質問主意書

第216回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一五号

公益通報者保護法の体制整備等義務は内部通報者のみとしている逐条解説に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十二月六日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   公益通報者保護法の体制整備等義務は内部通報者のみとしている逐条解説に関する質問主意書

 公益通報者保護法(以下「法」という。)は、「公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置等を定めることにより、公益通報者の保護を図る」こと等を目的としている。「解説 改正公益通報者保護法(第二版)」(山本隆司、水町勇一郎、中野真、竹村知己著)(以下「逐条解説」という。)の二百二十四頁には、法第十一条第二項の条文解説として、「この「必要な体制の整備その他の必要な措置」は、「第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報に」との留保があることから、法十一条一項と同様に、公益通報のうち内部公益通報に対応するための体制整備に限定している。なお、内部公益通報には、取引先事業者の従業員からの通報(法二条一項三号)や匿名通報も含まれることから(中略)、これらの内部公益通報に対応する体制の整備も必要である。」と記載されている(以下「逐条解説の条文解説」という。)。

 逐条解説の著者である竹村知己氏は弁護士であり、内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会(以下「専門調査会」という。)の事務局委嘱調査員として中間整理や報告書の取りまとめを担当していた。中野真氏は弁護士であり、消費者庁で約六年間、法改正や法改正後の指針の策定を含め、公益通報者保護制度の企画立案に一貫して携わってきた。水町勇一郎氏は専門調査会の委員、山本隆司氏は専門調査会の座長であったことから、以上四氏が執筆した逐条解説の条文解説が法解釈として正しいことは言うまでもなく、逐条解説の記載内容が誤りだとすると、政府が設置した専門調査会の議論にも疑義が生じかねない。

 「公益通報者保護法第十一条第一項及び第二項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(令和三年八月二十日内閣府告示第一一八号)には、「第四 内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置(法第十一条第二項関係)」が定められている(以下「法指針第四」という。)。しかし、消費者庁が兵庫県議会事務局長宛に発出した「公益通報者保護法の解釈について」(令和六年十月三十日消公協第二六九号)では、法指針第四の二に関する「内部公益通報をした場合に限定せずに、処分等の権限を有する行政機関やその他外部への通報が公益通報となる場合も公益通報者を保護する体制の整備が求められていると解釈すべきと考えるが、誤りは無いか。」との質問に対し、「誤りはないと考える。」と回答しており、逐条解説の条文解説とは見解が異なっている。

 これらについて、以下質問する。

一 法第十一条第二項の解釈について、逐条解説の条文解説に誤りはないか。誤りがあれば詳細を示されたい。

二 法指針第四に定められている「内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置」は、内部公益通報のみを対象としているのか。異なる場合は、その詳細を示されたい。

三 前記一及び二について、逐条解説の条文解説と政府の解釈が異なる場合、専門調査会の座長や委員等を務めた専門家が、誤った解釈のまま専門調査会の議論を進めていたこととなるため、専門調査会における議論をまとめた報告書そのものを見直すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。