質問主意書

第216回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一六第二五号
  令和六年十二月二十四日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出スプリンクラー設備設置と損害保険料率等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出スプリンクラー設備設置と損害保険料率等に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 御指摘の「自由化以前からほとんど変わっておらず」及び「欧米の損害保険会社が果たしてきた社会全体のリスクを下げるという役割」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、我が国の損害保険会社は、火災保険や自動車保険など社会的ニーズに応えた保険商品の提供という国民生活の安定及び国民経済の健全な発展に資する機能を果たしていると考えている。

 また、お尋ねの「各損害保険会社」の「差別化」については、民間企業の経営判断に係るものであり、政府としてお答えする立場にないが、損害保険業界においても活発な競争が行われることが望ましいと考えている。

一の3について

 お尋ねの「「経済的損害防止」あるいは「ロスコントロール」という概念」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般的に、損害保険会社等において用いられる概念であると考えており、その普及啓発については、損害保険会社等において検討されるべきと考えている。

二の1について

 損害保険料率算出機構(平成十四年六月三十日以前の組織変更前の損害保険料率算定会を含む。以下「機構」という。)が、その会員である損害保険会社に対して保険料率の算出の基礎とし得るものとして算出し、その利用に供する参考純率(損害保険料率算出団体に関する法律(昭和二十三年法律第百九十三号)第二条第一項第五号に規定する参考純率をいう。以下同じ。)においては、お尋ねの「十~三十パーセントの保険料割引率」は使用していない。

 また、お尋ねの「理由」については、機構及びその会員の正当な利益を害するおそれがあることから、これを明らかにすることは差し控えたい。

二の2について

 お尋ねについては、機構がスプリンクラー設備を設置した物件に対する割引率を設定した当時の経緯の詳細について把握しておらず、お答えすることは困難である。

 なお、お尋ねの「保険料割引率」については、割引の適用対象となる基本保険料率が、火災損害のみを対象としているか、又は火災損害に加え風災や雪災といった自然災害による損害等も対象としているかといった補償範囲の違いや、どのような性能のスプリンクラー設備を対象としているかといった割引の前提条件の違いなどが影響するものと考えられる。

二の3について

 二の2についてでお答えしたとおり、機構がスプリンクラー設備を設置した物件に対する割引率を設定した当時の経緯の詳細について把握しておらず、お尋ねのように「根拠もなく低い値に設定」したかどうかについては承知していないが、いずれにせよ、工場におけるスプリンクラー設備の設置については、消防用設備等の設置及び維持に係る規制の内容や企業の経営判断等の様々な要素が影響を与えるものであることから、お尋ねの「この低い普及率は、保険料割引率を十~三十パーセントと根拠もなく低い値に設定したことに起因」するものと判断することは困難であると考えている。

二の4について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「我が国の損害保険会社は、一九九〇年代後半の保険自由化以前もそれ以降も、保険料割引をするくらいならスプリンクラーを設置する必要はないとの立場を取り続けており、顧客企業に対してスプリンクラーの設置を積極的に推奨してこなかった」という事実は承知していないため、それを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。

三について

 お尋ねの「検証」については、民間企業の経営判断に係るものであり、政府としてお答えする立場にない。

四について

 御指摘の「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」は、金融庁として、令和五年十二月二十六日付けで大手損害保険会社四社に対して保険業法(平成七年法律第百五号)第百三十二条第一項の規定に基づく業務改善命令を発出した事案等において認められた課題について、制度上及び監督上の必要な対応を検討するために設置したものである。御指摘の「本質問主意書で指摘している内容」については、当該事案等において認められた課題ではないものと認識しており、お尋ねのように「有識者会議で議論すべき」とは考えていない。