質問主意書

第214回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三〇号

石破派及び麻生派並びに安倍派の裏金疑惑の「新しい事実」等を隠ぺいする裏金隠し解散に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和六年十月九日

小西 洋之


       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   石破派及び麻生派並びに安倍派の裏金疑惑の「新しい事実」等を隠ぺいする裏金隠し解散に関する質問主意書

 石破総理は、令和六年十月七日の衆議院本会議において、石破派(水月会)の裏金疑惑について、「私が代表を務めておりました水月会の政治資金収支報告書についてのお尋ねをいただきました。お尋ねにつきましては、政治資金パーティーのパーティー券を複数の議員から購入いただき、支払い額の合計が二十万円を超えていた政治団体について、水月会の事務局側での確認漏れがあり、当該団体のパーティー券の支払い総額の記載に誤りが生じたものであります。なお、収支報告書には、政治資金パーティーの収入総額に加えて、その内訳としてパーティー券の支払い額が二十万円を超えたものの支払い額も記載することとされているところ、この度の記載の誤りがあったのは内訳の金額であり、収入総額の誤りは確認されておりません。」と答弁している。

 また、石破総理は、令和六年十月八日の参議院本会議において、刑事裁判で明らかになった麻生派の裏金疑惑及び安倍派幹部のキックバック継続の話合い疑惑について、「自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載の問題に関する再調査等についてのお尋ねを頂戴をいたしました。自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載に関する一連の問題につきましては、第三者である検察による厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものは立件されてきたものと承知をいたしております。また、様々な報道等があることは承知をしておりますが、自民党における外部の弁護士を交えた聴き取り調査などでは、捜査権がなかったり書類の保存期間が経過していたりという制約の中でも、可能な限りの事実関係の把握、解明の努力が進められてきたものと認識をいたしております。」と答弁している。

 これらを踏まえ、以下質問する。

一 健康保険政治連盟の石破派の政治資金パーティーへの支出とそれに対応する石破派の収入に関する両政治団体の収支報告書における差額は、二〇一六年は四十万円、二〇一七年は差額なし、二〇一八年は二十万円、二〇一九年は二十万円、二〇二〇年は二十万円、二〇二一年は四十万円で、この六年間で合計百四十万円の差額となるという事実関係で良いか。石破自民党総裁に確認の上、答弁されたい。

 また、これについて、石破総理は「訂正可能な過去の収支報告書につきましては既に訂正手続を行ったところであります」と答弁しているが、何をどのように訂正したのかその具体的な内容を説明されたい。

二 石破総理の答弁中「政治資金パーティーのパーティー券を複数の議員から購入いただき、支払い額の合計が二十万円を超えていた政治団体について、水月会の事務局側での確認漏れがあり、」の「複数の議員」には石破総理も含まれるのか。また、石破派の幹部も含まれるのか。さらには、石破内閣の閣僚及び副大臣並びに大臣政務官も含まれるのか、石破自民党総裁に確認の上、答弁されたい。

三 自民党総裁である石破総理は、自民党のいわゆる裏金議員について、次期総選挙において非公認や比例区との重複立候補を認めない措置を講ずるとしているところ、前記二について、「複数の議員」が誰であるか、二〇一六年から二〇二一年までの年度ごとに具体的に示されたい。この場合、総理たる石破自民党総裁において当該複数の各議員に名前を開示することの合意を求め、その合意の有無も含めて示されたい。

四 石破総理の「水月会の事務局側での確認漏れがあり、当該団体のパーティー券の支払い総額の記載に誤りが生じたものであります」との答弁について、「確認漏れ」とはどのような事態がどのように生じていたものであるのか、また、その原因は何であったのかについて、石破自民党総裁に確認の上、具体的に説明されたい。

五 前記四について、石破派においては健康保険政治連盟などによる石破派の政治資金パーティー券の購入金を誰がどのように派閥事務局に支払っていたのか、「複数の議員」が健康保険政治連盟から購入金を預かって派閥事務所に収めていたのであればなぜ毎年のように当該預り金の確認漏れが生じていたのか、仮に、健康保険政治連盟から派閥事務所に直接支払われていたのであれば確認漏れはなぜ生じていたのかについて説明をされたい。

六 石破派の政治資金パーティーについて、六年間のうち、一年以外は毎年差額が生じていたというのは極めて不可思議であり、こうした事態は、安倍派や二階派の裏金事件と同じ構図であり、石破派の政治資金パーティーでも裏金のキックバック等(還付方式や留保方式)が行われていたのではないか。石破派の政治資金パーティーにおいて、裏金のキックバック等は行われていなかったことを石破自民党総裁は具体的に証明し説明されたい。

七 前記六について、石破総理は「収支報告書には、政治資金パーティーの収入総額に加えて、その内訳としてパーティー券の支払い額が二十万円を超えたものの支払い額も記載することとされているところ、この度の記載の誤りがあったのは内訳の金額であり、収入総額の誤りは確認されておりません」と述べているが、政治資金規正法違反を犯せば収入総額が同じであっても裏金のキックバック等を行うことは可能であり、裏金はなかったことの何の説明にもなっていないのではないか。

八 前記一から七までについて、石破総理は自民党総裁として、また、内閣総理大臣として、勇気と真心を持って真実を語っているのか。また、これらの答弁によって、石破派の裏金疑惑について国民の納得と共感が得られると考えているのか。

九 石破総理は、本年十月一日の総理就任の記者会見において裏金事件に対する実態解明の必要性について問われ、「新しい事実ということが判明をしたとすれば、それは調査ということが必要だというふうに認識をいたしておる」、「更に新しい事実が出てくれば、それを解明しなければならない」と述べているが、このたびの石破派の裏金疑惑は「新しい事実」と考えているのかについて説明されたい。

 いずれにしても、石破総理の衆参本会議での石破派の裏金疑惑に関する答弁は、意図的に趣旨不明の説明のみを行った、臆病と不誠実を持って虚偽を語り、国民に不満と反感を与えてしまうものではないのか。

十 麻生派の裏金疑惑を報じた毎日新聞等の報道によれば、麻生派は二〇一七年まで手渡しの裏金のキックバックを行っていたと派閥幹部らが証言し、そのことは、薗浦健太郎元衆議院議員の刑事裁判記録でも明らかになっており、そして、派閥事務局長だった松本純元衆議院議員は毎日新聞の取材に応じ、現金渡しを改める契機となった二〇一八年の会計システム変更は「麻生会長が判断し決断した」、「現金で渡すと事故につながる可能性がある。そういうのをなくしましょうということだった」と述べたとのことであるが、石破総理はこれらの報道や裁判記録の内容について、麻生派の裏金疑惑という「新しい事実」と考えているのか、そう考えない場合はその理由を説明されたい。

十一 石破総理は自民党総裁として、また、内閣総理大臣として、麻生派の裏金疑惑についての報道や裁判記録の内容について調査を行ったのか、行ったのであればその内容と結果を、行っていないのであればその理由を、今後行うつもりがあるのであればなぜ解散総選挙の前に調査をしなかったのかについて、今後調査を行うつもりがないのであればその理由を具体的に説明されたい。

十二 前記十及び十一に関して、石破総理は麻生派の裏金疑惑の調査を求める参議院本会議質問に対して、「また、様々な報道等があることは承知をしておりますが、自民党における外部の弁護士を交えた聴き取り調査などでは、捜査権がなかったり書類の保存期間が経過していたりという制約の中でも、可能な限りの事実関係の把握、解明の努力が進められてきたものと認識をいたしております。」と答弁しているが、自民党の外部弁護士を交えた聴き取り調査(令和六年二月十五日付の報告書)の対象は、安倍派と二階派の裏金議員及び選挙区支部長であり、麻生派の議員らは対象となっておらず、この答弁は詭弁ではないか。この答弁が、臆病と不誠実を持って虚偽を語る詭弁ではなく、勇気と真心を持って真実を語るものであると考えるのであれば、その理由を具体的に説明されたい。

 なお、検察の捜査は麻生派関係者(議員を含む)には行われておらず、また、自民党は本年二月十三日に全議員への派閥の政治資金パーティーについての記載漏れの調査結果を公表しているが、記載漏れの有無と金額と年度を尋ねるだけの調査がまともな調査と言えるわけもなく、こうした検察の捜査と自民党の調査の実態をもって麻生派関係者に対する実質的な調査は行われているというような見解を取ることは国民の納得と共感を得られないと考えるが、石破総理においてそのように考える場合は国民の納得と共感が得られると考える理由を説明されたい。

十三 麻生派の裏金疑惑を調査することなく解散総選挙を行うのは、裏金隠し解散そのものではないのか。また、派閥会長の麻生氏らに自民党公認を与えまた比例区の重複立候補も認めることは、安倍派や二階派の裏金議員の扱いと比べて不公正ではないのか、石破自民党総裁に確認の上、答弁されたい。

十四 本年九月三十日の東京地方裁判所の安倍派の会計責任者の有罪判決においては、被告人の証言に基づき、「ノルマ超過分の還付継続について清和研の幹部らで話し合われた」、「被告人は、収支報告書の虚偽記入の前提となるノルマ超過分の処理については清和研会長や幹部らの判断に従わざるを得ない立場にあった」という事実認定が判決文においてなされている。これらの事実認定は、安倍派事務総長であった高木毅元衆議院議員や松野博一元官房長官、萩生田光一元衆議院議員ら安倍派幹部の証言とは全く異なっているが、自民党総裁である石破総理においてはこれらを「新しい事実」と認識しているのか否かについてその理由と共に答弁されたい。なお、自民党の外部弁護士を交えた聴き取り調査(令和六年二月十五日付の報告書)においては、安倍派会計責任者への調査は行われておらず、それで国民の共感と納得を得られると考えるのかについても合わせて答弁されたい。

十五 石破総理は自民党総裁として、安倍派幹部及び安倍派会計責任者に対して、裏金キックバックに関する派閥幹部の謀議があったのか、会計責任者は派閥会長や派閥幹部らの判断に従って裏金処理を行っていたのかについて、調査を行う考えはあるか。

 また、こうした調査を行わずに、安倍派幹部に対して次期総選挙において自民党の公認を与えたりすることは国民を欺くことになるのではないかについて、石破自民党総裁の見解を確認の上、答弁されたい。

十六 自民党の安倍派、二階派の裏金事件においては、裏金を派閥からの政策活動費と認識していた、裏金を自分の銀行口座で管理していた、裏金を自分の政治団体に寄附をして所得税控除を受けていた等々の議員の証言があり、これらは、明らかに裏金が政治団体の資金ではなく議員の個人資金として議員が扱っていた実態が認められるが、石破総理は、石破派、麻生派の疑惑を含めて、自民党の議員において政治資金規正法上の犯罪である派閥からの裏金たる寄附金の受領とそれに関する脱税行為は一切なかったと断言できるのか、できるのであればその具体的根拠を示されたい。

十七 前記十六について、自民党の本年二月十三日結果公表の全議員への派閥の政治資金パーティーについての記載漏れの調査結果、及び外部弁護士を交えた聴き取り調査(令和六年二月十五日付の報告書)においては、最初から、自民党の派閥から自民党議員及び選挙区支部長へのキックバック等は、自民党議員らが代表を務める政治団体への政治資金と決め打ちをして行われている(要するに、犯罪かつ脱税である個人資金の提供の調査を最初から排除している)が、自民党総裁である石破総理はなぜこのような調査のやり方が行われたのかその理由についてどのように認識しているか、また、こうした調査が犯罪・脱税隠し調査であると考えないのかについてその理由とともに答弁されたい。

 なお、東京地検次席検事の本年一月十九日の記者説明においては、派閥から議員個人への裏金たる寄附の提供と議員の受領及びそれによる脱税の疑惑については最初から捜査の対象になっていないとされていることを付言する。

十八 前記一から十七に関し、石破派と麻生派の裏金疑惑、安倍派幹部らの更なる裏金疑惑について調査も行わず、解散総選挙を行うことは、勇気と真心を持って真実を語るどころか、臆病と不誠実を持って国民に虚偽を語り、国民を欺くものであり、国民に納得と共感を与えるどころか、国民に不満と反感を与える裏金隠し解散そのものではないか、石破総理の見解を答弁されたい。

  右質問する。