質問主意書

第216回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三三号

ブライアン・マーク・リッグ氏の著作「日本のホロコースト」が、史実に基づかない我が国に関する歴史についての流布となる可能性等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十二月十七日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   ブライアン・マーク・リッグ氏の著作「日本のホロコースト」が、史実に基づかない我が国に関する歴史についての流布となる可能性等に関する質問主意書

 令和六年三月に米国でブライアン・マーク・リッグ氏の著作「Japan's Holocaust: History of Imperial Japan's Mass Murder and Rape During World War II」(以下「日本のホロコースト」という。)が発売された。書籍概要には、一九二七年から一九四五年のアジア・太平洋地域における軍事拡大と無謀な作戦の下で行われた大日本帝国の残虐行為を調査するため、五カ国の十八以上の研究施設で行われた研究を組み合わせたものであり、最新の研究と新たな一次研究を結集したものだと明記されている。著者であるブライアン・マーク・リッグ氏は、元米国海兵隊員であり、イェール大学とケンブリッジ大学で歴史を学び、後にサザンメソジスト大学とアメリカンミリタリー大学で歴史の教員をしており、歴史家を自認している。

 「日本のホロコースト」には多くの真偽不明な記述が見られ、中には我が国の皇室を侮辱する内容も含まれている。著者はアメリカンミリタリー大学で教鞭を執った教員であることから、当該著作における史実に基づかない我が国の歴史の流布への対応をなおざりにすべきではない。我が国と我が国の皇室に関して誤った歴史認識が波及することは新たな歴史の歪曲を生む可能性がある。杜撰な引用や参照などおよそ学術書とは言えない著作であっても、英語で出版されていることから広く伝播しないとも限らない。

 これらを踏まえて、以下質問する。

一 政府は、「日本のホロコースト」の内容を把握しているか示されたい。

二 「日本のホロコースト」は、外国報道機関ではなく一外国人作家が我が国の歴史調査をまとめた著作であるが、主要な部分において虚偽と疑われる記述が随所に見られる場合、政府が取り得る対応について示されたい。

三 「日本のホロコースト」には看過できない侮辱とも受け取れる箇所が多数見受けられる。代表的な記述は以下のとおりである。

第一章

 昭和天皇は戦略家であり、兵士ごっこを楽しんでいた。彼は自由に、そして無頓着に兵士たちに戦争の法と慣例に違反する行為をするように命じた。

第二章

 日本は一九二七年から一九四五年にかけて少なくとも三千万人の恐ろしい大量殺戮を犯し、十八年かけて劣等民族を絶滅させた。

第二十一章

 国民は昭和天皇に毎日祈りを捧げ、天皇を神として崇めている。日本国民は大量殺人犯を崇拝しているのだ。

第二十三章

 昭和天皇は部下に対し、ハーグ条約(一九〇七年)、ケロッグ・ブリアン条約(一九二八年)、ジュネーブ条約(一九二九年)を遵守しないように命じた。この勅令により、天皇はすべての日本人に無謀で犯罪的な行動をとる許可を与え、兵士や水兵に邪悪で悪意のある行動を全権委任したのである。

 これらは侮辱的な表現を含む真偽不明な内容であると理解する。元米国海兵隊員であり、アメリカンミリタリー大学でも教鞭を執った経験を持つ著者の作品として流通していることから、当該著作に記載された誤った情報や侮辱的な記述によって、我が国の印象を著しく棄損する可能性があることを危惧する。これらの懸念を払拭するべく政府は適切に対応するべきだと痛感するが政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。