質問主意書

第215回国会(特別会)

質問主意書

質問第七号

女性差別撤廃条約選択議定書に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十一月十一日

ながえ 孝子


       参議院議長 関口 昌一 殿



   女性差別撤廃条約選択議定書に関する質問主意書

 一九七九年、女性の権利の確立と男女平等社会の実現を進める「女性差別撤廃条約」が国連総会で採択され、一九九九年には、条約の実効性を高めるための女性差別撤廃条約選択議定書(以下「選択議定書」という。)が採択された。我が国は一九八〇年、女差別撤廃条約に署名し、国会承認を経た一九八五年に七十二番目の加盟国となった。現在、女性差別撤廃条約に加盟する百八十九ヵ国のうち、百十五ヵ国が選択議定書を批准しているが、我が国は批准していない。

 選択議定書は、条約に定める権利の侵害を受けた個人や集団が直接通報できる「個人通報制度」と、条約上の権利の「重大」又は「組織的」な侵害があるという信頼できる情報を受け取った場合に、女性差別撤廃委員会が、その国の協力を得て調査を行うことができる「調査制度」から成る。選択議定書の批准は、我が国の国際人権保障・男女平等に対する積極的な取組の姿勢を国際社会に示すものであり、批准をしないことで条約実施に後ろ向きという姿勢を見せてしまうことになり、我が国にとってデメリットが大きいことを指摘した上で以下質問する。

一 参議院では、選択議定書の批准を求める旨の請願は、二〇〇一年の第百五十一回国会から二〇二四年の第二百十三回国会までに六百八十四件も提出され、そのうち二百十五件が採択され、内閣に送付されている。加えて、選択議定書の批准を求める自治体議会の意見書は、二〇〇〇年七月二十七日から二〇二四年七月三十一日までに二百六十九件受理されている。

 また、経済界も「選択的夫婦別姓」について法改正を求めるなど、日本社会がジェンダーフリー推進に向かっている状況である。

 女性差別撤廃委員会は、これまでも日本政府報告書審査が行われるたびに、選択議定書を批准するよう勧告している。国連勧告や国内世論に応えて選択議定書を批准するのか、政府の対応方針を示されたい。

二 政府は、選択議定書批准の意義について、「我が国の人権尊重の姿勢を改めて内外に表明することを通じた人権尊重の普遍化への貢献」としている。また、政府が一時期主張していた「司法権の独立との関係」については、二〇二〇年三月二十六日の参議院外交防衛委員会において、法務省は、「個人通報制度の受入れは、我が国の司法制度と必ずしも相入れないものとは考えておりません。」と答弁し、二〇二四年十月八日の参議院本会議において、石破首相は、「個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図る趣旨から注目すべきものと考えております。(中略)女子差別撤廃条約選択議定書の早期締結について真剣に検討しておるところでございます。」と答弁していることから考えて、もはや「司法権の独立との関係」は、批准しない理由にはなり得ずと理解してよいか。

三 前記の参議院本会議において、石破首相は、「選択議定書に設けられている個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図る趣旨から注目すべきもの」とした上で、「女子差別撤廃委員会から出される見解などについて、我が国の司法制度や立法政策との関係でどのように対応するかなどの検討をするべき論点がある」と答弁している。

 また、前記の外交防衛委員会において、外務省は、「国連の見解の窓口をどこの省庁で受けるか、それを関係の省庁にどのように割り振って、どのようにこれを回答として女子差別撤廃委員会の方に回答するか」など、実施体制の検討が課題だと答弁している。

 当該答弁から四年が経過したが、政府における実施体制についての検討結果を説明されたい。

四 本年十月十七日の女性差別撤廃委員会において、八年ぶりに日本への対面審査が実施された。同委員会は十月二十九日、これまでの日本政府の遅々として進まない取組に対して懸念を示し、「選択的夫婦別姓の導入」など日本政府に改善を勧告した。

 経済界では、このところジェンダーへの取組が重要視されている。ESG投資において求められる非財務情報では、E(環境)と並んで、S(社会・人権)は企業価値を上げるためにも重要となっている。中でもジェンダー平等と企業のパフォーマンスには、強い相関関係があるとの研究結果が出ており、企業の長期的な成長には女性の活躍が欠かせないと多くの機関投資家も考えている。こうした背景もあり、経団連は本年六月、夫婦同姓の義務は女性活躍を阻害しているとして、「選択的夫婦別姓」の早期実現を求める提言を発表した。また、日本企業も、世界的課題であるジェンダーフリーに関し、政府に迅速な対応を求めている。

 選択議定書の批准を拒み続けていることを含めて、政府の女性差別を是正していくことへの消極的態度は、経済分野でもダメージを増大する懸念があると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。