第216回国会(臨時会)
質問第一〇号 解雇要件がある助成金等が解雇の間接的な規制になっている可能性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和六年十二月二日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 解雇要件がある助成金等が解雇の間接的な規制になっている可能性に関する質問主意書 我が国のいわゆる解雇規制については、これまで国会や有識者等において様々に論じられてきている。解雇が困難な国ほど、労働者にとって利点が大きいような印象を持つが、正規労働者の解雇が困難であるがゆえに、正規労働者の採用を阻害し、有期契約労働者や派遣労働者を増加させる要因ともなり得ることから、解雇規制が適正であるかどうかは労働者保護の観点から重要である。 我が国の解雇規制が厳しいか否かについては、OECDが各国の解雇法制の比較として公表している「雇用保護指標」(数値が高いほど解雇規制が厳しい)が、一つの参考となる。これによると二〇一九年時点の日本の雇用保護指標は二・一であり、OECD平均の二・二六よりも若干低い数値である。これを根拠として我が国の解雇規制はさほど厳しくないとの指摘があるが、日本は解雇規制が厳しいとの世論も一定程度見受けられる。 また、本年に行われた自民党総裁選において、河野太郎氏が金銭解雇の必要性を訴えるなど、解雇法制の見直しに関する議論は様々に見られる。OECDの雇用保護指標と世論に乖離が生じている原因の一つとして、OECDの雇用保護指標は解雇に係る直接的な規制についての評価であり、これ以外にも間接的な解雇規制が存在する可能性があると考える。これらを踏まえて、以下質問する。 一 政府が行っている雇用・労働分野の助成金のうち、「支給等の要件に、対象となる事業者が労働者を解雇していないこと」等、事業者に労働者の解雇実績がないことを要件としているものについて、令和六年度の予算額と併せて全て示されたい。 二 前記一以外の事業者向けの国庫補助金のうち、「支給等の要件に、対象となる事業者が労働者を解雇していないこと」等、事業者に労働者の解雇実績がないことを要件としているものについて、令和六年度の予算額と併せて全て示されたい。 三 前記一及び二について、これらの要件に解雇に係る要件を入れた目的を示されたい。また、解雇に係る要件を入れた段階及び要件を定義した後に労働市場に及ぼす影響を評価したか示されたい。 四 前記一及び二について、これらの解雇に係る要件が、事業者による労働者の解雇を阻害する要因の一つになっている可能性が高いのではないかと危惧するが、政府の見解を示されたい。 五 制度・規制改革学会有志が本年九月九日に公表した「解雇の金銭解決制度は労使双方にとっての利益」において、「日本の現行法でも、不当な解雇の場合は、労働者は企業に対して不法行為に基づく損害賠償請求ができる。しかし、解雇のルールが明確でないため、不公正な労働市場が生まれている。まず、訴訟で争う力のある労働者を抱える大企業では、解雇に過度に抑制的になりやすく、労働市場の健全な流動性が損なわれている。一方、中小企業等では、恣意的な解雇も横行しており、労働者の利益が損なわれている。」と指摘しており、「ドイツ等の欧州諸国での様々な形態の解雇の金銭解決制度を、日本にも速やかに導入すべきである。」としている。これに対する政府の見解を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |