質問主意書

第214回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一四第二七号
  令和六年十月十八日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員川田龍平君提出レプリコンワクチン等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出レプリコンワクチン等に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 御指摘の「ベトナムで実施された臨床試験」を御指摘の「臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料」に記載された「ARCT―一五四―〇一試験」の「第三b相」試験と解すれば、当該試験におけるお尋ねの「死亡例の件数、死因の内訳」については、御指摘のように「被験者を本剤群とプラセボ群に分けた上で」、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)の審査報告書において、治験開始から九十二日目までの期間における「死亡例」は、「本剤群五・・・例(・・・低血糖、膵炎、肺の悪性新生物、咽頭癌転移、COVID―十九各一例)、プラセボ群十六・・・例(・・・COVID―十九 九例、リンパ節腫脹、肝硬変、肝癌、大動脈解離、肺炎、アシネトバクター性肺炎、敗血症性ショック各一例)」であり、また、九十二日目以降に「治験薬(本剤又はプラセボ)を交互に接種したため、・・・一、二回目本剤群、三、四回目プラセボ群は、本剤―プラセボ群、一、二回目プラセボ群、三、四回目本剤群をプラセボ―本剤群」とし、九十二日目から二百十日目までの期間における「死亡例」は、「本剤―プラセボ群九・・・例(・・・事故死、他の特定できない死亡各二例、急性心筋梗塞、敗血症性ショック、外傷、口唇がん/口腔がん、悪性肺新生物各一例)、プラセボ―本剤群四・・・例(・・・COVID―十九 二例、頭蓋脳損傷、脳血管発作各一例)」とされている。なお、当該報告書において、「いずれも治験薬との因果関係は否定された」とされているところである。

 また、お尋ねの「被験者を本剤群とプラセボ群に分けた上で、全員が本剤又はプラセボを交互に接種する試験」の方法は、ICH―E九(日米EU医薬品規制調和国際会議が作成した臨床試験のための統計的原則をいう。)に記載されている「Crossover Design」に該当する実施方法であり、ワクチンの臨床試験において通常用いられる試験の方法の一つであると承知している。

一の3について

 御指摘の「JN・1系統に対応した新型コロナワクチン」である「コスタイベ」については、令和六年五月三十一日にMeiji Seika ファルマ株式会社から医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「法」という。)第十四条第十五項の規定による承認事項の一部変更承認の申請が行われたことから、機構の審査報告書において、御指摘の「動物実験」については、「本剤の効力を裏付ける試験の結果から、本剤の変異株対応ワクチンが、対応するそれぞれの変異株に対して免疫原性を示すことを確認した。また、本剤の一価(JN.一)ワクチンが、JN.一系統をはじめ、現在の流行株を含むオミクロン株の様々な亜系統(KP.三系統を含む)に対する中和抗体を誘導した。」とされており、また、「JN・1系統」のコロナウイルスに類似するウイルスに対するワクチン株を用いて実施した臨床試験において、ファイザー社の新型コロナウイルス感染症に係る予防接種(以下「新型コロナ予防接種」という。)に使用するワクチン(以下「新型コロナワクチン」という。)との「非劣性が検証された」とされていることを踏まえ、同年九月十二日に開催した薬事審議会医薬品第二部会において議論が行われ、その結果を踏まえて承認を行ったものであり、お尋ねのように「JN・1系統に対応した新型コロナワクチンについても十分な動物実験を含めた追加の臨床試験を改めて行う必要があった」とは考えていない。

二及び三について

 御指摘の「レプリコンワクチンであるコスタイベ」については、令和六年十月四日の閣議後記者会見において、福岡厚生労働大臣が「薬事承認においてその安全性及び有効性を確認しているほか、定期接種で用いるか否かを判断する際に、改めて関係審議会において、その安全性及び有効性が確認された上で了承されたものです。また、ワクチン成分が他者に伝播し健康被害が生じるという科学的知見はなく、こうした内容について厚生労働省のホームページなどで周知を行っているところです。国民の皆様に冷静な対応をお願いするとともに、引き続き、最新の科学的知見に基づく情報の発信に努めてまいりたいと考えています。」と述べているとおりであり、御指摘のような「懸念」の解消に努めることとしている。また、法第六十八条の十第一項及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第二百二十八条の二十第一項第二号ロの規定により、医薬品の製造販売業者は、当該医薬品の副作用若しくはそれらの使用による感染症によりがんその他の重大な疾病、障害若しくは死亡が発生するおそれがあること、当該医薬品の副作用による症例等若しくはそれらの使用による感染症の発生傾向が著しく変化したこと又は当該医薬品が承認を受けた効能若しくは効果を有しないことを示す研究報告を知ったときは、厚生労働大臣にその旨を報告しなければならないとされているところ、政府としては、引き続きこうした報告に基づく評価を行い、新型コロナ予防接種の安全性を確認することとしており、現時点において、御指摘のような「調査」や「要請」を行うことは考えておらず、また、「使用を中止すべき」とは考えていない。

四について

 お尋ねの「件数」は、令和六年十月七日時点において八百六十七件である。また、新型コロナ予防接種の安全性については、新型コロナ予防接種を受けたことによるものと疑われる症状について、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第十二条第一項の規定により、医師等から厚生労働大臣に報告されているほか、法第六十八条の十第一項及び第二項の規定により、新型コロナワクチンの製造販売業者等から同大臣に報告されているところ、新型コロナ予防接種の開始以降、これらの制度により収集した情報等に基づき、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(以下「合同部会」という。)において評価を行うこととしており、同年七月二十九日の合同部会においては、御指摘の「死亡例」も含め、「副反応疑い報告全般に関する考え方」等が議論され、「ワクチンの安全性に係る新たな懸念は認められず、現時点において、ワクチン接種によるベネフィットがリスクを上回ると考えられ、引き続き、国内外の情報を収集する」と確認され、「現状の取扱いを変更する必要がある」とは認められなかったことから、新型コロナワクチンの接種を中止する状況にないと考えている。

五について

 お尋ねの「スパイクタンパク質の毒性を否定できるだけの根拠」の趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「現行のmRNAワクチン」の接種により発現されるスパイクタンパク質の身体への影響も含めて治験において有効性及び安全性に係るデータを収集しており、例えば、ファイザー社の新型コロナワクチンでは、十六歳以上の四万三千四百四十八例を対象とする治験等が行われ、また、当該新型コロナワクチンに係る機構の特例承認に係る報告書において、「本剤を筋肉内投与した場合、本剤は主に投与部位に分布し、一部は全身(主に肝臓)へ一時的に分布し、それぞれでタンパク質を発現するが、いずれの部位でも時間の経過とともに本剤及び発現したタンパク質は消失すると推察された。」とされており、当該報告書等を踏まえ、令和三年二月十二日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において審議が行われ、その結果を踏まえて承認を行ったものである。

 なお、これらの承認後においても、「mRNAワクチン」を含む新型コロナワクチンによる健康被害を示唆する情報があれば、二及び三についてで述べた製造販売業者から厚生労働大臣への報告に基づく評価を行い、新型コロナ予防接種の安全性を確認することとしている。

六について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「米国クリーブランドクリニックにおける接種回数と感染者数の相関の解析結果」については、令和六年六月二十八日の閣議後記者会見において、武見厚生労働大臣(当時)が「報告書の結論は、この論文の筆者もワクチンの有効性そのものは認めています。・・・そうした結論を下すにあたり、ワクチンの接種回数と感染リスクの相関関係を指摘したものであり、結果に影響を与え得るグループ間の様々な因子が実際には調整されていないことから、接種回数と感染リスクの因果関係までは・・・不明である」と述べているとおりであり、また、御指摘の「mRNAワクチン接種によりスパイクタンパク質に対するIgG4が誘導される」とする論文があることは承知しているが、「IgG4」の「誘導」によって、新型コロナウイルスに感染しやすくなるとの科学的根拠は確立されておらず、したがって、これらのことから、御指摘の「新型コロナワクチン接種は感染拡大をむしろ招くという見解」は妥当ではないと考えている。なお、新型コロナワクチンの接種を複数回行った場合における感染、発症及び重症化を予防する効果については、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、新型コロナワクチンの承認時の審査の結果や国立感染症研究所が公表している資料等に基づき、確認しているところである。

七について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「緊急承認制度」については令和四年五月に創設されたところ、同年十一月に新型コロナウイルス感染症に係る治療薬の承認に一件「適用」されて以降、御指摘の「新型コロナワクチン等の承認」に「適用」されていないところである。

八について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘のように「効果を検証し、」「被害を救済すること」については、令和六年四月十七日の衆議院厚生労働委員会において、武見厚生労働大臣(当時)が「新型コロナワクチンは、・・・PMDAの審査及び薬事・食品衛生審議会の審議を経て、その品質、有効性及び安全性を確認した上で薬事承認をされています。また、関係審議会において、国内外の科学的知見に基づき、ワクチンによる重症化予防効果等の公衆衛生上のベネフィットが認められていることに加えて、接種後の副反応が疑われる症状の報告等のリストに関する評価を総合的に勘案して、安全性に係る新たな懸念は認められないと・・・判断をされているわけであります。ワクチン接種後の健康被害については、・・・審査会において予防接種と健康被害との因果関係が認定された方々に対しては、これをしっかりと救済をするということになっております。引き続き、新型コロナワクチンについて、適切な安全性の評価、さらには新たな知見の医薬品等への速やかな情報提供、迅速な健康被害救済にしっかりと取り組んでいきたいと思います。」と答弁しているとおりである。

九の1について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「パンフレット」の記載について、厚生労働省は「事前に」「製薬会社から」「問合せ」を受けていない。なお、御指摘の「製薬会社」の「肺炎球菌ワクチン」の添付文書において、「医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。」と記載されていることを確認している。

九の2について

 御指摘の「同時接種を認めているか否か」の趣旨が必ずしも明らかではないが、新型コロナワクチンについては、御指摘の「製造販売会社」から示されている各ワクチンの添付文書において「医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。」と記載されていることを把握している。

九の3について

 御指摘の「ワクチンの同時接種による国内死亡例」の「論文」は承知しておらず、また、「「ダブルワクチン後遺症」の懸念」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、ワクチンの安全性については、接種を受けたことによるものと疑われる症状について、「同時接種」した場合も含め、四についてで述べたとおり、医師や製造販売業者等からの厚生労働大臣への報告により収集した情報等に基づき、合同部会において評価を行うこととしているところ、現時点では「同時接種」に係る懸念は示されておらず、御指摘のように「喚起すべき」とは考えていない。なお、例えば、新型コロナワクチンと他のワクチンとの「同時接種」については、厚生労働省において、同省ホームページにより「新型コロナワクチンと他のワクチンとの同時接種については、特に医師が必要と認めた場合に可能です。また、他のワクチンとの接種間隔に制限はありません。」と周知しているところである。