第216回国会(臨時会)
質問第二六号 PFASについて「正しく恐れる」必要性等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年十二月十三日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 PFASについて「正しく恐れる」必要性等に関する質問主意書 環境省のウェブサイトによると、PFAS(有機フッ素化合物)のうちPFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、幅広い用途で使用されてきており、これらの物質は、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があるため、国内で規制やリスク管理に関する取組が進められている。 令和五年十一月三十日、世界保健機関傘下のがんに特化した専門機関である国際がん研究機関は、PFOAをグループ1(ヒトに対して発がん性がある)、PFOSをグループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類している。米国環境保護庁によると、PFASのリスクに晒されるケースとして、消防関連又は化学工場等で勤務すること、PFASが含まれている水を飲む・食物を摂取すること、土・塵・空気を吸い込むこと、PFASが含まれている製品や包装を使用することを挙げている。また、米国疾病予防管理センターによると、米国の人々の体内には多少なりともPFASが蓄積しており、多くの人々にとって健康への影響はないが、汚染度が高い環境に長期間晒された場合、健康への被害が及ぼされる可能性があるとしている。 一 米軍基地とPFAS汚染の関連性について 沖縄県が令和五年度に県内の全市町村で土壌調査をした結果、汚染源とみられていた米軍基地を抱える嘉手納町や北谷町などの自治体で高い値が検出されないケースが目立ち、米軍基地がない久米島町の土壌から異常に高い値が検出されている。また、環境省と国土交通省が共同で実施した「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査」のうち、水道事業及び水道用水供給事業の結果によると、令和六年度(九月三十日時点)に検査を実施した千七百四十五事業のうち、PFOS及びPFOAの暫定目標値を超過した事業は一つもなかった。 これらの調査結果から、現在のところ在日米軍基地の存在とその周辺の土壌あるいは水道水におけるPFAS汚染との関連性は見られないという理解で正しいか、政府の見解を示されたい。 二 米軍横田基地消火訓練場の消火排水貯水池からのPFAS漏出について 令和六年十月五日、東京新聞は、令和六年八月三十日、豪雨により米軍横田基地内消火訓練場の消火排水貯水池から約四万七千リットルのPFAS含有消火排水が周辺のアスファルト上にあふれ、雨水溝に流入し基地外に流出した可能性が高いと報じた。また、令和五年十一月の調査で貯水池内のPFOAとPFOSの合計が一リットル当たり千六百二十ナノグラム含まれ、国が定める水道水の暫定指針値の三十二倍に相当すると報じた。 しかし、横田基地内の貯水池から漏出した消火排水は雨水によってすぐに希釈され、基地の外に出るまでにPFASの濃度は十分に下がっており、この漏出による直接の健康被害はあり得ない。また、この時に排出されたPFASの純量は、ごく微量の〇・〇七六グラム(四万七千リットル×千六百二十ナノグラム/リットル)である。こうした消火排水の漏出は屋内駐車場で頻繁に起きているが、大きく報道されることは少ない。米軍基地の事例だけが大きく取り上げられて他の事例が伝えられないことは、PFASのリスクを国民に正しく伝える上で問題があると考えるが、政府の見解を示されたい。 三 駐車場に存在するPFASについて 消防法施行令第十三条では、屋内の自走式駐車場のうち、地階又は二階以上の階で二百平方メートル以上、一階で五百平方メートル以上の場合、消火設備を設置することが規定されており、その多くは泡スプリンクラー設備である。 環境省の「令和六年度PFOS等含有泡消火薬剤全国在庫量調査(概要)」によると、国内におけるPFOS含有泡消火薬剤の量は百八十五万リットル、PFOS含有量は十一・四五トンであり、施設別で最も多いのが「その他(駐車場)」である。また、「その他」について環境省に確認したところ、全て駐車場との回答があった。駐車場におけるPFOS含有泡消火薬剤の量は九十六・三万リットルと全体の約五十二パーセントを占め、PFOS含有量は八・八四トンと全体の約七十七パーセントを占めている。消防機関、空港及び自衛隊関連施設については代替が進み、令和二年度に行われた前回調査から大幅に減少しているが、駐車場については増加している。調査の精度が上がり前回調査で漏れていたデータが加わったことが増加理由とのことである。該当する駐車場は全国に数千あると推定され、必ずしも適切に管理されていない可能性があるが、政府として不法に廃棄されないように管理する方策は採られているのか示されたい。 四 駐車場の泡スプリンクラー設備の誤作動によるPFAS漏出について 屋内駐車場における泡スプリンクラー設備の誤作動による泡消火薬剤原液あるいは消火水の漏出事例について、インターネット上で検索可能なものだけで令和四年以降、沖縄県那覇市(住宅街駐車場・沖縄県庁地下駐車場・総合福祉センター地下駐車場・市民協働プラザ地下駐車場)、愛知県名古屋市(愛知県農業共済会館駐車場)、東京都町田市(立体駐車場)、千葉県成田市(成田空港駐車場)と少なくとも七件発生している(なお、これらが全てPFAS漏出事例であったかは不明である)。米国環境保護庁や疾病予防管理センターの情報から判断すると、稀に発生する消火設備の誤作動等によるPFAS漏出について健康上のリスクは低く、問題視する必要はないと思われる。しかし、前述のように米軍基地からの漏出事例が大きく報道される中で、駐車場からの漏出事例があまり報道されないのはバランスを欠いている。PFASについて「正しく恐れる」ために、漏出事例とそのリスクについて政府が国民に情報を提供して説明するべきと考えるが政府の見解を示されたい。 五 米国及びその他の国々では、屋内駐車場に泡スプリンクラー設備を設置しておらず、水のスプリンクラー設備が設置されている。屋内駐車場の火災について、乗用車の燃料による可燃性危険物の火災を想定して泡スプリンクラー設備を設置することは、国際的な防火の考えからすると誤りである。この機会に消防法の該当部分を見直すべきと考えるが政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |