質問主意書

第216回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一六第四八号
  令和七年一月十日
内閣総理大臣臨時代理        
国務大臣 林 芳正


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員大椿ゆうこ君提出医療・介護・福祉におけるディーセント・ワークと行政の指導・監督に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大椿ゆうこ君提出医療・介護・福祉におけるディーセント・ワークと行政の指導・監督に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「過去五年のハラスメント防止策について、政府はどのように評価しているか」については、例えば、厚生労働省が令和五年度に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、「過去三年間に勤務する(していた)職場でパワハラを受けたこと」があるかとの質問に対し、「経験した」と回答した労働者の割合は、令和二年度に実施した同調査と比べて減少しており、また、当該割合は、「現在の勤務先は各種ハラスメントの予防・解決に向け、積極的に取り組んでいる」と感じるかとの質問に対し、「積極的に取り組んでいる」と回答した労働者では相対的に低くなっていること等が示されており、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号。以下「労働施策総合推進法」という。)に基づく御指摘の「職場のハラスメント対策」は意義のあるものと考えている。

 また、「今後どのような見直しを検討し、法制度の充実を図るのか」とのお尋ねについては、令和六年十二月二十六日の労働政策審議会において、「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」の建議が行われ、同建議においては「雇用管理上の措置義務が規定されている四種類のハラスメントに係る規定とは別に、一般に職場におけるハラスメントを行ってはならないことについて、社会における規範意識の醸成に国が取り組む旨の規定を、法律に設ける」、「カスタマーハラスメント対策について、事業主の雇用管理上の措置義務とする」、「就職活動中の学生をはじめとする求職者に対するセクシュアルハラスメントの防止を、・・・事業主の雇用管理上の措置義務とする」等とされており、引き続き、同省において、これらを踏まえ、必要な検討を進めてまいりたい。

二について

 御指摘の「医療・介護・福祉の職場における具体的な事例を集約した、啓発や研修に真に役立ち、教育的に有効なガイドブック等の作成」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省においては、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和二年厚生労働省告示第五号。以下「パワーハラスメント防止指針」という。)において、「個別の事案」の「判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当である」こと、「個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要である」こと等としているところ、これらについて、御指摘の「医療・介護・福祉」分野を含む事業主等に対し、パンフレットを作成し、配布すること等により周知するとともに、同省が運営するウェブサイトにおいて、パワーハラスメント防止指針の内容と併せ、「医療・介護・福祉」分野を含む事業主等における「職場のパワーハラスメント対策」についての「具体的な事例」等についても掲載することで、「ハラスメント」に対する事業主等の理解と関心を深め、啓発等に努めているところである。引き続き、同省におけるこれらの取組を進めながら、労働者が安心して働くことができる職場環境の整備を行うこととしている。

三について

 御指摘の「ハラスメント防止のためには、労働者の権利、とりわけ労働三権に関する事業者の認識を改善する必要があると考える。しかし、労働施策総合推進法第一条では、労働者の権利の保護を目的として規定されていない」及び「労使関係の非対称性」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、労働施策総合推進法第三十条の二第一項において「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされているところ、労働施策総合推進法第三十条の三第一項において「国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題・・・に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない」及び同条第三項において「事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない」とされていること等を踏まえ、二についてでお答えしたとおり、厚生労働省において、「ハラスメント」に対する事業主等の理解と関心を深めるため、啓発等に努めているところであり、労働施策総合推進法が御指摘のように「事業者の認識不足」に「十分に対処できていない」とは考えていない。

四について

 御指摘の「事業者のハラスメント」に関しては、その背景となる要因等の解消に資するよう、職場におけるコミュニケーションの活性化等による職場環境の改善等に向け、事業主や労働者に対し啓発等の働きかけを行うことも重要であることから、「ハラスメント」対策について専門性のある職員を配置している都道府県労働局において対応することとしている。また、御指摘の「不当労働行為」に関しては、御指摘の「労使間の対立」について公正な調整を図る観点から、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)の規定により、使用者を代表する者、労働者を代表する者及び公益を代表する者から構成される労働委員会が第三者機関として対応することとしている。御指摘の「地方公共団体」においては、「医療・介護・福祉の職場」における「利用者へのサービス」の質の向上を図る観点から、事業者に対し「監督・指導の権限を持」っているところ、「医療・介護・福祉の職場」を含め「労使間の対立」については、都道府県労働局や労働委員会において適切に対応していくことが重要であると考えており、必ずしも御指摘のように「地方公共団体」が「事業者のハラスメントや不当労働行為に関しても監督・指導の権限を持つべき」とは考えていない。