臣は閣議後の記者会見で、令和四年度の総務省機構・定員査定の結果として、「機構については、放送事業等に対する外資規制の実効性確保のための体制整備として、情報流通行政局放送政策課外資規制審査官などの設置も認められました。」と発言している。

 これらを踏まえ、以下質問する。

一 総務省に「情報流通行政局放送政策課外資規制審査官など」は既に設置されているか、また、放送事業等に対する外資規制の実効性は確保されたか示されたい。

二 私の事務所から総務省情報流通行政局地上放送課に問い合わせたところ、「放送法においては、法人又は団体における重要事項の意思決定が議決権の行使を通じて行われていることに鑑みて、議決権の割合に着目した規制を行っているところ、名義書換拒否により議決権を行使できない外国人株主に関する情報は、議決権の割合に関する資料ではないため、総務省として報告を求めることが可能なものではございません。また、議決権の割合については、変更があった場合は証拠書類とともに届出等を求めており、それに基づき遵守状況を確認しております。」との回答を得ている。総務省は、名義書換拒否により議決権を行使できない外国人株主に関する情報を得ずに、いかにして認定放送持株会社が提出する情報が正しいと検証しているか示されたい。

 また、株式を上場する認定放送持株会社は、適時開示及び有価証券報告書において、議決権の総個数、外国人株主が保有する議決権個数、外国人株主に対し名義書換拒否を行った場合の名義書換拒否をした議決権個数等を開示している。総務省は、放送事業等に対する外資規制の実効性を確保するため、認定放送持株会社から決算期末時点の株主名簿を取り寄せ、認定放送持株会社からの申告が真正であることを確認しているか示されたい。

三 総務省調査では、三件もの外資規制抵触事案が認められている。総務省は、監督官庁として外資規制抵触事案が多発していた状況を踏まえ、金子総務大臣は二〇二二年一月十四日、放送事業等に対する外資規制の実効性確保のための体制整備に取り組む考えを表明している。総務省は、認定放送持株会社の決算期末時点における外国人株主の名前、国籍及び外国人株主別の所有議決権個数を把握しているか示されたい。

四 総務省は、認定放送持株会社の発行する有価証券報告書に記載されている外国人株主のうち、信託銀行に信託している外国人株主及びカストディアンと契約している外国人株主を具体的に把握しているか示されたい。

五 放送は言論報道機関としての社会的影響力を有するにもかかわらず、監督官庁である総務省が、認定放送持株会社から決算期末時点の株主名簿を取り寄せ、申請内容を確認していないならば、安全保障上の業務懈怠と指摘されても過言ではない。総務省が認定放送持株会社の株主名簿を確認していないならば、国民は、総務省と認定放送持株会社との癒着、なれ合いが原因と考える可能性が高い。総務省は認定放送持株会社から決算期末時点の株主名簿を取り寄せ、外資規制遵守状況を確認するべきと考えるが政府の見解を示されたい。

六 二〇二五年一月十四日、米国の投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」の関連会社である「ライジング・サン・マネジメント」は、フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスに対し、書簡を送った。書簡では、フジ・メディア・ホールディングスの株式の七%余りを所有するとしているが、同社の二〇二三年度有価証券報告書において、「当社として二〇二四年三月三十一日時点における(ダルトン・インベストメンツの)実質所有株式数の確認ができ」ない旨記載されている。このことは、有価証券報告書の記載内容の正確性について疑念を抱かせる。株主が信託銀行やカストディアンに委託しているため、株式の真の所有者が投資家や国民に見えない状態にあることについて政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。