質問主意書

第216回国会(臨時会)

質問主意書

質問第六四号

治療用装具に係る療養費に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十二月二十四日

塩村 あやか


       参議院議長 関口 昌一 殿



   治療用装具に係る療養費に関する質問主意書

 健康保険法に規定される「治療材料」(第六十三条第一項第二号)及び「療養費」(第八十七条)に関連して、以下の政府通知等がある。

① 療養上必要あるコルセットは療養の給付として支給すべき治療材料の範囲に属す(昭和一七年三月二六日社発第三二二号)

② 踵部骨疽ニ於ケル疾患ノ為医師ニ於テ必要ト認メ歩行補助器ヲ装置セシメタル場合ハ「コルセット」又ハ「関節固定器」ニ於ケルト同様療養費ノ給付トシテ支給スベキ治療材料ノ範囲ニ属シ(昭和一八年七月一六日保険第一四七三号)ハ御見解ノ通(昭和一八年九月一五日保険発第一五四号)

③ 療養上必要あるコルセットは療養の給付として支給すべき治療材料の範囲に属するものとして療養費によって支給する(昭和二四年四月二三日保険発第一六七号)

④ 義手義足は、療養の過程において、その傷病の治療のため必要と認められる場合に療養費として支給する取扱がなされている(昭和二六年五月六日保文発第一四四三号)

⑤ 療養費として支給する額については、(中略)「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」(平成一八年九月二九日厚生労働省告示第五二八号)別表一購入基準中に定められた装具の価格の百分の百六に相当する額を基準として算定する(昭和三六年七月二四日保発第五四号)

⑥ 保険診療において、保険医が治療上必要があると認めて、関節用装具、コルセット、サポーター等の治療用装具を業者に作らせて患者に装着させた場合には、患者が業者に対して支払った装具購入に要した費用について、その費用の限度内で療養費の支給を行う(昭和六〇年一一月一五日厚生省保険局医療課編「療養費の支給基準」二〇版)

一 前記①から⑥の通知等の趣旨を整理した以下の内容について、政府の見解と相違があれば示されたい。

1 ①によれば、「療養上必要あるコルセット」は「療養の給付として支給すべき治療材料の範囲に属」し、また、②によれば、「疾患の為医師に於て必要と認め」た物は、「コルセット」等と同様「治療材料の範囲」に属すということなので、健康保険法第六十三条第一項第二号規定の「治療材料」とは、保険医が被保険者(患者)の療養上必要あると認めるものと考えられるが、③によれば、「療養上必要あるコルセット」は「療養の給付として支給すべき治療材料の範囲に属するものとして療養費によって支給する」とされている。

2 ④によれば、「傷病の治療のため必要と認められる場合に療養費として支給する」とされている「義手義足」とは、身体障害者のための「補装具」であるが、「治療用装具の療養費支給基準について」との名称で発出された⑤によれば、「療養費として支給する額」は、補装具の「額を基準として算定する」とされているので、「傷病の治療のため必要と認められる」補装具については、厚労省告示に定められた補装具の「額」を基準に算定した「療養費」を支給する取扱になっている。

3 ⑥によれば、「保険医が治療上必要があると認めて、関節用装具、コルセット、サポーター等の治療用装具を業者に作らせて患者に装着させた場合」との記述があることから、「治療用装具」とは、「関節用装具、コルセット、サポーター等」であるということであり、当時の補装具に関する「告示」には、「肩関節用装具」、「頸椎用装具・硬性コルセット」等の「関節用装具」、「コルセット」に該当する「装具」が多数確認できるので、「治療用装具の療養費」という場合の「治療用装具」とは、保険医が被保険者(患者)の療養上必要あると認める「治療材料」に該当する「補装具」に類似する物のことである。

二 以下五項目について、政府の見解と相違があれば、項目ごとに具体的に指摘されたい。

1 保険医が被保険者(患者)の療養上必要あると認める(薬剤以外の)物は、健康保険法第六十三条第一項二号規定の「治療材料」に該当する。

2 前記1に該当するものは、本来保険者が「療養の給付として支給すべき」ものである。

3 保険医が被保険者(患者)の療養上必要あると認める「コルセット」、「関節用装具」、「義手義足」等は、「治療材料」に該当する補装具である。

4 補装具は、個別に製作するものであるため保険医(保険医療機関)が支給できないことから、それらについては、厚労省告示に定められた補装具に関する「額を基準として算定する」療養費を支給する取扱になっている。

5 保険医が被保険者(患者)の療養上必要があると認める補装具のように個別に製作する物等の、保険医(保険医療機関)が支給できない「治療材料」のことを「治療用装具」と称している。

三 健康保険法第八十七条第一項では、保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下「療養の給付等」という。)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる旨定めている。「治療用装具」は、「療養上必要あるコルセット」同様の「療養の給付として支給すべき治療材料」に該当する補装具であるが、補装具のように個別に製作する物は、保険者が支給することができない(療養の給付として支給できない)ことから、療養の給付等を「行うことが困難であると認めるとき」に該当するので、「療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる」と考えられるが相違ないか。

四 健康保険法第八十七条第一項に基づき、保険者が「治療用装具」に療養費を支給できるのは、それが本来、保険者が「療養の給付として支給すべき治療材料」に該当するからである。また、保険医が被保険者(患者)の療養上必要あると認めるものが「治療材料」に該当するということは、保険医が被保険者(患者)の療養上必要あると認める治療用装具について、保険者が療養費を支給できない理由はない。また、「治療材料」に該当するにもかかわらず「療養の給付」として支給できていない義務不履行状態を解消するために「療養費を支給できる」と考えられる。以上三点について、政府の見解と相違ないか。

五 現実の保険医療現場において、保険医が被保険者(患者)の療養上必要あると認める治療用装具に関して、その治療用装具の療養費は、「被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合」に該当するため、「保険者がやむを得ないものと認めるとき」にしか支給できないので、保険者がやむを得ないと判断できないので支給しないという事例が散見されるが、この事例は、健康保険法第八十七条第一項に対する誤解釈によるものと思われるが、政府の見解と相違ないか。

  右質問する。