第216回国会(臨時会)
内閣参質二一六第三○号 令和六年十二月二十七日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出数々の問題点を会計検査院から指摘されてきたガソリン補助事業等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出数々の問題点を会計検査院から指摘されてきたガソリン補助事業等に関する質問に対する答弁書 一から三までについて お尋ねの「政府の見解を示されたい」の趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘のうち、「歳出予算現額のうち三兆二百二十二億円を令和四年度から五年度に繰り越し」については、会計検査院の令和四年度決算検査報告(以下「四年度検査報告」という。)にあるとおり、「基金設置法人」に「当初予算措置された九十三億円で燃料油価格激変緩和対策事業を開始したものの、数次にわたる基金補助金の交付対象期間の延長等により多額の基金を管理することは想定しておらず、いわゆるマイナス金利政策の影響により金融機関は多額かつ短期の資金を受け入れるとマイナス金利を負担することになるため、造成した基金を預金できる金融機関を確保できなかった」ため、当該繰越しを実施したものである。 御指摘のうち、「同一の燃料油に二重に基金補助金を交付」については、従来の概算払の算定方法では、一部の卸売事業者が国内調達した製品分のうち「二重に基金補助金」が交付されうる分を、御指摘の「燃料油価格激変緩和対策事業」終了後に精算をすることとしていたが、その精算を同事業終了後ではなく、翌月の精算とするように、四年度検査報告にあるとおり、「ガイドラインを改定」した。 御指摘のうち、「事務局である株式会社博報堂が再委託により六十二億円(上限額)で実施していた価格モニタリング業務(中略)の調査結果は(中略)、電話調査及び現地調査がどのように小売価格の抑制に寄与しているのか不明」については、四年度検査報告にあるとおり、「電話調査及び現地調査については、小売価格の把握に加えて、小売事業者に対して心理的に小売価格の抑制を促すという事実上の効果がある」と考えているものの、四年度検査報告を踏まえ、経済産業省において、「価格モニタリング業務」がより効率的で実効的なものとなるよう、過去の調査結果等を踏まえた「電話調査」の頻度の見直しや、「現地調査」における確認事項の具体化等の改善を行った。 御指摘のうち、「ガソリン販売実績量等を基に推計した価格抑制額(一兆二千六百七十一億円)は基金補助金の交付額(一兆二千七百七十三億円)を百一億円下回っており、事業前後の小売価格と卸売価格の価格差を分析したところ分析対象SSの半数以上で事業開始後に価格差が拡大」に関し、「ガソリン販売実績量等を基に推計した価格抑制額(一兆二千六百七十一億円)は基金補助金の交付額(一兆二千七百七十三億円)を百一億円下回って」いる点については、四年度検査報告においては、「基金補助金の交付による価格抑制効果」を測定する手法の一つとして、「基金補助金の交付額と実際の抑制額」の比較をしているものと承知しているが、四年度検査報告にあるとおり、「小売事業者の在庫状況等によって小売価格への反映に時間差が生ずるものであるため、これらを単純に比較することはできない」と考えている。また、「分析対象SSの半数以上で事業開始後に価格差が拡大」している点については、四年度検査報告にあるとおり、「小売価格は、原油コスト、揮発油税等の税金、精製費、備蓄費、販売管理費等で構成されており、そのほとんどが変動する要素」であるため、同事業による補助金を含め「どの要素が小売価格に影響を与えているか明確に示すことは困難」であると考えている。いずれにしても同事業の趣旨を踏まえた価格設定がなされるよう、「価格モニタリング業務」や業界団体を通じた周知徹底等により、引き続き対応しているところである。 御指摘のうち、「資源エネルギー庁が行政事業レビューシート等で設定していた成果目標は、達成すべき目標として適切とはいえない」については、同事業開始当初は、同事業による補助金が小売価格にどこまで反映されるかは不透明であることから、確実に小売価格の低減につなげることを同事業の目標として掲げてきたところであるが、会計検査院の報告や同事業開始後の状況を踏まえ、令和六年度行政事業レビューシートでは、「元売事業者等に支給した補助金が小売価格に反映されるようにする」ことを成果目標とした。 御指摘のうち、「(令和)四年度の歳出予算現額三兆一千七十三億円のうち二兆五千三百四十六億円を五年度に繰越し、五年度の歳出予算現額三兆二千五百二十七億円(補助金)及び二百三十五億円(委託費)のうち五千七百十四億円(補助金)及び二百三十五億円(委託費)を六年度に繰越し」については、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和四年十月二十八日閣議決定)において、令和五年一月から九月まで御指摘の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」に係る支援を実施することとしていたため、令和四年度第二次補正予算において計上した三兆一千七十三億円は、予算計上時にあらかじめ国会の議決を経て、翌年度に繰り越して使用するための承認を得た上で同事業を執行したものである。また、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和五年十一月二日閣議決定)においては、令和六年五月まで同支援を実施することとしていたため、令和五年度補正予算において計上した六千百八十億円(補助金)及び二百三十五億円(委託費)は、予算計上時にあらかじめ国会の議決を経て、翌年度に繰り越して使用するための承認を得た上で同事業を執行したものである。 御指摘のうち、「事務局(株式会社博報堂)の事務費は、委託費率及び再委託費率が五十パーセントを大きく超えている」については、会計検査院の令和五年度決算検査報告(以下「五年度検査報告」という。)における「委託又は再委託の妥当性、適切性等」に関し、資源エネルギー庁において、第三者委員会による審査を経て、理由書だけでなく、その他の提案書等の資料から、妥当であると総合的に判断したものであるが、五年度検査報告を踏まえ、同庁内において、委託費率及び再委託費率が五十パーセントを超える場合の手続の周知徹底を行った。 御指摘のうち、「事務局(株式会社博報堂)は、補助金の前払を受けた小売事業者の倒産リスクに備えて信用保証会社と締結した信用保証契約において、実際の補助金の前払交付額を上回る保証希望額により信用保証料を算定。また、事業実施期間中の倒産リスクが極めて小さい大企業も含めて信用保証料を支払」については、同事業では、補助金の概算払を行った小売事業者等が倒産し、補助金の返還分の回収が困難となった場合、同事業の事務局に大きな負担が発生する可能性があり、そのような事態を回避するために信用保証を付しており、当該小売事業者等の信用に応じた適切な保証料率を設定したものである。なお、令和六年一月以降の同支援の実施に先立ち、信用保証料の計上を必要としない同事業の執行体制とするよう見直しを行った。 御指摘のうち、「前期事務局(株式会社博報堂)と後期事務局(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社)の一か月当たりの事務費についてみると、後期事務局は前期事務局と比べて十八・七パーセントとなっていて、事務局運営期間の差を考慮したとしても、大幅に削減される見込み」については、「前期事務局」における実績を踏まえ、経済産業省等の関係者において、令和六年一月以降の同支援の実施に先立ち業務の効率化を図ったことで、「後期事務局」では同事業をより効率的に行えるようにしたものである。 四について お尋ねの「トリガー条項凍結解除による国税及び地方税の減収額」については、「トリガー条項」の発動が一年間続いたと仮定した場合、国税については、揮発油税及び地方揮発油税の令和六年度予算額に、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第八十八条の八に基づき、それぞれ当分の間として適用される税率による上乗せに係る税率の割合を乗じて試算し、また、地方税については、軽油引取税の令和六年度地方財政計画額に、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)附則第十二条の二の八に基づき当分の間として適用される税率による上乗せに係る税率の割合を乗じて試算しており、それぞれの減収額についてお示しすると、次のとおりである。 揮発油税 一兆九十億円 地方揮発油税 三百三十二億円 軽油引取税 四千八百四十九億円 五について 御指摘の「再開を撤回し」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「燃料油価格激変緩和対策事業」については、エネルギー価格の高騰が国民生活や経済活動に与える影響を緩和するため、あくまで一時的、かつ、緊急避難的な措置として、ガソリン、軽油、灯油、重油など幅広く対象をカバーでき、買い控えやその反動による流通の混乱を防ぎ、さらには、迅速かつ臨機応変に価格抑制を図ることができるといった利点があることを踏まえ、補助事業として実施している。 また、御指摘の「当分の間税率廃止」についての具体的な実施方法等については、引き続き政党間で協議が進められるものと承知している。 |