質問主意書

第215回国会(特別会)

質問主意書

質問第一一号

労働者の国籍を理由として雇入れを判断することに対する法令上の規制の有無に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十一月十四日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   労働者の国籍を理由として雇入れを判断することに対する法令上の規制の有無に関する質問主意書

 労働基準法第三条は、労働者の均等待遇の確保を目的として、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と定めている。雇入れが同条における「その他の労働条件」に含まれるかどうかについて、昭和四十三年(オ)第九三二号最高裁判例では、「労働基準法三条は労働者の信条によつて賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であつて、雇入れそのものを制限する規定ではない。」と判断している。

 他方、令和六年八月十九日、日本放送協会(以下「NHK」という。)は、ラジオ国際放送などの中国語ニュース番組において、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を「中国の領土」と述べるなど虚偽の不適切な発言を放送するという、公共放送として極めて甚大な不祥事を起こし、国益を損ね、国民を裏切った。これを受け、NHKは、担当理事の辞任等の責任の明確化及び懲戒処分を行い、「国際放送に関するガバナンスを強化して、信頼回復に努めるとともに、視聴者・国民から負託された公共放送の使命を果たしてまいります」等とコメントしたが、辞任した理事は、その一週間後、エグゼクティブ・プロデューサーとしてNHKに再雇用されており、偽装辞任ではないか等との批判を免れ得ないものと考える。また、令和六年九月十日付で公表されたNHKの報告書によると、当該発言を行った中国籍の男性は当該発言の前に行われた翻訳作業の段階で、「あいまいなものをそのまま翻訳して中国語で放送したら、個人に危険が及ぶ」等と声を荒らげ、強く反発したとされている。この「個人に危険が及ぶ」という発言について、インターネット上では母国で何らかの脅威を感じていたのではないかと推察する意見も出ている。

 これらNHKの問題を受け、我が会派であるNHKから国民を守る党からNHKに対し、特に留意が必要な放送に関する業務を行う職員の雇入れにおいては国籍等に留意すべきではないかと質問したところ、NHKから労働基準法第三条を根拠に国籍による雇入れの規制は困難であるとの回答がなされた。

 以上を踏まえ、労働者の国籍を理由として雇入れを判断することについて、以下質問する。

一 労働基準法第三条にある「その他の労働条件」に、雇入れは含まれるか。政府の見解を示されたい。

二 前記一について、労働基準法第三条のみならず、労働者の国籍を理由として雇入れを判断することに対して、我が国が締結した条約上又は我が国の法令上の規制があるか。ある場合は全て示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。