質問主意書

第216回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一七号

歴史的に重要な文書の管理に関する仕組みがNHKに存在しない可能性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十二月十日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   歴史的に重要な文書の管理に関する仕組みがNHKに存在しない可能性に関する質問主意書

 我が国では、公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)によって、「国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること」との目的の下、公文書管理に関する諸規定が定められている。

 公文書管理法の規定は、我が国の放送史に係る文書の管理には適用されていないが、放送史に係る文書の管理に関する他国の制度を見れば、例えば英国では、BBCと政府間の協定において、BBCの作成物の長期的保存(Archive)が定められており、文書類の保存のための施設(BBC Written Archives Centre)が設置されている。フランスでは、公共放送は公役務を担う公法上の法人に当たるとされ、公文書管理が文化遺産法典(Code du patrimoine)第二編等に規定されている。韓国では、公共放送である韓国放送公社(KBS)と韓国教育放送公社(EBS)は、公共記録物管理に必要な事項を定めた「公共記録物管理に関する法律」における「公共機関」となっており、記録物の保存期間を分類して管理しなければならないこと等が定められている。つまり他国では放送史、特に公共放送に関する資料は歴史資料として重要視され、適正な文書管理の規定が存在している。他方、我が国の公共放送である日本放送協会(以下「NHK」という。)においては、NHK文書管理規程で原則を定め、文書処理要領が文書の具体的な作成様式や記載要件等を規定しているが、「歴史的資料、文献等として保存する必要のあるもの」については、NHK文書管理規程によらず各部局長が別途決定することとしている。しかし、その決定基準等の仔細は不明であり、保存年限終了後、歴史的に重要な文書等として国立公文書館、NHK放送文化研究所又はNHK放送博物館で管理、保存する仕組みは存在しない。放送史に係る歴史的文書の管理に関する仕組みがNHKに存在しないことは大問題であると考え、以下質問する。

一 NHKの文書のうち、NHKの各部局長により「歴史的資料、文献等として保存する必要のあるもの」と定義されている文書について、政府の把握状況を示されたい。

二 前記一について、私の事務所がNHKに尋ねたところ、「歴史的資料、文献等として保存する必要のあるもの」と定義されたNHKの文書の保存年限についても「各部局長が主管する業務に照らし」決定していると回答があったが、この保存年限の判断基準は統一されているのか。また、当該文書のうち、永久保存されている文書は存在するのか。政府の把握状況を示されたい。

三 前記一及び二について、政府が把握していない場合、把握すべきと考えるが政府の見解を示されたい。

四 NHK放送文化研究所が平成二十四年に公表した「放送史資料 収集・保存・公開の方法論を探る~NHK文研所蔵資料の研究活用に向けて~」では、NHKの文書管理に、「歴史的な価値を持つと判断された資料が、放送文化研究所や放送博物館に自動的に移される仕組みは存在しない」ことを問題視しているが、これに対する政府の見解を示されたい。

五 NHKの文書は公文書管理法と同様、法定化して管理すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 前記五について、法定化して管理すべきではないとの見解の場合、NHKの文書管理の在り方について政府の見解を示されたい。

七 我が国の放送史に係る文書管理の在り方について、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。