質問主意書

第216回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一六第一〇号
  令和六年十二月十三日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出解雇要件がある助成金等が解雇の間接的な規制になっている可能性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出解雇要件がある助成金等が解雇の間接的な規制になっている可能性に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 御指摘の「政府が行っている雇用・労働分野の助成金」、それら「以外の事業者向けの国庫補助金」及び「「支給等の要件に、対象となる事業者が労働者を解雇していないこと」等、事業者に労働者の解雇実績がないことを要件としているもの」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではなく、また、調査に膨大な作業を要することから、網羅的かつ正確にお答えすることは困難であるが、法令上「助成金」という名称を用いて国から事業主に対して支給するもの及び法令上「助成金」という名称を用いないものの、法令上国から事業主に対して助成を行うとされているもの(以下「助成金」という。)又は事業主に対して支給する補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二条第一項第一号に掲げる補助金(以下単に「補助金」という。)のうち、支給若しくは加算の要件に、事業主に労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者(以下単に「労働者」という。)の解雇の実績がないことを設けているもの又は支給の返還の要件に、事業主が労働者を解雇したことを設けているものについて、その①名称、②お尋ねの「令和六年度の予算額」(令和六年度の当初予算額に限る。)及び③お尋ねの「要件を入れた目的」を、各府省庁において調査したところにより、現時点で確認できる範囲でお示しすると、①及び②については、例えば、次のとおりである。

①働き方改革推進支援助成金(労働者災害補償保険法施行規則(昭和三十年労働省令第二十二号)第三十九条に規定する働き方改革推進支援助成金であって同条第一号に係るものに限る。) ②五十九億三千七百二十三万六千円

①雇用調整助成金(雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第百二条の三に規定する雇用調整助成金をいう。) ②五十二億六千五百二十一万三千円

①産業連携人材確保等支援コース奨励金(同令第百二条の三の三第二項の産業連携人材確保等支援コース奨励金をいう。) ②九億三千五百三十万七千円

①スキルアップ支援コース奨励金(同条第四項のスキルアップ支援コース奨励金をいう。) ②八十六億六千二百六十四万八千円

①雇入れ支援コース奨励金(同令第百二条の五第七項の雇入れ支援コース奨励金をいう。) ②八十九億三千五百四十九万二千円

①中途採用拡大コース奨励金(同条第十項の中途採用拡大コース奨励金をいう。) ②三億二千六百五十万円

①UIJターンコース奨励金(同条第十一項のUIJターンコース奨励金をいう。) ②三千四百万円

①六十五歳超雇用推進助成金(同令第百四条に規定する六十五歳超雇用推進助成金であって同条第一号ハ及び第二号ハに係るものに限る。) ②十三億六千九百六十万円

①特定就職困難者コース助成金(同令第百十条第二項の特定就職困難者コース助成金をいう。) ②四百九億九千二百七万円

①生活保護受給者等雇用開発コース助成金(同条第七項の生活保護受給者等雇用開発コース助成金をいう。) ②六千九百五十八万円

①就職氷河期世代安定雇用実現コース助成金(同条第九項の就職氷河期世代安定雇用実現コース助成金をいう。) ②二十一億八千六百二十五万円

①発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース助成金(同条第十項の発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース助成金をいう。) ②五億七千八百七十五万千円

①一般トライアルコース助成金(同令第百十条の三第二項の一般トライアルコース助成金をいう。) ②三億六千三百七十八万円

①障害者トライアルコース助成金(同条第三項の障害者トライアルコース助成金をいう。) ②十二億二千九百三十三万六千円

①地域雇用開発コース奨励金(同令第百十二条第二項の地域雇用開発コース奨励金をいう。) ②八億七千五十五万円

①沖縄若年者雇用促進コース奨励金(同条第四項の沖縄若年者雇用促進コース奨励金をいう。) ②三千三百十万六千円

①通年雇用助成金(同令第百十三条に規定する通年雇用助成金であって同条第一項第三号及び第二項第二号並びに第六項に係るものに限る。) ②五百万円

①人材確保等支援助成コース助成金(同令第百十八条第二項の人材確保等支援助成コース助成金であって同項第一号ロからニまで及び第二号ロからニまでに係るものに限る。) ②三十億九百十万円

①正社員化コース助成金(同令第百十八条の二第二項の正社員化コース助成金をいう。) ②七百七十四億百八十九万九千円

①障害者正社員化コース助成金(同条第十一項の障害者正社員化コース助成金をいう。) ②四億九千九百五十三万千円

①人材育成支援コース助成金(同令第百二十五条第二項の人材育成支援コース助成金をいう。) ②五十三億四千五百八十三万四千円

①人への投資促進コース助成金(同令附則第三十四条第二項の人への投資促進コース助成金をいう。) ②三百十五億四千二百八十一万千円

①障害者職場定着支援コース助成金(雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和三年厚生労働省令第八十一号)附則第二条第九項の規定によりなお従前の例とする、同令の施行の日前に同令第一条の規定による改正前の雇用保険法施行規則第百十八条の三第二項第一号イに規定する職場定着支援計画を都道府県労働局長に提出した事業主に対する障害者職場定着支援コース助成金をいう。) ②一億千七百九十三万千円

①建設分野若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース助成金(建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則(昭和五十一年労働省令第二十九号)第七条の二第三項の建設分野若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース助成金をいう。) ②六億四千七百五十五万五千円

①建設分野作業員宿舎等設置助成コース助成金(同条第四項の建設分野作業員宿舎等設置助成コース助成金であって同項第一号ロ及び第二号ロに係るもの(女性労働者に係るものに限る。)に限る。) ②二千二百七十六万千円

①建設労働者認定訓練コース助成金(同条第五項の建設労働者認定訓練コース助成金をいう。) ②五億九千六百十三万六千円

①建設労働者技能実習コース助成金(同条第六項の建設労働者技能実習コース助成金をいう。) ②五十二億五千二百三十万八千円

①障害者作業施設設置等助成金(障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則(昭和五十一年労働省令第三十八号)第十七条の二に規定する障害者作業施設設置等助成金をいう。) ②一億二千五百七十四万円

①障害者福祉施設設置等助成金(同令第十八条の二に規定する障害者福祉施設設置等助成金をいう。) ②六十四万八千円

①障害者介助等助成金(同令第十九条の二に規定する障害者介助等助成金であって同条第一項第二号チ及び第二項に係るものに限る。) ②二百六十六万三千円

①重度障害者等通勤対策助成金(同令第二十一条の二に規定する重度障害者等通勤対策助成金であって同条第一項第一号イ、ニ及びチ並びに第二号イ及びハ並びに第二項に係るものに限る。) ②千八百七十七万千円

①重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金(同令第二十二条の二に規定する重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金をいう。) ②五千万円

①中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要綱」(平成二十三年四月一日付け厚生労働省発基〇四〇一第三十九号厚生労働事務次官通知別紙)の中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金をいう。) ②六億二千四百二万五千円

 また、当該調査では、③については、これらいずれの助成金又は補助金においても、それぞれの支給の目的に沿って事業主がこれらを適正に活用することを担保することであったほか、これらの多くに共通するものとして、事業主による繰り返しの受給を目的とした労働者の不適切な解雇を防止することがあった。

 さらに、御指摘の「解雇に係る要件を入れた段階及び要件を定義した後に労働市場に及ぼす影響を評価」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、これらの助成金又は補助金の支給又は支給の返還について、「要件を入れた目的」に即して行われているかについて調査したところによると、これらのいずれにおいても、当該目的に即して行われているものと考えているとのことであった。

四について

 事業主が労働者の解雇を行うかどうかについては、一から三までについてでお示しした助成金又は補助金を利用するかどうかも含め、個別具体的な事案に応じて判断されるものであり、御指摘のように「事業者による労働者の解雇を阻害する要因の一つになっている可能性が高い」かどうかについて、一概にお答えすることは困難である。

五について

 個別の学会等の見解に関し、政府としてお答えすることは差し控えたい。なお、政府としては、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画二○二四年改訂版」(令和六年六月二十一日閣議決定)において、「労働者が裁判で勝訴し、無効な解雇であると認められた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭を支払い、当該支払によって労働契約が終了する仕組みについて、検討を進める」としているところ、多くの労働者が、賃金によって生計を立てているのみならず、雇用を通じて社会との様々なつながりを形成していること等を踏まえれば、労使を含めて十分に議論が尽くされるべき問題であると考えている。